ガールズちゃんねる
  • 5011. 匿名 2025/11/05(水) 22:16:02 

    >>5008
    ⚠️解釈違い ⚠️微🐚 ⚠️闇
    ⚠️地雷が無く本当に何でも許せる方のみ

    🌫️境界の舞姫 ✿ 第九話

    「何やってんだ! 死にてぇのか!!」
    鋭い怒声と共に腕を後ろに力強く引かれた。
    その勢いは、私の正気を閉じ込めていた飴細工のような甘くて脆い檻にぱきりとひびを入れた。
    振り返ると町内会長がものすごい顔をして私の腕を掴んでいる。
    「……? 私、今……何して……」
    気付けば私の下半身は川に浸かっていた。
    途端に底冷えしそうな冷たさがじわじわと身体に広がり、次第に歯の根が合わなくなる。
    こんな冷たい水の中にいて、どうして今まで平気でいられたのだろう。
    それでも耳の奥には私を呼ぶあの声がまだ微かに残っていた。
    やはりあれは応えてはいけなかったもの──そう身を以て知ったはずなのに、心はまだ彼を追い求めてしまっている。
    「だ、だって私、あの人に呼ばれて……」
    震える声しか出なかった。
    「しっかりしろ! 誰もいやしねぇ!」
    目を覚ませと言わんばかりに強く肩を揺すられ、そのまま岸へと連れ戻された。
    「踊りの後、声を掛けても反応が無いから気になってな。そしたら取り憑かれたみたいにフラフラ川の方へ行くもんだから、追いかけてみたらこれだ。一体どうした、何があったっていうんだ……」

    喉から絞り出すような会長の言葉を聞いたのを最後に、私は意識を手放した。

    ──気が付いた時には会長の家の一室に寝かされていた。
    ずぶ濡れの私を背負って帰ってきた会長を見て奥さんは随分驚いたらしい。
    覚束ない頭で謝ることしか出来ない私を「無事で良かった」と何も聞かずに抱きしめてくれた。
    二人の強い勧めもあり、今夜はこの家に泊まることになった。
    私がこの土地に来た経緯を知っているだけに、また何かおかしなことをしでかさないか見張る意味もあったかもしれない。
    彼らに心配をかけるのは本意ではないので、ここは素直に厚意に甘えることにした。

    ……一体どこまでが現実なのか分からない。
    ここに来てからの出来事は全て自分の作り上げた幻想だったのではないかと思うと、急に怖くなって私は自分の両肩を抱きしめた。
    こうして温かい人たちに守られているはずなのに、一度芽生えた不安は胸の奥でさざ波を起こした。
    やがてその小さな揺れは、そこに映っていた優しさすら覆い隠すように私の心に広がっていく。

    もしかして私は、自分が思っていた以上に病んでいたの──?

    身体を冷やしたのがいけなかったのか、夜中に発熱してしまったらしい。
    けれどその火照りは、風邪のそれとはまた違う内側から灼かれるような熱を孕んでいた。
    ……魘されながらも感覚だけは鮮明だった。
    首筋をなぞる唇、背中を撫でる指先、素肌を這う熱い吐息──。
    注ぎ込まれた毒が目覚めるように、身体の奥深くから溶け出す抗えない欲に溺れそうになる。

    そこで、嫌というほど分かってしまった。
    私はまだ、解放などされていなかったということを。
    意識が朦朧としている間もずっと、彼の残像に抱かれ続けていたのだから──。


    続く

    +29

    -8

  • 5017. 匿名 2025/11/05(水) 22:25:51 

    >>5011
    ワァ…ァ…(語彙力喪失)
    引き込まれて読んでます✨

    +18

    -4

  • 5034. 匿名 2025/11/05(水) 23:42:09 

    >>5011
    こんな経験してしまったら、何を失っても惜しくないほど恋焦がれてしまいそうです

    +15

    -4

  • 5052. 匿名 2025/11/06(木) 02:35:03 

    >>5011
    いけないと分かっているのに、もう身も心も応えてしまってる…どうなるんだろう…目が離せません

    +18

    -7

  • 5153. 匿名 2025/11/06(木) 21:37:36 

    >>5011
    ⚠️解釈違い ⚠️微🐚 ⚠️闇
    ⚠️地雷が無く本当に何でも許せる方のみ

    🌫️境界の舞姫 ✿ 第十話

    あれから私は丸二日ほど寝込み、なんとか起き上がれるようになった頃には祭りは最終日を迎えていた。
    会長たちにはまだ休んでいるよう言われたものの、さすがにこれ以上厄介になるのは申し訳無さすぎてそれは固辞する。
    奥さんは最後まで渋っていたけど、踊りには参加しないこと、川には近付かないこと──この二つを条件になんとか自宅へ戻ることを許してくれた。

    帰り道、風に乗って囃子の音が聞こえてくると、少しだけ祭りの余韻に浸りたくなった。
    誘われるように高台の方へ歩みを進めるも、無意識に腕や足が舞の形を取ろうとすることに気付いて思い留まり、踵を返した。
    提灯や夜店の灯りに照らされた通りを人の流れに逆らうように歩いていると、視界の端で長い黒髪が揺れた。
    その瞬間、身体の奥底から渇望にも似た感覚が湧き上がる。
    咄嗟に駆け寄ろうとするも人混みに遮られて動きが取れず、思わず声が零れた。
    「待って……!」

    すると、この喧騒では声など届くはずないのに、振り返った彼の瞳が私を捉えた。
    その瞬間、世界は彼と私だけのものになる。
    一瞬の交錯の後、すっと視線は逸らされた。
    けれどそれは、行くべき方向を指し示しているのだとなぜか確信めいたものが私の中にはあった。
    そして、その場所はきっと──。

    熱気と灯りで彩られていた世界に背を向けると、途端にそれらは色を失った。
    言い渡された条件も、とうに頭から抜け落ちていた。
    人波をかき分け、私の足は一目散にある場所へと向かう。
    通り過ぎる提灯の赤い灯が灰色に霞んでいくのを横目で見ながら、自分が世界から切り離されていくような感覚に陥る。

    ようやく辿り着いたそこは、あらゆる概念を覆い隠すように川霧が濃く立ち込めていた。
    決してあの夜のことを忘れたわけではない。
    なのに、不思議と恐怖は感じなかった。
    この靄の中では感情も、時間も、夢か現かさえも曖昧になる。
    だってここは、すでに彼の領域で、境界でもあるのだから──。

    「……来てくれると思ったよ」
    彼はいつもと変わらぬ淡い笑みを浮かべたまま私を迎えてくれた。
    胸を締め付けるような、泣きたくなるくらいに優しい笑顔だった。

    どうして。
    どうして来てしまったの私は。
    自問自答は宙を彷徨い、答えを得られぬまま霧散する。

    「ずっと、君を待っていたんだ。……行こう? 僕と、一緒に──」

    その誘い声は、どんな睦言よりも私の胸を高鳴らせた。


    続く

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