1. 2023/04/20(木) 18:07:56
■発達障害は家族関係が影響するものではない
今は自閉症に関しては、ほぼ100%遺伝要因による生まれつきの疾患であり、家族関係が影響するものではないことがわかっています。自閉症は子どもに対して冷たい対応をするお母さんが原因だという先ほどの仮説がかつては医学界の中でも主流でしたが、今は完全に否定されています。
私が診療している患者さんには自閉症スペクトラムのお子さんも多いですし、ご自身が自閉症スペクトラムの親御さんとも関わる機会がたくさんあります。自閉症のお子さんがいるご家庭と関わる度に、自閉症児と親や兄弟との間に間違いなく深い愛があるご家庭がほとんどだということがわかります。特徴的な感情表現や言葉遣いをする子もいますが、そういったことが影響して、ご家族ごとに工夫を凝らしてとてもユニークな家族愛の表現をされることも多いのです。
そのご家庭をよく知らない人の目からは、そういったユニークな家庭内の関係性がいわゆる「普通」の温かい家族関係に見えるかと言ったら、そうではないかもしれません。おそらく昔の研究者は、「普通」の感覚に照らして、自閉症のお子さんがいる家庭の「普通の温かい関係ではない様子」が「自閉症」と相関関係がある、と判断したのだと思いますが、これは全く間違ったDirection of Effect だということが今ではわかっています。
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小児精神科の疾患というと、ほんの最近までは子どもが自閉症になるのは母親の冷たい態度のせいだなどと言われていたくらい非科学的な偏見があった分野です。昔と比べて精神科の疾患をめぐる理解は一般にもだいぶ浸透しましたが、「子どものうつ病や不安障害なんか存在しない」と言う人も未だにたくさんいますし、苦しんでいるお子さんを見て、「家族に原因があるのではないか」と家族に向けられる偏見もあります。