1. 2020/12/01(火) 00:01:21
老眼は誰にでもしのび寄るのだ。むしろ、元の視力が良い人間には急接近してくる無法者。ある日、薬や調味料の箱の裏書が読めなくなって、はじめは何が起こったのかわからなかった。それからシャンプーの裏の素敵な効能が読めない。しっとりなのか、サラサラなのか?キャンドルライトでメニューが読めない。本屋で立ち読みできない。
決定的だったのは、原宿のヤングなブティックに行った時だ。<中略>手に取った商品のタグを見て、私は打ちのめされた。読めない。サイズが。素材が。そして、値段が。ここにあるものを買う資格は無いと言われたようで、すごすごと店を後にした。帰り道に思った、老眼鏡を買おうと。
出典:www.sponichi.co.jp
+442
-9
鈴木保奈美さんが『婦人公論』で連載している「獅子座、A型、丙午」。単行本の発売を記念して収録されているエッセイを期間限定で配信します