1. 2024/01/25(木) 11:29:36
幼い頃から親の意見は「絶対」。家では食事や掃除を担ったが、できなかった時には暴力も受けた。親が決めた高校は中退。ほどなくして妊娠に気付いた。相手の男性とは連絡が途絶え、孤立した。親の支援は考えられず、周囲に「近くの都市にいる」と告げ、公共交通機関を乗り継いで熊本へ向かった。カオリさんが親に妊娠を告げられなかったのは、親から虐待を受けて育ったから。赤ちゃんが、家族から同じ目に遭いかねず、育てる自信もなかった。しかし、どこかでつながっていたいと、慈恵病院の新生児相談室長だけに実名を告げる内密出産を選んだ。
当初は子どもの特別養子縁組を望んだカオリさん。「でも、赤ちゃんはめっちゃかわいい」。唯一、カオリさんとつながる蓮田真琴・新生児相談室長と数カ月かけて話し合い、「親や知り合いに知られないなら」と児童相談所などごく一部に実名を明かした。親子の関係を失う特別養子縁組ではなく、里親に養育してもらう道を選んだ。
里親は事情をそのまま受け止めてくれた。成長に合わせた行事ごとを催し、報告してくれる。地元の児相職員が面会に立ち会い相談に乗ることも。「いろんな話を聞いてくれる。内密出産するまで、こんなに優しい人たちが世の中にいるんだと思わなかった」。
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東日本在住のカオリさん(仮名)は昨春、未婚で人知れず身ごもり、熊本市西区の慈恵病院で出産した。親子の関係を少しでも残したいと思って選んだ内密出産。一度は離れる決心をしたが、その後翻意して公的機関に実名を明かし、今は里親のもとで育つ子どもと月1回の面会交流を楽しみにする。「いつか引き取って、大きくなったら一緒に遊園地に行きたい」。カオリさんの夢は膨らむ。