1. 2022/08/06(土) 13:25:48
「何回、吐いたっていい。いくらでも待つ。まずは打席に立つところから始めてみないか」。当時の二軍コーチで、オリックスのゼネラルマネジャー福良淳一(62)の言葉に救われる。嘔吐しても、倒れても寄り添ってくれた。野球ができる喜びを感じ、少しずつ前向きな心を取り戻していく。07年も不眠や嘔吐は続いたが、一軍に定着した。
5月に1号2ランを放った際、一部のメディアで自身のパニック障害について報じられた。病から復活したとする記事だったが、違和感を覚えた。克服したわけではなかったからだ。「弱さは乗り越えるものではなく、共に歩むもの」。今は、そう考えている。
「日本では、アスリートが弱さを認めるべきではないという風潮が強い。日本のメンタルの研究は海外に比べて遅れており、国際議論に参加できていない」。国立精神・神経医療研究センター研究員の小塩靖崇は指摘する。
小塩は19~20年、日本ラグビー選手会と共同で、当時のトップリーグの選手を対象にメンタルに関して調査した。回答した251人のうち10人に1人が「うつ・不安障害」または「重度のうつ・不安障害」が疑われる状態を経験し、自死を考えた選手も13人に1人の割合でいた。
不調を抱える選手ほど食欲や体重の変化、競技力の低下を感じ、現役引退後の生活を考える傾向が強いことも示された。小塩は「アスリートは強いと思われがちだが、一般人と同様に心の問題を経験している可能性がある」と話す。
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アスリートのメンタルは 強靱きょうじん でなくてはならない――。現役時代、そんな概念に苦しめられたのが、プロ野球・オリックスの野手総合兼打撃コーチ、 小谷野 栄一(41)だ。幼少期から完璧主義で失敗を恐れた。