1. 2022/06/05(日) 10:00:02
本書で特筆すべきなのは、母親であることの後悔を口にする女性が、同時に「子供を愛している」と語る点だ。
彼女たちは子供に食事や安心できる生活環境、充分な教育と愛情を与えている。
「素晴らしい子供を持てた」「わが子を抱きしめることが大好きです」と話す人もいる。
母親であることの違和感と、子供への愛情はまったく別のものなのだ。前出の元橋さんが解説する。
「女性たちが語っている後悔とは、重い責任を背負い続けることになった結果に対してだと考えられます。『子育てがしんどい』など母親としてネガティブな発言をすると、すぐに『子供がかわいくないの?』と結び付けられてしまうけど、決してそうではない。社会が母性本能というあいまいなものに頼り、ケアの負担を押し付けていることが認識されるべきでしょう。
また、育児の精神的・身体的な負担が母親だけにかからなくすることも必要です。男性がいま以上に子育てを担うことが当たり前の社会になれば、男女間の労働時間や賃金の差がなくなる。そうした社会は女性だけでなく、男性にとっても生きやすいと思います」
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「もし時間を巻き戻せるとしたら、もう一度、母になりたいと思いますか?」そう問いかけられたとき、何の迷いもなく「はい」と答えられる母親はどれほどいるだろうか──。母親であることの苦悩や違和感、それらを生む社会構造について分析した書籍『母親になって後悔してる』(新潮社)が、世界中で波紋を広げている。原書の著者はイスラエルの女性社会学者オルナ・ドーナト氏。書籍は2011年にイスラエルで発売された後、学術論文でありながらヨーロッパ各国で反響を巻き起こした。