ガールズちゃんねる
  • 544. 匿名 2024/04/12(金) 21:24:10 

    >>482
    お題「歌をテーマにした妄想」🎤👩‍🎤🎷

    曲をテーマにしたお話をお待ちしてます。歌詞の転載、解釈違いへの言及はお控えください!任意ですが、元になった曲名やアーティスト名を記載いただけると嬉しいです。
    (イラストも歓迎、その場合は二次絵お題にも合わせて紐付けいただくと良いかと思います)

    +31

    -2

  • 635. 匿名 2024/04/12(金) 22:04:18 

    >>519桜🌸>>544歌🎼

    『春なのに…🌸』


    桜の花びらがふわり…とあの人のクセのある髪に止まる
    それを何気なく取ってあげるふりをして、ポケットに忍ばせる
    「ありがとう」と微笑する背の高い先輩を眩しい気持ちで見上げる
    時が止まって欲しい
    桜の花風吹の中、貴方を閉じ込めて
    私だけの宝物にしたい
    「会えなくなるね」
    と貴方が右手を差し出す
    「寂しくなるよ」
    と、少し悲しそうな表情をする
    もっとその先の言葉が欲しい
    それは欲張りですか?
    「義勇!」
    「ぎゆうちゃん卒業派手に祝おうぜ!」
    向こうで友達が口々に声をかける
    軽く手を上げてわかったと合図する先輩
    待って、言葉はもう終わりですか?
    行かないでとは言えずに、友達に向かう姿勢の良い背中を見送った

    自信のない私に、笑顔がいいと褒めてくれた
    貴方の言葉が宝石だった
    だから…流れゆく季節をいつも微笑んで送りたいけれど…

    春なのに、桜がこんなにも綺麗で、
    桜風吹の中の先輩もとても綺麗で…
    それなのにお別れですか?
    涙が一筋頬を伝った

    ❀続く❀

    +30

    -7

  • 649. 匿名 2024/04/12(金) 22:09:08 

    お題 >>519 >>559 >>544

    「満月ロゼのおまじない」1/2🐍

    ──満月の夜にロゼをうつして飲むと恋が叶うんだって。

    職場の先輩から、昔ちょっと話題になったジンクスを教えてもらった。
    「気になる人がいるけれど、なかなか進展しなくて……」と相談したところ、試してみたら?と教えてくれたのだ。

    伊黒さんとは学生時代に出逢った。
    ふたりきりで会うようになったのは、最近になってからだった。
    私達は食事を一緒にする仲だけれど、恋人同士ではない──。
    今夜はふたりで訪れたレストランで、窓際の席に案内された。
    大きなガラス窓の向こう側に目をやると、濃紺の夜空に濡れたような大きな満月が浮かび上がっている。

    「この店のワインは充実しているな。ゆっくり決めると良い」

    伊黒さんが私にメニューを渡してくれる。
    私はざっくりと見たあと、「ロゼのスパーリングにする」と言った。
    「君がそれを選ぶとは、珍しいものだな」
    伊黒さんが静かに言った。
    そして、店員を呼び、飲み物や食べ物を注文すると少しのあいだ空白の時間ができた。
    私達はぽつりぽつりと近況報告をし合った。

    しばらくすると、ワインと前菜のカルパッチョが運ばれてきた。
    ふたりで乾杯した後、私はロゼのスパーリングを満月にかざしてみた。淡いピンク色の泡沫の海に、白い球体が艷やかに浮かんでいる。
    「わぁ、きれい」
    思わずそう呟いて、いっきに飲み干した。
    「今宵の月は綺麗だな。──もっとゆっくりと味わえばいいものを」
    伊黒さんがぽつりと呟いて、不思議そうに私を見つめる。金色と深緑色のオッドアイが照明の光をうけて、宝石みたいにきらめいた。
    「これで良かったの」
    私はにっこりと笑って、そう答えてみせた。

    +33

    -10

  • 669. 匿名 2024/04/12(金) 22:23:59 

    🍀🍀>>519桜🌸>>544歌🎼
    >>635続き②『春なのに…🌸』


    部活の帰り、先輩は心配して送ってくれた
    白い素敵な喫茶店で奢ってくれた
    オーダーは青いソーダをよく頼んだ
    「青が好きなんです」
    好きですと言えない私の精一杯の言葉

