1. 2023/08/14(月) 15:06:07
「自分の思っていることを相手に伝えるため、人はさまざまな手段を使います。対話がごく普通の手段ですが、一部の人は威圧行為や暴力に訴えて、自分の主張を押し通そうとする。カスハラもそのひとつです。
さらにエスカレートすると、駅員を殴る、店長にガソリンのようなものをかけるという犯罪となってしまうのです。つまりカスハラは〝犯罪の出発点〟といえるでしょう」
また、驚くべきことに、カスハラを起こす人は〝普通の人〟だと、桐生氏は分析する。
桐生氏によると「合理的選択理論」と「ルーティン・アクティビティ理論」で、犯罪者が〝普通の人〟であると説明できるという。
「合理的選択理論とは『犯罪者は、犯罪者自身の利益を最大化するように行動する』という考え方に基づく理論です。つまり犯罪者は犯罪行為で得られる利益と不利益を比べ、逮捕されるリスクや捕まった後に被る不利益のほうが少ないと判断すれば、犯罪行為を行なうというものです。
また、ルーティン・アクティビティ理論は、犯罪が発生する可能性を決める4つの要素を『動機づけられた犯行者(加害者)』『格好の標的(被害者、被害対象物)』『監視者(監視カメラなども含む)の不在』『空間的要因(いつ、どこで)』と規定します。つまり犯罪は無規則に発生するのではなく、条件と環境が整うことで起きるのです」
そしてこれは、カスハラについても共通するというのだ。
ではなぜ企業は、こうしたクレーマーの横暴をそのままにしてきたのか。
「多くの企業はこれまで『お客さまは神様』という姿勢で客に接してきました。それが『理不尽な要求であっても、その場でお客さまの怒りをなんとか収めてもらえるよう、低姿勢でおわびする』という対応につながってしまっていたのです。
また、購入客からの製品への苦情の電話に対し、単に返品や交換に応じるのではなく、〝おまけ〟をつけて返すことも慣例として行なわれていました。
これらがクレーマーにとって、苦情を言うとなんらかの利益を得られるという成功体験につながったのです。端的に言えば、『企業がモンスタークレーマーを育てた』ということでしょう」
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近年、客による従業員への悪質なクレームや物理的・精神的な嫌がらせ、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)が増加している。