ガールズちゃんねる

小説書いている人、いますか?

116コメント2018/06/20(水) 15:13

  • 109. 匿名 2018/06/18(月) 12:54:22 

    >>103
    人数が増えたので、彼は隣のテーブルに移動した。

    足下に置かれていた大きなケースを隣の椅子に置き、
    中のものを取り出す。

    繊細な象嵌細工が施されたレトロな感じのアコーディオンだ。
    通常より、やや小振りだろうか?

    その装飾に興味を引かれ、美咲は、彼の前の席に移った。

    「私は詳しくないのでわかりませんが、きっと凄い名器なんでしょうね。」

    「いえ、無名です。」

    彼は、続けた。
    「この手風琴(アコーディオン)は、日本製です。
    大正の始めに無名の職人によって造られたものだそうです。
    その職人の作品は、精巧なからくり人形が数点残されているだけで、楽器はこれ一台しかありません。
    ですから音楽業界でもこの存在は全く知られていません。

    でも、この手風琴の繊細な音色と広い音域は、名器と言われる他の楽器に比べても遜色有りません。」

    「そして、それでしか表現できない曲もあるのよね?」

    いつの間にか主催者さんが、美咲の肩越しから、
    そっとのぞき込んでいる。

    そして少し俯き、さらりと垂れる前髪をそっとかき分けながら、美咲を見つめ言った。

    「彼の54番のコメントの内容、覚えてる?」

    54番・・もっとも評価の高かったコメントだ。
    それは都市伝説のようなものだった。

    四楽章に分かれたその曲のすべてを聴くと、前世の記憶が蘇るという・・

    「そう、”禁断の調(しらべ)”ね・・」

    美咲の心の動きを見透かすように、
    彼女は、そっと呟き、いたずらな童女のように微笑んだ。

    +3

    -1

関連キーワード