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5008. 匿名 2025/11/05(水) 22:13:27
>>4811
⚠️解釈違い ⚠️微🐚 ⚠️闇
⚠️地雷が無く本当に何でも許せる方のみ
🌫️境界の舞姫 ✿ 第八話
誰とも顔を合わせる気になれず、隙を見て私はそっと踊りの輪から離れた。
賑やかな囃子も人々の喧騒も別世界のことのように遠くへ霞んでいき、代わりに澄んだせせらぎの音が耳へと届くようになる。
それに導かれるように私の足は丘を下り、自然と川の方へと向かっていた。
祭りの熱気が届かない一帯は張り詰めた空気に満ちていて、そのどこか現実離れした雰囲気に呑み込まれそうだった。
足下の石を踏み締める感触と夜風の冷たさだけが、辛うじて私を現に繋ぎ止めている。
川面に映る月が不安げに揺れ、一層その境を曖昧なものにしていった。
そういえばこんな時間に来たのは初めてかもしれない。
夜は水際に寄ってはいけないと、この辺りでは昔から言われているから。
「練習の成果が出てたね」
……もう、突然声をかけられても驚きはしなかった。
色白なのは変わらないけれど、夜目にもほんのり薔薇色がかって見える頬は初めて会った頃より随分と生気が漲っているようだった。
濡れたような長い黒髪は艷やかに形の良い輪郭を縁取り、冴え冴えとした月光の下でその整った容貌は息を呑むほどに凄みを増していた。
度を超えた美しさというのは異形と紙一重なのではないだろうか──そう思わずにはいられないほどに。
「……見てたの?」
というよりは、一緒にいたと言った方が正しいのかもしれない。
「ねぇ、あなたが私に教えたのって──」
「あぁ、気付いてくれた? ……あれはね、忘れられた舞なんだ。かつてはこの土地の巫女が捧げ物として奉納してくれていた。それがいつしか継承する者もいなくなり、途絶えてしまった」
「やっぱり……」
そうではないかと思っていても、いざ事実として突き付けられると俄には信じ難くて。
でも、忘れられた舞だというのであれば、どうして彼はそれを知っているの?
「思った通りだったよ。君になら踊りこなせるんじゃないかって。やっぱり君は僕に力をくれる存在だ」
優しく微笑んでいるのに、その瞳に宿るものは光ではなかった。
「──あなたは、誰?」
これまで問わずにいたことを今ここでようやくぶつけてみた。
少しの間の後、彼は答える。
「……僕もまた、“忘れられた存在”だよ。聖か邪かで言ったら、今は間違いなく邪だろうね。ああやって君を、淫らに舞わせるくらいには──」
踊りの最中に頭をよぎったことを思い出し、顔がカッと熱くなる。
「本当は誰にも見せたくなかったけどね、あんな姿。……思った以上に官能的だったよ」
嫣然と笑う彼の声は、揶揄いの色を含みながらもやけに蠱惑的に響いた。
「どうして、私に……」
「……知りたい?」
耳を傾けてはいけない──そう心が警鐘を鳴らしているのに、その甘やかな声音はじんわりと蝕むように私の感覚を狂わせていく。
「いいよ、教えてあげる。……だからほら、もっとこっちに来て──?」
それが呼び水となり、気付けば足は彼の方へと向かっていた。
絡みついたままだった鎖を巻き取られるかのように、私は一歩一歩、彼に引き寄せられていく。
──その時だった。
続く+29
-7
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5011. 匿名 2025/11/05(水) 22:16:02
>>5008
⚠️解釈違い ⚠️微🐚 ⚠️闇
⚠️地雷が無く本当に何でも許せる方のみ
🌫️境界の舞姫 ✿ 第九話
「何やってんだ! 死にてぇのか!!」
鋭い怒声と共に腕を後ろに力強く引かれた。
その勢いは、私の正気を閉じ込めていた飴細工のような甘くて脆い檻にぱきりとひびを入れた。
振り返ると町内会長がものすごい顔をして私の腕を掴んでいる。
「……? 私、今……何して……」
気付けば私の下半身は川に浸かっていた。
途端に底冷えしそうな冷たさがじわじわと身体に広がり、次第に歯の根が合わなくなる。
こんな冷たい水の中にいて、どうして今まで平気でいられたのだろう。
それでも耳の奥には私を呼ぶあの声がまだ微かに残っていた。
やはりあれは応えてはいけなかったもの──そう身を以て知ったはずなのに、心はまだ彼を追い求めてしまっている。
「だ、だって私、あの人に呼ばれて……」
震える声しか出なかった。
「しっかりしろ! 誰もいやしねぇ!」
目を覚ませと言わんばかりに強く肩を揺すられ、そのまま岸へと連れ戻された。
「踊りの後、声を掛けても反応が無いから気になってな。そしたら取り憑かれたみたいにフラフラ川の方へ行くもんだから、追いかけてみたらこれだ。一体どうした、何があったっていうんだ……」
喉から絞り出すような会長の言葉を聞いたのを最後に、私は意識を手放した。
──気が付いた時には会長の家の一室に寝かされていた。
ずぶ濡れの私を背負って帰ってきた会長を見て奥さんは随分驚いたらしい。
覚束ない頭で謝ることしか出来ない私を「無事で良かった」と何も聞かずに抱きしめてくれた。
二人の強い勧めもあり、今夜はこの家に泊まることになった。
私がこの土地に来た経緯を知っているだけに、また何かおかしなことをしでかさないか見張る意味もあったかもしれない。
彼らに心配をかけるのは本意ではないので、ここは素直に厚意に甘えることにした。
……一体どこまでが現実なのか分からない。
ここに来てからの出来事は全て自分の作り上げた幻想だったのではないかと思うと、急に怖くなって私は自分の両肩を抱きしめた。
こうして温かい人たちに守られているはずなのに、一度芽生えた不安は胸の奥でさざ波を起こした。
やがてその小さな揺れは、そこに映っていた優しさすら覆い隠すように私の心に広がっていく。
もしかして私は、自分が思っていた以上に病んでいたの──?
身体を冷やしたのがいけなかったのか、夜中に発熱してしまったらしい。
けれどその火照りは、風邪のそれとはまた違う内側から灼かれるような熱を孕んでいた。
……魘されながらも感覚だけは鮮明だった。
首筋をなぞる唇、背中を撫でる指先、素肌を這う熱い吐息──。
注ぎ込まれた毒が目覚めるように、身体の奥深くから溶け出す抗えない欲に溺れそうになる。
そこで、嫌というほど分かってしまった。
私はまだ、解放などされていなかったということを。
意識が朦朧としている間もずっと、彼の残像に抱かれ続けていたのだから──。
続く+29
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5014. 匿名 2025/11/05(水) 22:23:33
>>5008
⚠️個人的な意見
いっそ(精神を)病んでしまった方が幸せかもって思ってしまう瞬間て、あると思うんだよな…
ずっと読んでます+19
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