    わからない所があると相談すると勉強も教えてくれた
    「先輩のおかげで点数が上がった」と報告すると一緒に喜んでくれた
    「卒業してもあの素敵な白い喫茶店
    今まで通りに会えますね」と、
    『遠くに行っても元気で』と手紙付きの花束を持った先輩に
    「君の話は何だったの?」
    と聞かれるまでは言う気でした

    「記念に下さいボタンを1つ」
    最後のワガママを言った
    この澄み渡る青い空に捨てたら
    この想いも晴れるだろうか?
    今日の空は、貴方の瞳の色
    私の1番好きな色───

    ボタンは捨てられずに
    手に握られたまま
    涙が零れ落ちる
    空の青が眩しい
    ため息またひとつ


    ・。+*+。・★・。❀Image Song❀・。+*+。・★・
    柏原芳恵『春なのに』
    作詞作曲/中島みゆき

    +31

    -8

  • 806. 匿名 2024/04/13(土) 01:25:25 

    >>544
    「ハッピーハッピーハッピー♪」

    +33

    -2

  • 861. 匿名 2024/04/13(土) 09:07:13 

    >>544歌お題>>621入学式

    「「♪ドッキドキドン!いちねんせーい!ドッッキドキドン!いちねんせー!」」

    幼馴染で近所に住む錆兎と機嫌良く歌いながら、家族みんなで帰ってきた入学式から一週間。

    「ガル子のおかあさーん!ガル子また泣いてるー!来てー!」
    「学校遠い…なんでお母さん一緒じゃないの…グスッ」
    「小学生は自分で行くんだ。ほら、お母さん来たぞ」

    毎朝こんなやりとりをしていた。
    私達の家は学区の一番端っこ、6才の足では学校まで歩いて30分の距離。これがとてつもなく長くて、お母さんと手を繋がずに歩くのが心細くて仕方なかった。

    「錆兎、帰り置いて行かないでね」
    「わかってるよ。下駄箱で待っててやるから」

    こうやって、錆兎がいつも私の手を引いてくれた。だから、私は少しずつ、泣くことが減った。

    ──2年生の3学期、それは突然のことだった。
    私は家の都合で引越すことが決まった。新年度からは、新しい学校で過ごす。

    「ガル子、新しい家は学校近いのか?」
    「うん。目の前なんだって。8時10分に家を出れば良いんだって」
    「そうか。良かったな。泣かないで行けよ」
    「今だってもう泣いてないし!」

    最後の日、クラス全員からの手紙をまとめた冊子を、担任の先生から受け取った。錆兎のページには、こう書いてあった。

    「また会おう。好きだからな。バイバイ」


    ❀❀❀❀❀

    今年も、入学式の季節だ。
    遠く離れたと思っていたけど、同じ沿線だったんだなあ。
    電車の窓からこの景色を見ると、思い出す。
    色づいたこの川沿いを、私達も歩いてたんだよなあ。

    その時、開いた電車の扉から見えたのは、いつかの面影──

    おわり

    (いきものがかり/SAKURA)

    +34

    -7

  • 1203. 匿名 2024/04/13(土) 22:11:24 

    >>544>>837

    お題ミックス
    SEKAI NO OWARI「サラバ」
    作詞Saori 作曲Nakajin

    この会社に新入社員で入社して、矢琶羽先輩と初めて営業に行った帰り道……
    怪物とか夜の魔人みたいな客とか取引先とかたくさんいるから厄介だな、営業は(笑)
    怒られるのか……鬼舞辻課長に。
    結局花見行けなかった……仕事なかなか終わらなくて。
    皆は楽しんだのかな?いいなあ……
    間に合うように全速力で走ったけど結局間に合わなくてため息……
    それを見ていた矢琶羽先輩は、
    「公園のベンチで休憩して缶コーヒーでも飲もう」
    と言ってわたしを近くの小さな公園に連れて行ってくれた。
    公園には、ベンチがひとつだけあって、そのすぐ上には桜が満開で咲いていた。
    「もうため息つくのは終わりにしようぞ」
    そう言って差し出してくれた缶コーヒーを飲みながら、価値のあだ名を考えた。
    「名前で呼ぶと誰かに聞かれてしまうとまずいからのぅ……酔っ払って言ってしまったとしても言葉の責任だけは残るからのぅ」
    わたしの隣には矢琶羽先輩がいる。
    苦痛が普通だった日にさよなら
    「これからは厄介な事にも一緒に立ち向かって行こうぞ」
    そう言って、変わらない街並みを抜けて歩いた。
    「矢琶羽先輩、この道は遠回りになりますよ」
    「それは、わざとじゃよ」


