1. 2024/09/11(水) 21:39:46
アカネさんは、自分は「オンリー」にはならない、と決めていた。オンリーは相手がいる間は比較的安定した収入があり、家や物資を与えられるが、契約を交わしているわけではないので、いつ相手が米国に帰るなどしていなくなってしまうかわからないし、心変わりして別の女性と関係を持つ可能性もある。そうすればたちまち経済的に困窮するので、自分はオンリーはいやだ、不特定多数を相手にした方がいい、と考えたらしい。
このためアカネさんは、米軍基地に入ったことはない。田中さんに「入りたくないよ」と言い、こう続けたという。
「仕方がないから(米兵を)お客にして、おぞましいことをされているんだ。夜空の星を見ながら歯を食いしばって、アメ公が果てるのを待ってるんだよ。そんなことをするアメ公がいっぱいいるようなところへ誰が行けるか。ふざけんじゃないよ」
また、日本人を相手にしたパンパンもいたが、アカネさんは日本人の客は一切とらなかった。日本人の場合、同胞割引といって、米兵より2割ほど安くする習慣があった。「戦地から生きて帰って来てご苦労様でした」という意味が込められていたらしい。しかし、アカネさんは2人の兄を戦争で亡くしたといい、「兄のことを考えたら、戦争から帰って来たからってなんで2割引で体売らなきやいけないんだ」と田中さんに涙を流して語った。
当時、朝霞には体を張って稼ぐパンパンに近づき、「ヒモ」になってもうけをかすめ取る日本人男性もいた。客引きやヤクザ者が、甘言を弄して女性を操り、客を取らせるなどして利益を搾取していたのだ。
その男性は常に7、8人の女性と関係を持ち、ヒモとなって金を受け取り遊び歩いていた。女性からもらった金で車を買い、乗り回していたという。しかし、アカネさんは、男性からの誘いを断った。「男のくせに、女から搾り取って遊んでるやつなんて、顔を見ただけでむしずが走る」ときっぱり言い放ったという。
アカネさんはそのほか、パンパンをやっていたときのメーク方法、当時内ももに緋牡丹の柄の入れ墨を入れ、今も残っているが年を経て「くさったキャベツ」のようになっていることなどを笑いながら語った。
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朝ドラ「ブギウギ」にも登場した「パンパン」と呼ばれた女性たち。敗戦後の日本に駐屯したアメリカ軍の兵士たちに体を売って生活していた女性をそう呼ぶ。