1. 2022/08/17(水) 09:25:50
角膜の損傷や疾患による失明や視力の低下に苦しむ人にとって、視力を取り戻すほとんど唯一の方法はドナーから寄付された角膜の移植手術です。しかし、寄付された角膜は2週間しか保存できないほか、ダメージのある角膜を除去して新たな角膜を置き換える手術は侵襲的であり、設備の整った病院でしか行うことができません。そのため、角膜移植を受けられるのは70人に1人程度であり、低・中所得国家では治療法へのアクセスが非常に限られているという問題もあります。
そこでスウェーデン・リンショーピング大学などの国際的研究チームは、厳格な条件で精製された「ブタの皮膚由来のコラーゲン分子」を化学的・光化学的に処理した人工角膜を開発しました。ブタの皮膚は食肉産業の副産物として容易に入手可能であり、特別に開発された包装・滅菌プロセスによって人工角膜は最大2年間保存可能だとのこと。
出典:i.gzn.jp
臨床試験の結果、失明していた14人を含むすべての患者の視力は通常の角膜移植と同程度に回復し、その効果は手術から2年後も継続していました。特に、実験前は盲目だったインド人参加者のうち3人は、手術から2年後に「1.0」の視力を有していたと報告されています。患者には移植による免疫の拒否反応などもみられなかったほか、傷痕やその他の有害事象は確認されませんでした。
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視力の喪失は生活の質を大幅に低下させる問題であり、世界中では推定1270万人が角膜の損傷または疾患を原因とする視力の喪失に苦しんでいます。そんな角膜の問題で視力を喪失した人に、「ブタの皮膚から作ったインプラント」を移植して視力を回復させる臨床試験が成功しました。