    END

    +24

    -9

  • 1235. 匿名 2024/04/13(土) 22:38:44 

    お題 >>519 >>574 >>544
    ⚠️ガル子も🌫も24歳の設定 ⚠️🐚出現有の長編です。

    🌫『10年のキセキ』①

    「今日は僕がやってあげるよ」

    夕食の後、むいくんが率先してお皿洗いを始めた。
    私達はもうかれこれ10年以上のお付き合いになるけれど、一緒に暮らし始めたのは最近だ。
    でももう本当に長い付き合いなので、「あれ」とか「それ」が何を指しているのかがすぐにわかるし、相手が話し始めた内容についても全体が見える前からすぐに推測ができるので、会話がぽんぽんとスムーズに進む。
    一緒に暮らす前から家族みたいな感覚だったので、すんなりとお互いがいる生活に馴染めた。使い込んだマグカップだとか肌触りの良いタオルみたいに慣れ親しんだもの──そこにあって当然の存在──として、お互いのことを認識している。それでも知らないことがあったりするので、そういうことがあった時は新発見みたいで面白いね、こんなに長く一緒にいるのに知らなかったね、と笑い合う。
    私達は、刺激は少ないけれど、まったりと落ち着いた日々を過ごしている。

    「ガル子、なにかあったの?」
    腕まくりをしてガチャガチャと食器を洗いながら、両手を泡だらけにしたむいくんが私に言った。
    「え?」
    「夕食のとき少し上の空だったから」
    「実はね……、中学のときからずっと一緒の人と付き合ってるなんてつまらなくない?って会社の人に言われたの」
    それが喉にささった魚の小骨みたいに、ずっと気になっていたのだった──。
    それを言ったのは、空気が読めない上に人のテリトリーに遠慮なく土足で踏み込んでくるような男の上司だった。
    そんな男に言われた言葉だから気にする必要はないのだけれど、心の中に変なわだかまりとして残ってしまっていた。
    「それを言ったのは例のあいつでしょ?」

    続く

    (『HANABI』/Mr.Children)

    +24

    -9

  • 1847. 匿名 2024/04/14(日) 23:59:09 

    >>544
    ⚠️🐱解釈違い


    この部屋が静かになってどのくらい経っただろう。窓の外の月を見て思った。

    「ねぇ、ほら見て!」

    目の前のキャンバスに集中している俺の肩を叩き「月が綺麗だね」と屈託なく笑うから、どう答えたらいいのか分からなかった。
    まぁ、馬鹿だから意味なんかなかったと思うが。

    もう声も顔も覚えていない。
    隣で聞かされる下手な鼻歌も、照れて赤く染まった頬も、初めて見せた悲しそうな顔も。
    ひとりでいいと言っているのに勝手にそばに居座られてうんざりしていたんだ。
    共に歳を重ねながら歩んでいける人間と幸せになっていればいい。
    だから俺はもう、君を待っていない。


    ヨルシカ / 嘘月

    +26

    -6

  • 1857. 匿名 2024/04/15(月) 00:30:50 

    >>519>>544>>621
    お題ミックス


    SEKAI NO OWARI「夜桜」
    作詞 Fukase 作曲Nakajin、Fukase

    今はあの日と同じ季節……
    春の匂いがすると懐かしい感じがする
    もちろん前世の記憶なんてないんだけど、なんとなく懐かしく憶えているような気がする。
    最近、夜が長く感じる……
    前世から、100年以上経っているのはなんとなくわかるけど、わたしは夜に棲む生き物だったような気がする。
    わたしと一緒にいた人?は、その日に会ったばかりで、その日から一度も会っていないけど、そろそろどこかで会える予感……
    わたしとあの人は、あの日に一体何があったのだろう……
    何故、その日から一度も会っていないのだろう……
    その日に死んだのだろうか?
    桜が散る前に、あなたに会いたい……
    何故かそう思っていた。
    「泥に汚れた花びらは戻れない」
    潔癖症のあなたはそう言ってた。
    雨に堕ちていく儚さのように短いいのちだったのかな。

