1. 2023/03/02(木) 11:17:23
「慣れないと苦しいですね。歳もあるのでしょうが、この夏は何度も『死ぬ』と本気で思いましたよ」高温多湿の日本の真夏にマスク姿で何時間も立っていれば、当然のことだろう。ましてAさんは高齢者だ。しかし別の警備員の話でも「マスクしてないところを見られると(会社に)匿名で通報が来るんですよ。もう(コロナ禍)2年、仲間もやられています」とのことで、マスクをせざるをえない。70歳を過ぎてこの炎天下と湿度、食っていくためとはいえ、厳しい。
「でもね、警備の世界で70代は高齢ではないです。普通にいます」
実際、工事現場はもちろん商業施設や公共施設などで大勢の高齢警備員を見かける。警察庁の「令和3年における警備業の概況」によれば、日本の警備員58万9938人(2021年12月末時点)のうち、60歳以上の高齢者は26万6222人と半数近くを占める。70歳以上とすれば10万5820人。全員が現役の常用警備員(常用が大半で90.9%を占める)として勤務しているわけではないだろうが、商業施設や工事現場で見かける1号、2号警備員が高齢者ばかりの現状は数字の上でも明らかだ。
その理由の大部分は日本の物価高と重税、そして年金制度の欠陥にあることは言うまでもない。
「年金では食べていけませんから、仕方ないです」
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人生100年時代と騒がれだして久しい。しかし、そうだとしても皆が皆、悠々自適な"長い老後"を過ごせるわけではないはずだ。高齢警備員の地獄のような日々をノンフィクション作家の日野百草氏が取材したーー。