1. 2024/04/19(金) 23:36:57
うつ病のつらさは体験した人じゃないと分からないと山口は言う。
「『倦怠感』って言葉、よくないですよ。『なまける』なんてもんじゃないから。体験していない人が想像するより、200倍くらいつらいと思う。僕の場合は『ドラゴンボール』に出てくる『精神と時の部屋』じゃないけど、ひどい時は本当に重力が何倍にも感じる。躁の時間が長い人や、端から見たら元気で、サボってるように見える人もいる。人によって症状が違うので、まずはカウンセリングや治療を受けることが大事だと思います」
「いきなり数千や数万人の前でステージに立って、収入が何百倍になったりすれば、どこかおかしくなるミュージシャンも少なくない。それを食い止めるためのケアが日本は遅れている気がする。相談できる組織を音楽業界の中で作りたい。今後動いていきたいです」
「当たり前に過ごすって、すごいことだと思う。例えば会社員の人なら満員電車に乗って、上司もいて、人と自分を比べて……体調が悪くなるのも当たり前。今の社会って、あっさりと簡単に人を見放すじゃないですか。一回輪の外に出てまた中に入るのはすごく勇気がいる。傷ついたことを受け入れる社会になってほしい。きれいなリンゴも傷んだリンゴも、リンゴはリンゴですよね」
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「最近多いのはパニックバイ。いらないものまでネットで買ったり、お店で接客されると楽しくなってあれもこれも買ってしまったり。ソロツアーのあとも一回倒れました。がんばったらその分、人より疲れる。永遠につらい日々が続いたらどうしよう、という恐怖は常にあります。それでも、自分にはやっぱり音楽しかない」
「元に戻る」のではなく、「新しい自分」になると山口は言う。
「うつ病の自分を受け入れる。その習慣が新しい自分を生み出し、新しい音楽を作り、それをメンバーやスタッフがいいねと言ってくれたらやればいい。この病気と寄り添い、乗りこなして生きていく覚悟です」
「新しい自分」だからこその「新しい目標」もある。
「音楽やメディアを使って、うつ病になった僕の姿を包み隠さずドキュメントとして見せていこうと決めた。苦しさを知っている立場だからこそ、チャレンジしたい。それで救える人が一人でもいればいいし、何か新しい音楽の感動や考察の種を示せたらとも思う。今の僕はそこに懸けている。病気が治るかもしれないし、もしかしたら最後には死んでしまうかもしれない。どうなるか分からないけど、この病気を公開しながら音楽を発信していくことだけは約束します」
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今年1月、サカナクションのボーカル・山口一郎は、千秋楽を迎えたソロライブツアーのステージ上で自身がうつ病だと公表した。不調に気付いたのは2年ほど前。朝から晩までベッドから出られず、ライブも中止し、不安と焦りでいっぱいになった。以来、一進一退を繰り返す体調と向き合う日々を過ごし、「ようやくここまで回復した」と取材に応えた。闘病の経過、周囲の支え、病と生きる現在を語る。