    今日はキメツ学園の入学式
    中等部の1年土竜組はどこかな?
    桜が咲いている入学式なんて珍しいから何かが起こりそうな予感……
    1年土竜組の教室に入ると、どこかで見たような姿があった。
    目を閉じているように見えるけど、彼はこちらに手をかざしたら
    「ガル子、久しぶりじゃのう……100年の間どこにいたのじゃ……」
    と言って、微笑みかけた……

    END

    +24

    -9

  • 2072. 匿名 2024/04/15(月) 16:29:22 

    >>544
    歌お題🌊

    この屋敷の主人が去って、何十年経っただろうか
    時が移ろえば当然人は変わり、景色も変わる
    かつての大きな屋敷は壊され、公園になった
    何度かの大きい災害と戦火を潜り抜け、私はまたここでかつての主人を巡り合った
    ここに来たときからずっと隣にいた恋人は「また会おう」という言葉を遺して先にいった
    私に「輪廻」を教えてくれた人だった
    雨の似合う、美しい人だった


    子どもの頃、初めて触れた剣道に夢中になった
    ────何度か挫折はあったと思う。そもそも俺は天才じゃない。才能の不足を、努力でねじ伏せてきた凡人だ
    高校に入り、地方から来た天才が道場に集まると、自分がいかに井の中の蛙だったかと思い知った
    中三から一気に伸びた身長が更に伸びたのは嬉しかったが、毎晩骨が軋むような痛みに悩まされ、同時に体が自分の思う通りに動かせなくなった
    出来ることは努力だけだったのに、体はそうでなかったらしい
    疲労骨折を悪化させていた俺は、医者から少なくとも一週間、その後も許可が降りるまでは一切の運動を禁止されてしまった
    それでも道場で出来るトレーニングはやるつもりだったのに、スポーツドクターが師匠と懇意だったため、既に連絡が行っていた
    「このままでは本当に大変なことになる。今は我慢の時だ。焦らせないためにも道場にも来るな。少し体を休めるように」
    いつも厳しい師匠だったが、その日はとても優しく、それがまた辛かった

    +23

    -14

  • 2436. 匿名 2024/04/16(火) 00:31:50 

    >>544
    歌お題
    SEKAI NO OWARI「RAIN」
    作詞Fukase、Saori 作曲Fukase、Saori、Nakajin

    彼を初めて見かけたのは雨の日
    隣のクラスの矢琶羽くんが、傘をささずに走って帰るのを見かけて、傘に入れてあげようと思ったら、ものすごい速さで遠くに行ってしまい、見えなくなった……
    わたしも矢琶羽くんも小学生だから、やっぱり足の速い男子には惹かれてしまう……
    また雨が降らないかな……そしたら矢琶羽くんに傘を差し出す事ができるのに……
    そんな事考えながら、明日の放課後に雨が降るように、怖い顔のてるてる坊主を作った。しかも複数。
    そうだ、このてるてる坊主たちを傘にぶら下げればもっと効果あるかも、家庭科の鋼鐵塚先生みたいに。
    次の日、怖い顔のてるてる坊主のお陰で放課後雨が降り出した
    矢琶羽くんは、傘を持ってなくて昇降口で立ち往生していた
    今だ、チャンス!とばかりに矢琶羽くんに
    「あの、傘に入りませんか……」
    と、言ったら案外素直に
    「ありがとう」
    と言ってきた……
    そして傘を開いたら、昨日ぶら下げた怖い顔のてるてる坊主たちが矢琶羽くんに顕になった……
    恥ずかしいっ……て思ってたら矢琶羽くんが
    「此奴はなんという名前なのじゃ?」と言っててるてる坊主を指さしたから
    「お堂の鬼」「じゃ、こいつは?」「手鬼」
    「こいつは?」「沼鬼」「沼鬼てのは3つ子なのか」
    「わかんない、分裂するという設定」「面白いのう……」
    矢琶羽くんは、このてるてる坊主たちが気に入ったらしい。そして一緒に帰る事になった。
    矢琶羽くんを家まで送ると、
    「また今度その鬼たちの話を聞かせてくれ」
    と言って、バイバイした
    その日の夜、夢にそのてるてる坊主たちが、鬼という生き物の姿になり、
    「よくやった、明日も頑張れよ!」と、わたしを後押ししてくれた……
    この怖い顔のてるてる坊主たちに見守られながら、わたしの恋は少しずつ進展すればいいなあ……
    そうだ、次の雨の日のために新しい怖い顔のてるてる坊主を作ろう!

