1. 2019/01/28(月) 10:14:30
自慢の息子は、中学2年頃から急に無口になった。何でも話してくれていた息子は、心配そうな彼女の話しかけにも、うざったそうな目をするばかり。中学3年になると成績が落ちて、第一志望の高校は難しいと先生から言われた。それでも息子は黙っているだけだ。
「どうしたの? どうして何も話してくれないの?」と問いかけるE代さんに息子の一言が飛んだ。
「うっせいな。黙れよ、このクソババァ!」
E代さんは驚愕(きょうがく)した。
出典:amd.c.yimg.jp
私はそう尋ねてみた。
「えっ? そんなものがあるんですか?」とE代さん。
「実は『性ホルモン』のこと。私はひそかにそう呼んでます。思春期になると、性ホルモンが出てくる。特に男の子の場合は、男性ホルモンの影響で、ひとりを好むようになり、あまり親と話をしなくなる。わけもなくイライラしたり、八つ当たりをしたり……。そしてなぜか『親を嫌い』になるんです。その理由が自分でもわからないので、『小さいとき、お母さんにこんなことを言われた。ひどい仕打ちをされた』と昔の話をし始める。確かにひどい親もいるけど、そうでないこともある。言われた親はびっくりしてしまいますよね」
「確かに。思い当たることは多いですね」
「生物学的に言えば、生殖が可能な年齢になって、次の世代を産み出すために親元を離れる。そのための行動を導くのが性ホルモンなんですね。人間で言えば、その年齢が14歳前後。昔なら、そのころに『元服』して成人になる。でも現代社会では、まだ一人前とは言えない。だから社会に出るまでの10年間くらいが、親子の軋轢(あつれき)の一番激しい時期じゃないでしょうか。『悪夢の10年』と呼ぶ人もいるくらいなんですよ」
+1322
-35
「先生、『親』ってこんなに大変な仕事だったんですね!」E代さんは心療内科の外来で、ため息をつきながらそうこぼした。彼女は現在、48歳。診断は「抑うつ状態」。3年前に初めて来院したときは、職場のストレスからくる「適応障害」の診断だった。(略)「適応障害」の診断書を提出し、職場を替えてもらった。イヤな上司の顔も見なくてすむ。もうこれで体調も戻るはず。ホッとしたはずなのに、症状はおさまらなかった。「どうして?」とE代さんは考えた。そして思い当たったのが、高校に入ったばかりの息子のことだった。