1. 2023/02/27(月) 12:07:24
手厚い保護を受けた山本さんも、18歳を迎え退所を迫られる。それまで“自身の家”“家族そのもの”と感じていた施設を去ることは「精神的にかなりのショックだった」と打ち明ける。
「人生の大半を施設で過ごした私にとって、これまで築き上げてきた人間関係が一瞬で消えてしまうのはとてもつらかった。もちろん退所後も電話したり、施設を訪問することはできます。でも、そこには新たな保護すべき児童たちがいて、職員さんたちは目の前の子どもたちで手一杯なんです」
退所後、日を追うごとに「自分には頼れる両親がいないんだ」「もどるべき場所がない」と実感することが増えた。
「とにかく寂しくて仕方なかった。時には自分は職員に裏切られたと思う時期もありました。もちろん私自身、昔も今も施設の環境にとても感謝していますが、退所から数年は経済的にも精神的にもうまく自立できず、『幸せだった施設での記憶だけで人生を終わらせたい』と、何度も自死に踏み切ろうとしたこともありました」
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家庭内の虐待や貧困、親との死別など、様々な理由から児童養護施設で育つ子どもたちがいる。施設は原則18歳での退所が定められており、それまで社会的に養護されていた若者は自立を求められ、「ケアリーバー=保護を離れた人」と呼ばれる。しかし、戻る家庭もない環境で、経済的な困窮や孤立に追い込まれるケアリーバーは多い。こうした問題をうけ、2024年4月の児童福祉法改正では施設退所年齢の「18歳上限撤廃」が決まったが、実際、ケアリーバーにはどのような苦悩や困難が待ち受けているのか。当事者に話を聞いた。