    END

    +23

    -6

  • 3206. 匿名 2024/04/17(水) 20:22:04 

    >>544 ⚠️🍃歌お題 1/2

    「不死川さ〜んっ今日発行分の請求書なんですが、これの詳細をお願いしたのにまだメールが届かなくって…」
    目を潤ませて上司に指示を仰ぐモブ田さん。
    「ん?どこのだ?ああこの間の返品か…これ担当モブ沢さんだろ。ならメールじゃなくてFAXで届いてねェ?」
    「え!?…あーーーありました!ありがとうございますっ」
    「おう、良かったなァ」
    ニッと微笑むコワモテ上司の不死川さん。

    …て、ちょっと待てーい!
    このやり取り前にも見たんだけど!?

    何だよ何だよ優しいじゃん不死川サン!
    今のが私だったら絶対に「前にも教えただろうがァ」だの「しっかり確認してから言えェ」だの「そもそも今日発行だとかコレの詳細だとかボンヤリした言い方してンじゃねぇぞゴルァッ」だの、頭掴んでブンブンしながら怒るクセに…
    へーなるほど。ふんふんそっかそっかぁ〜

    「あ?何だガル山その目はよォ」
    「…別に。さてと、私はお昼に入りますので…どっこらせっとう!!」
    バン!とデスクに両手をついて勢いよく立ち上がると、途端に不死川さんの眉間にシワが寄る。そして
    「チ!何が気に食わないのか知らねェが自分の機嫌くらい自分で取りやがれ。ガキじゃあるめぇし」と吐き捨てられた。

    だッ…からソレだっての!私にだけ当たり強いの何なんですか!?と言いかけたけど、止めた。
    勝手に僻んで不貞腐れて、確かに今の自分の態度は稚拙だった…と思ったから

    だ、が、

    「お先に休憩いただきます」と頭を下げた私に
    「おう、とっとと行け行け」
    とシッシッと手で追い払うようなジェスチャーをかます不死川サンも大概大人とは言い難いのでは…?

    お返しに渾身の変顔をお見舞いすると彼がオッソロシイ笑顔で立ち上がったので全力で走って逃げた。

    +27

    -10

  • 3557. 匿名 2024/04/17(水) 23:59:57 

    >>544 歌お題 >>1224 一人にしないで ⚠️解釈違い、死ネタ(苦手な方はスルーをお願いします)

    貴方が大好きだった 此処から見渡す川辺の景色
    今年もまた薄い桜色に彩られ 行き交う人々の愉しげな声が風に飛ばされ空へと向かう
    貴方が旅立ってから二度目の春
    あと何回 私は一人でこの景色を眺めるのだろう
    「ねぇ───貴方も見てる?」 頭上に広がる青空に向かって問いかけた
    「綺麗ね────」 上を向いて歩いても やっぱり涙って溢れるものね

    『一人にしないで───』
    ある晩貴方は私に言った それは夢現の中でだったけれど
    きっと幼い頃の夢をみていたのね
    この世に生を受けた時からずっと 貴方は一人で牢の中に居たから
    迷い込んで来た小さな蛇に 縋り付く程に人恋しかったのでしょう?
    牢から逃げ出し 剣士となって 柱となった貴方は
    いつもどこか上からで 猜疑心が強くて小言も多くて
    でもとても責任感の強い 情に熱い人だった
    過去に縛られて ずっと苦しい思いをしていたわね
    それを振り切るように鍛錬を重ねて 自分を高める努力を惜しまない とても強い人だったわね
    そんな貴方が寝言で言った『一人にしないで』
    夢の中でしか弱音を吐けない貴方のそばで 私が泣いていたのを貴方は知らないでしょう
    「ずっと一緒よ…約束するわ」
    目尻から溢れる貴方の涙を 起こさないようにそっと拭ったの
    私なんかじゃきっと母親の代わりにはなれないだろうけど
    ずっと寂しさを抱えていた貴方を 少しでも温めてあげたかったのよ

    「一人にしないでよ───」
    今は私が呟く番ね この涙を拭ってくれた貴方は もういないから
    『ずっと一緒だ』
    あの日 貴方が私にくれた 最期の言葉
    綺麗な瞳を細くして 優しく頬を撫でてくれた
    力が抜けて落ちてゆく貴方の手を 涙を流して受け止めた
    その時貴方に伝えた「ありがとう」と「愛してる」 貴方の耳に届いたかしら

