1. 2023/09/12(火) 21:17:12
コロナ禍では生活に困窮する「ひとり親家庭」が急増した。そして今や物価高が直撃している。そんな背景で生活苦の末に借金をしてしまうシングルマザーも少なくない。そんな社会のリアルを見事に映し出した回だった。ドラマで、シングルマザーが執行官の小原(織田裕二)に指輪を差し押さえ物件として差し出す場面に戻ってみよう。
(シングルマザー)「これもお願いします。もう逃げません。親や兄弟に相談してどうにか残りも返せるようにします」
(小原)「役所のほうにも相談してみてください。社会福祉協議会の審査に通れば無担保、連帯保証人なしで低金利の借り入れができる可能性があります」
社会福祉協議会の貸付金は生活に困窮した人のためのいざという時のセーフティネットの一つである。ただし、条件や支払いのタイミングなどで制限があるために必ずしも必要な時にすぐに使える制度ではない。小原が言った「役所」というのは地方自治体の生活保護の窓口のことだが、こちらも困った時に必ずしもすぐに使える制度になっていないことは、福祉の専門家などから指摘されていることである。
だが執行官である小原の役割としてはそう告げることが精一杯だったはずだ。この建前のような言葉を聞いて、シングルマザーが怒ったように小原に詰め寄る。
(シングルマザー)「執行官さんも公務員ですよね? 教えてほしいんですけど、税金って何に使っているんですか? なんで家事に還元されないの? 家族のためにきちんと働いている人のところにどうして少しも戻ってこないの? なんで普通に幸せになれないの? どうして…?」(「ママ、なんで泣いているの?…」と子どもの声)
+26
-30
子どもの貧困、学生の貧困、ひとり親家庭の貧困──本来、社会的に庇護される立場であるはずの人々が陥っているとされる現代の「貧困」は、どのような実態を伴っているのか。近著『メディアは「貧困」をどう伝えたか』で現代の貧困報道のありようをつぶさに検証したジャーナリスト・水島宏明氏(上智大学文学部新聞学科教授)は、今夏テレビ朝日系列で放送された伊藤沙莉主演の連続ドラマ『シッコウ!!〜犬と私と執行官〜』のなかで、そうした「見えにくい貧困」が巧みに描写されていたと評する。水島氏が解説する。(以下、作品内容に関する記述を含みますので、未見の方はご注意ください)