1. 2023/11/28(火) 15:08:44
高校トップクラスの選手になると、授業料免除は当たり前でプラスアルファが必要になってくる場合もある。具体的にいうと、寮費、食事代、合宿代を大学が負担。さらに返済不要の奨学金を用意しているチームもあるのだ。ある強豪大学は特待生が4段階あり、Cは授業料・寮費免除、Bはプラスして月5万円の奨学金、Aは月に10万円、Sは月に15万円。高校時代の実績と期待度に応じて、選手への“報酬”が変わってくる。
別の大学では月に30万円という奨学金を手にしている選手もいる。筆者が知る限りの最高額で、それだけの奨学金を複数の大学が準備している。「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、大卒の初任給は22万8500円。この額を優に超える金額を受け取る選手を「アマチュア選手」や「学生ランナー」と呼べるのだろうか。
この“奨学金問題”は今年3月にあった大学指導者の研修会でも話題になったという。ケニア人留学生も奨学金を受け取っているが、日本では慎ましい生活を送り、ケニアの実家に送金したり、帰国時に大量のお土産を持参する選手が大半だ。一方、日本人で多額の奨学金を受け取っている選手は、ブランド品に身を包むなど、散財する選手が多い印象だ。
箱根駅伝が華やかすぎるため、実業団に進んだ選手たちは目標を見失ってしまう場合が少なくない。箱根駅伝が30%近い視聴率を叩き出す一方で、前日に行われるニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝競走大会)は視聴率10%前後。オリンピックのマラソン代表選手にでもならない限り、学生時代ほど世間はチヤホヤしてくれない。せっかく実業団に進んでも、「箱根駅伝以上の目標を見つけられない」と早々にシューズを脱いでしまうランナーもいるほどだ。
ある大学の監督は、「競技を頑張ってきたとしても、人生のハードルを越えてきていないんです。1000円稼ぐのがどれだけ大変なのかわからない。高校、大学、企業に苦労なく入ってきているので、社会人になって挫折したときに、次の職がないんですよ」と話す。人生のキャリアプランで悩んでいる選手は少なくないようだ。
「選手は先のことをさほど考えていないですし、勧誘する実業団チームも競技引退後の具体的な説明をすることはほとんどありません。私は選手たちに『必ず引退後のセカンドキャリアを聞きなさい』と言っているんです。そっちの方が大事ですから。そうでないと使い捨てになりますよ。これまで多くの選手が実業団に進みましたが、競技を退いた後、その会社を去った者は少なくありません」(前出監督)
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毎回高視聴率を出す、正月の箱根駅伝。各大学は上位を狙うため、優秀な高校生を入学させようと躍起になっている。