    貴方はいつも心の中にいるから だから私は強くいられるなんて そんなのただの綺麗事
    もしも願いが叶うのならば 一秒でも早く 貴方がいる場所に逝きたかった
    『ずっと一緒だ』
    貴方がそう言ってくれたから それに縋って今も生きているけれど
    私が生きることを貴方が望んでいたから 歯を食いしばって まだなんとか生きているけれど
    やっぱり私は貴方に逢いたい
    抱きしめて 頬を撫でて 愛を囁いて その瞳で私を見つめて欲しいの

    あと何回 一人の朝を迎えたら貴方に逢えるのだろう
    「───ずっと一緒よ」
    幼かった頃の貴方に伝えたくて
    弱い自分を奮い立たせたくて
    視えない貴方に逢いたくて 今日も私はそう唱えるの

    ────ゆず/『逢いたい』

    +31

    -7

  • 4302. 匿名 2024/04/19(金) 22:01:08 

    >>4243チャラかった推し >>544歌お題
    ⚠️🐚 ⚠️解釈違い
    ⚠️どんな推しでも許せる方のみ🌫

    捕食:①

    「彼女面なんてしないから安心して」
    それは単なる遊び相手が言うならお利口さんなセリフなんだけど、彼女の口から聞かされると何となく面白くなかった。
    「そう」
    ベッドにうつ伏せに横たわったまま素っ気なく返事した僕を、どこか諦めたような表情で見ていることにも気付かないフリをした。
    他にかけるべき言葉があったはずなんだけど、僕も少し不貞腐れ気味だったのかもしれない。
    こっちは割と本気で口説いたつもりだったのに君は違ったのかなって、肩透かしを食らった気分だったんだ。

    彼女とは付き合っているわけではなかったし寝たのもその一度きり。
    決してワンナイトで遊びたかったわけじゃないのに、ちょっとだけ遊びすぎていた僕の“本気”は伝わらなかったみたい。
    そりゃ確かに僕も順番を間違えたなとは思ったけどさ。

    昼に学食に行くと友人と談笑している彼女を見かけた。
    するとそこに一人の男子学生が近寄り、ルーズリーフらしき物を彼女に手渡す。
    ノートでも貸していたのだろうか。
    笑顔で会話を交わす2人に正直モヤッとした。
    彼女に話し掛ける男はみんな彼女に気があるように思えてならない。
    何なんだろうこの現象。
    ねぇ、誰なのそいつ。
    早くどっか行ってくれないかな。
    ……ああ、僕ってこんな子供じみたヤツだったっけ。
    カッコわる。
    そいつが去ったのを見届けてから僕は彼女に近付いた。
    「今日の帰り、時間ある? 一緒に来てほしい所があるんだけど」
    彼女の友人が好奇の目で見ているのがひしひしと伝わってくるけど関係ない。
    怪訝そうな顔をしながらも彼女は頷いてくれた。

    「連れて来たかったのって、ここ……?」
    「そう、僕の部屋。前に一度来たことあるでしょ」
    彼女を抱いた時のことだ。
    その一度きりの情事を思い出してくれているといい、などと下卑たことを考えながら彼女の様子を窺う。
    「べつに連れ込んで襲おうっていうんじゃないよ。ゆっくり話がしたいだけ」
    一言余計だったかなとは思ったけど、とりあえず部屋には入ってくれたので一安心する。
    ベッドに直行した前回とは違い、ソファに座るよう促しお茶の準備をした。
    紅茶を淹れて戻ると彼女は物珍しそうに僕の部屋を見ていた。
    こないだはそんな余裕無かったもんね。
    「紅茶……好きなの?」
    「え? あぁ、わりと。変かな」
    「ううん、男の人にしては珍しいなって」
    ……また何か勘繰ってるんだろうなとピンときた。
    紅茶が女子御用達のアイテムだなんて誰が決めたのさ。
    まったく偏見もいいとこだ。


    (つづく)

    +29

    -8

  • 4323. 匿名 2024/04/19(金) 22:36:52 

    お題MIX
    >>544>>2402
    ⚠️🐚🔥

    「BEAUTY & THE BEAST」

    無数の傷痕が残る俺の背中を必死に抱き締める華奢な両腕の持ち主は、傷一つ無い滑らかな肌へ唇を這わせる度に小さくかぶりを振った。

    潤んだ瞳に紅潮した頬、乱れた長い髪…何もかもが扇情的な君の薄く開いた唇はまるで野苺のように紅く、早く食べてくれと言わんばかりに俺を誘う。味わうように口付ければ快楽に流されるがまま、両目を固く閉じて身体を捩らせた。

