1. 2024/02/24(土) 18:08:04
2000年代初め、ある研究チームは、ケニア北部で暮らすアリアール族の遺伝子を調べた。この部族は、昔から遊牧民的な生活を送っていたが、20世紀になるとその一部は定住するようになった。
そこで遊牧生活を続けたアリアール族と定住したアリアール族の遺伝子や健康を比べてみたところ、とても面白いことが判明したのだ。
基本的にアリアール族は全員が「DRD4/7R」という遺伝子変異を持っている。これはADHDの患者にもよく見られ、落ち着きのなさや注意力のなさと関係するとされている。
そして、あまり体を動かすことがない定住生活を選んだアリアール族の子供たちの場合、この突然変異は健康状態の悪さや、授業に集中できないといったことと関係していた。
ところが相変わらず遊牧生活を続けているアリアール族では、体の強さや栄養状態の良さと関係していたのだ。
ここから興味深い仮説が浮上している。もしかしたら、ADHDの背後にある遺伝子は、それを持つ人を”冒険者”にすることで、生存を有利にしたのではないだろうか?
今回ペンシルベニア大学のデビッド・バラック氏らは、この仮説を検証するために次のようなゲームを行なってみた。
画面に茂みが表示されるので、参加者(約450人)はマウスのカーソルをその上に置いて、できるだけ多くの果物を集める。
ただし同じ茂みで果物を採るたびに、収穫量は少しずつ減っていく。だが新しい茂みにポインターを移動させれば、その分時間がかかる。
結果、果物をたくさん収穫できたのは、実験とあわせて行われた検査でADHDの傾向が高いとされた人たちだった。
これについてバラック氏らは論文で、「全体として参加者が滞在しすぎていたことを考えると、探索を続けたADHD傾向の参加者は、最適採餌理論の予測により一致しており、この意味で、より最適に行動した」と述べている。
+176
-5
発達障害の一種であるADHD(注意欠陥・多動症)は、最近でこそその名が定着したが、落ち着きがない、様々なものに興味が移るといた特性はずっと昔から知られており、何世紀も前からさまざまな名称で呼ばれてきた。