1. 2023/05/16(火) 22:50:45
「最初から詐欺だとわかっていたんです。ただ、テレグラムで指示役とやりとりをしたとき『携帯代を滞納している』と伝えたら、『これで払っていいよ』と、3万円が振り込まれて……。連絡を取れないと困るからでしょうが、『なんてありがたいんだ』と、感動してしまって。人の優しさに長く触れていなかったので、『こんなクズみたいな自分を信用してくれた』と、心を許してしまいました」
そうして警察官に扮して相手の高齢女性からバッグに入ったお金を受け取った。
(略)冷静になると罪の意識が襲ってくる。“次の仕事”の依頼や脅迫文がテレグラムに届くなか、たまたま電話した妹に闇バイトのことを打ち明けて犯行が露呈した。
「刑務官からは『オマエの人生はもう終わりだ』と言われ、出所時には母や妹にも身元引受人を拒否されました。ただ、ありがたいことに、受刑者を支援するNPOに出合い、今は団体が管轄するグループホームで暮らしています。
いまだに生活保護ですが、まずは仕事を見つけたい。自分の人生の中で一番まともだったのは広告デザインをしていた頃でした。だから、もう一度デザインの仕事がしたくて、職業訓練に通っています」
取材を通じて記者が感じた滝川さんの印象は、マジメそのもの。とても詐欺を働くような人には見えない。だからこそ、生活に困れば誰でも“落とし穴”にハマる怖さがある。
「どんな理由であれ、自分が犯した罪を正当化するつもりはありません。しかし、結婚もしておらず、お金もなく、周りに頼る人もいないと、精神を病んで普通なら考えもつかないような行動に出てしまうのは、よくわかるんです。僕のクソみたいな体験が、何かの抑止力になればいいです」
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闇バイトに手を染める人は学生など若者が多いイメージがある。しかし、実は生活苦から闇バイトに応募する中高年も少なくない。東北地方在住の滝川大樹さん(仮名・54歳)もその一人だ。滝川さんの育った家庭環境は少々複雑だ。18歳の頃に両親が離婚し、実父の戸籍に入りながらも親戚の家に妹2人と預けられて暮らしてきた。「当初は良くしてもらっていたのですが、徐々に親戚との仲も悪くなり、夕食時に僕だけ料理が出ない日もありました。それで親戚宅には居づらくなり、実母を頼って同居したのですが、今度は再婚した義父から暴力を受けた」高校卒業後はお金の問題から進学せず、アルバイト生活。しかし、どの職場でも長くは続かなかった。