    塞いでいた唇を解放してやった途端、息も絶え絶えに切なさを含んだ声を漏らす。
    それを初めのうちこそ必死に抑えようとしていた理性は俺の昂りを受け止めるうちに徐々に失われ、己を解き放ち艶を増してゆく啼き声が更に俺を煽り立てた。

    俺だけが見る事を許された君の姿。
    もっと見せて欲しい、そしてもっと俺を求めてくれないか───

    先刻屋敷に戻った際に春の陽射しのように明るく穏やかな微笑みで出迎えてくれた君は今、妖艶な女の顔で俺の名を幾度も呼ぶ。



    「貴方は気高く尊い御方」

    俺が命を賭して戦う事を生業としていると知った時の君はそう言った。しかし、その職と身分を示す装束を脱ぎ去り君を欲する瞬間の俺など欲望に塗れた只の獣に他ならない。

    愛する者をまるで獲物を貪るかのように乱しては恥じらう姿に欲情し、淑やかで美しい姿の奥に秘めた淫らさを目の当たりにしては悦びを覚える。

    すまない…これはこの世の総ての男の性、そして罪なのだ。





    ♪ BEAUTY & THE BEAST / 布袋寅泰

    +26

    -8

  • 4329. 匿名 2024/04/19(金) 22:41:40 

    >>2865 140字の話(恋愛要素皆無)


    「猗窩座殿、まだ好き嫌いしてるのかい?女の子は栄養豊富で美味しいのに」
    くだらん、食事など最低限で構わない。俺は俺自身の力で強くなる。

    高め合える者を求めた事もあった。だが大抵の鬼は弱すぎる、人間など論外だ。
    俺を高めるのは己のみ、この肉体のみ。

    永遠に鍛え戦い続ける。強き者となる為に。


    >>544 打首獄門同好会 「筋肉マイフレンド」

    +30

    -2

  • 4351. 匿名 2024/04/19(金) 23:05:23 

    お題 隣の推し>>542>>544 
    ⚠️税理士の🪓&解釈違い ⚠️こちらは🐚を含む長編です。

    『銀の鍵』①

    ──4月。それは、税理士事務所にとって決算業務の繁忙期である。3月の確定申告が終わったかと思えば、3月決算法人の決算業務に追われる日々が待ち構えているのだ。
    私はデスクの上に山積みになった書類を、うんざりしたような表情で眺めていた。

    「さっき頼んだ仕事の進捗状況は?」

    視界の隅っこで浅葱色の髪の毛先がふわりと揺れる。先輩に急に話しかけられて、私はしどろもどろに答える。
    「すみません。ちょっと……難航してまして」
    「わかった。後でフォローするからちょっと待ってろよ。な?」
    「ありがとうございます」
    デスクに戻り、書面の数字と睨めっこしている先輩のことを、私はそっと見つめる。
    腰まで届く長い髪、女性と見紛うほどの整った横顔。先輩を構成するすべての要素が美しい。
    私は毎日こんな風に秘めた恋心を隠しながら、先輩の隣の席に座って仕事をしている。
    初めて会った時、なんだかとっつきにくい印象の人だと思った。でも一緒に仕事をしていくうちに彼の面倒見の良さや優しさに触れて、いつの間にか好きになってしまったのだ。
    ……あ。先輩が眉を顰めて険しい顔つきになった。これは書面のミスを発見した時の表情。
    先輩は書類を持って、それを作成した男の人のところへ行くと、論理的な物言いで訂正を促した。変に媚びたり胡麻を擂ったりしないのも先輩の魅力的なところだ。常に堂々としていて、自分の意志をはっきりと伝える。

    仕事に向き合う真剣な表情も、無邪気な笑顔も、困った時に下がる眉も、理不尽なことに対して怒った顔も……全部好き。
    私は、なるべく気配を消して先輩のことを見つめている。──気付かれないように、そっと見守るようにして。

    続く

    (『透明人間』/東京事変)

    +26

    -6

  • 4360. 匿名 2024/04/19(金) 23:17:59 

    >>544

    暇なときに何でもいいから何か読みたい人向け(1/2)


