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5153. 匿名 2025/11/06(木) 21:37:36
>>5011
⚠️解釈違い ⚠️微🐚 ⚠️闇
⚠️地雷が無く本当に何でも許せる方のみ
🌫️境界の舞姫 ✿ 第十話
あれから私は丸二日ほど寝込み、なんとか起き上がれるようになった頃には祭りは最終日を迎えていた。
会長たちにはまだ休んでいるよう言われたものの、さすがにこれ以上厄介になるのは申し訳無さすぎてそれは固辞する。
奥さんは最後まで渋っていたけど、踊りには参加しないこと、川には近付かないこと──この二つを条件になんとか自宅へ戻ることを許してくれた。
帰り道、風に乗って囃子の音が聞こえてくると、少しだけ祭りの余韻に浸りたくなった。
誘われるように高台の方へ歩みを進めるも、無意識に腕や足が舞の形を取ろうとすることに気付いて思い留まり、踵を返した。
提灯や夜店の灯りに照らされた通りを人の流れに逆らうように歩いていると、視界の端で長い黒髪が揺れた。
その瞬間、身体の奥底から渇望にも似た感覚が湧き上がる。
咄嗟に駆け寄ろうとするも人混みに遮られて動きが取れず、思わず声が零れた。
「待って……!」
すると、この喧騒では声など届くはずないのに、振り返った彼の瞳が私を捉えた。
その瞬間、世界は彼と私だけのものになる。
一瞬の交錯の後、すっと視線は逸らされた。
けれどそれは、行くべき方向を指し示しているのだとなぜか確信めいたものが私の中にはあった。
そして、その場所はきっと──。
熱気と灯りで彩られていた世界に背を向けると、途端にそれらは色を失った。
言い渡された条件も、とうに頭から抜け落ちていた。
人波をかき分け、私の足は一目散にある場所へと向かう。
通り過ぎる提灯の赤い灯が灰色に霞んでいくのを横目で見ながら、自分が世界から切り離されていくような感覚に陥る。
ようやく辿り着いたそこは、あらゆる概念を覆い隠すように川霧が濃く立ち込めていた。
決してあの夜のことを忘れたわけではない。
なのに、不思議と恐怖は感じなかった。
この靄の中では感情も、時間も、夢か現かさえも曖昧になる。
だってここは、すでに彼の領域で、境界でもあるのだから──。
「……来てくれると思ったよ」
彼はいつもと変わらぬ淡い笑みを浮かべたまま私を迎えてくれた。
胸を締め付けるような、泣きたくなるくらいに優しい笑顔だった。
どうして。
どうして来てしまったの私は。
自問自答は宙を彷徨い、答えを得られぬまま霧散する。
「ずっと、君を待っていたんだ。……行こう? 僕と、一緒に──」
その誘い声は、どんな睦言よりも私の胸を高鳴らせた。
続く+28
-8
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5154. 匿名 2025/11/06(木) 21:38:47
>>5153
⚠️解釈違い ⚠️微🐚 ⚠️闇
⚠️地雷が無く本当に何でも許せる方のみ
🌫️境界の舞姫 ✿ 最終話
ふと、胸の奥に温かな記憶が去来する。
見守ってくれた眼差し。
繋がれた手のぬくもり。
朗らかな笑い声──。
大切なもののはずなのに、それらは儚い泡のようにすぐに溶けて消えてしまった。
いつの間にか川霧も晴れていた。
月が辺りを煌々と照らし、二人の姿が月影に浮かび上がる。
「──ほら、おいで?」
差し伸べられた手がいつかの朝の光景と重なった。
何も知らずに胸をときめかせ、無邪気に笑っていた私。
知っても尚、惹かれてしまうのを止められないでいる。
今思えば、あの参道に迷い込んだ時にはすでに彼に囚われていたのかもしれない。
……ううん、もっと前だ。
私が思っているよりもずっと前から、あの視線に捕らえられていたような気がする。
もしかすると、私がこの地に帰ってくることは、必然だった──?
でも、そんなことはもうどうでも良かった。
彼は私を求めてくれている。
その事実だけで私の胸は幸せで満ち足りていた。
……だから。
私は迷わず彼の手を取る。
それは、あの夜の川底を思い起こさせる酷く冷たい手だった。
その瞬間、川面に映る月と彼の笑顔が艷やかに歪む。
けれど、私がその本当の顔を見ることは──永遠に無かったんだ。
終
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R.シューマン
「ロマンツェ第2集Op.91」より
Der Wassermann(水の精)+29
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