1. 2023/04/17(月) 11:45:51
前編(一部抜粋)
遺族への取材から、問題の輪郭は実感を伴う形で見えつつあった。
60代前半の克喜さん(仮名)とその家族は、執刀医の早瀬稔(仮名)から、このような説明をされたという。
「腹腔鏡手術は、おなかに5ヵ所くらい小さい穴を開ければよいので、開腹手術のように腹部を大きく切り開くのと違って臓器が空気に触れないですから、患者さんのためにも楽だし、回復が早いですよ」
早瀬は説明のなかで、開腹手術についても触れなかったわけではない。ただ、それは腹腔鏡手術の説明とはかなり様子が違っていた。
「開腹手術だと傷が大きくなりますので術後の痛みも強いですし、患者さんにとっては大変です。大きな傷痕も残りますしね」
克喜さんの妻は振り返った。
「腹腔鏡手術のデメリットは聞きませんでした。そっちのほうがいいですよ、と勧めている感じで」
患者や家族への説明では、「保険適用外で安全性や有効性が確立していない腹腔鏡手術だった」という事実が伏せられていたのではないか。遺族の証言は、インフォームド・コンセント(正しい情報提供に基づいた合意)に重大な問題があることを強く疑わせた。
後編
「ずっとおかしいと思っていたんです…」群馬大医学部附属病院で18人が死亡、遺族へ告げられなかった信じ難い事実(高梨 ゆき子) | +αオンライン | 講談社(1/4)
gendai.media
群馬大学医学部附属病院で腹腔鏡手術を受けた患者8人が、相次いで死亡していた。
病院当局には、事態の表面化を恐れる大きな理由があった。
2014年12月5日に予定されていた次期学長選である。2015年春、群馬大学は学長の任期満了を迎える。学長選はそれに伴うもので、次期学長の座を争っていたのは、病院長を務める野島美久と、その前任の病院長であった石川治。二人は2014年10月、学内外の有識者による選考会議から「学長適任者」に選出されており、学長選は、新旧の病院長による一騎打ちの情勢だった。
当時の病院幹部の間では、野島を推す声が大勢だったといわれている。野島本人が内心どのように考えていたのかは定かでないが、大事なときに、このように深刻な不祥事を公表すれば、学長選で不利に働くのではないかと懸念する雰囲気が、病院内には漂っていたという。
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群馬大学医学部附属病院で腹腔鏡手術を受けた患者8人が、相次いで死亡していた。2014年、読売新聞のスクープ記事から、医学界を揺るがす大スキャンダルが明らかになる。亡くなった患者・8人の手術は、いずれも早瀬(仮名)という40代の男性医師が執刀していた。院内調査によって、開腹手術でも10人が死亡していたことが発覚。技量の未熟な早瀬が、超一流外科医でも尻込みすると言われた高難度の最先端手術に挑んだのはなぜなのか。