1. 2023/06/07(水) 13:21:27
一部抜粋・・・発達障害のある人の中には、思考の振れ幅が極端な人がいる。彼女はまさにそうで、より報酬の高い水商売ではなく、新聞配達という厳しい仕事によって、3人の子供を育てることを決めたのだ。
しかし、発達障害のある女性が、新聞配達の仕事だけで、まったく公的支援に頼らず、3人の子供を育てていくのは至難の業だ。
毎朝午前2時には起きて新聞の配達所へ出勤しなければならない。自宅に帰るのは午前8時頃。それから子供たちを保育園へ送り届け、少しだけ仮眠をとって今度は夕刊の配達。その後、保育園に子供たちを迎えに行き、食事などの用意をして寝かしつけをすることになる。彼女はこうしたタイトなスケジュールをこなそうとしたが、発達障害の特性がその邪魔をした。
まず注意欠陥がひどく、彼女は子供たちの夕食をつくるのに4時間も5時間もかかった。料理をしようとしても、別のことに関心が向いてしまって一向に進まない。そのうちに時間だけが過ぎていき、子供たちはお腹を空かせたまま眠ってしまう。ご飯を食べさせてあげられるのは、週に1回か2回程度だった。
児童相談所が彼女の子供たちを保護したのはそんなある日のことだった。保育園から通報があったのである。児童相談所の職員は、子供たちを保護する理由を次のように告げた。
「あなた(母親)は、子供にちゃんとご飯をあげていませんね。それに、何か月もお風呂に入れていないようです。夜も仕事で家を空けていて、子供たちを独りぼっちにさせていますね。これは明らかにネグレクト(育児放棄)に当たります。したがって、子供たちを児童養護施設へ預けることにします」
彼女はこの後、児童相談所内で自殺を図った上、「私の人生は子供を取り上げられた時点で終わった」と言って、現在に至るまで喪服を意味する黒い服を着つづけている。そして私の勧めで病院へ行って発達障害の診断を受けたものの、「めんどくさい」という理由で福祉とつながることを拒否している。
このようにしてみると、親の発達特性が本人の意図しないところで虐待を生んでしまうことがわかるだろう。これ以外にも、発達障害特有の過度なこだわりや集中がゲームに向き、ゲーム依存になったことで子供をネグレクトしてしまった親、親の執着が子供の教育に向いてスパルタ教育へと発展してしまった親などのケースもある。
+20
-161
児童虐待の世界においては、発達障害のある子供が虐待を受けやすいということが、近年にわかに脚光を浴びている。たとえば、ADHDの子供は、その特性から注意が散漫で落ち着かずに動き回ってしまう傾向にある。親は、そんな子供に手を焼き、「聞き分けの悪い子」と捉えてストレスをため、無理やり落ち着かせようと手を上げてしまうことがある。それが児童虐待へとつながるのだ。