    「××××××××××××」
    告げられた言葉が突き刺さる。何故と問うても、嫌だと縋っても、彼の言葉は変わらなかった。
    告げた言葉に彼女が動揺している。いつかは、いずれはと互いに考えていたはずだ。そう、思っていたのに。

    ・・・・・

    「お前馬鹿なの?」
    恋人が消えたと嘆く元同僚に話を聞いた率直な感想だ。他の言葉が出てこなかった。
    「言葉足りねぇって次元じゃねぇなァ…」
    かつてこの足りなさに振り回された身だが、その比じゃねェ。何せ相手が悪い。

    「引くわ。ドン引きだよドン引き。それで通じるわけないだろちょっと顔がいいからって調子に乗るなよ!!」
    悲痛な音させてんじゃないよ!自業自得だろふざけんな!
    「なんだ、番に逃げられたのか。だらしねぇな!」
    こいつ、すげぇ強ぇのに滅茶苦茶弱ってやがる。何されたんだ?
    「二人とも、失礼だろう!手伝いますから諦めないで探しましょう?」
    哀しい匂い…俺達が絶対に、もう一度会わせてみせる!

    「何の用だ。…は?知るか帰れ」
    何だこいつは。阿呆か。阿呆なのか。阿呆だな。

    「えぇ…あんた口下手っつーより言葉知らないんじゃないですか」
    柱がこんな小さく見えんの初めてだわ。人間関係大丈夫なのかこの人。

    「それは…足りないというより言葉の選択を間違えたんじゃないかな。いや俺が聞いても誤解するよ、一般的に別れ話だよその切り出しは。だから誤解を解こう、な?」
    こんなに憔悴した姿見たことない…こんなこと言ったら悪いんだけどさ、それだけ大切な人が出来て、”未来”を考えるお前が見られて嬉しいよ。

    ・・・・・

    +22

    -2

  • 4361. 匿名 2024/04/19(金) 23:18:53 

    >>544(歌お題)>>1214(マニアックお題:花篝)
    ⚠️解釈違い⚠️何でも許せる方向け⚠️見切り発車・長文

    春を愛する人
    第一話
    夜桜を照らす花篝(はなかがり)が門扉で対になって幻想的な雰囲気を醸し出す 私はその場に立ち尽くし入る勇気が出ないまま時間だけが刻一刻と過ぎていく

    事の発端は1ヶ月前に遡る
    【ガールズちゃんねる運営事務局です この度DM機能が実装されました 投稿者様同士でご自由にメッセージのやり取りをする事が可能になり更にお楽しみ頂けます】

    [彼トピ同窓会を開催します‼︎参加者大募集‼︎]
    企画柱の方が発案してくれたメッセージを見て参加希望のDMを送ったのだが指定された場所は超有名な産屋敷財閥の経営する高級料亭だった すると私の横を沢山のぬいぐるみを両手に抱えた人や勇者の剣にドラゴンが巻き付くデザインのキーホルダーをバッグに沢山付けた人やエジプトの神様や鳥獣戯画、梨の妖精のピアスをつけた女性達が嬉しそうな笑顔で足早に通り過ぎていく(私も早く行かなきゃ‼︎)カバンの中の小さな推しの人形に力を貸してもらい気合いを入れて門をくぐった

    参加者はまず入り口でトラブル防止の為の身分証、なりすまし防止の為スマホやタブレット端末やPCなどの彼トピ参加の履歴を担当者に確認してもらう手順になっていてこの会についてSNSなどに一切投稿しないと書かれた誓約書にサインして順路を進むと鬼滅メンズ達のサイン入り等身大パネルが多数展示されておりみんな夢中で写真を撮っている長い通路を経てようやく会場に辿り着いた。


    +26

    -7

  • 4368. 匿名 2024/04/19(金) 23:27:43 

    >>544アロマセラピスト🌈のサロンをガル子が訪れる話です。曲はClaudette Ortizの同タイトル、全5話中1話

    【Handcuffs】①

     私が彼に出会ったのは多分、みじめな気持ちだったからだと思う。

     春まだ浅い三月の夜。花見提灯を模したイルミネーションに彩られ、桜の季節を待ってる賑やかな大通りから一本入った古い路地。昔ながらの商家が立ち並び、建物の外観は変わらずカフェになったり雑貨屋になったり忙しない。そんな一画の、奥まった目立たない場所にそのお店はあった。
     
     見た目はよくある、町屋を改修したショップやゲストハウスと変わらない。格子の窓には古い型板ガラスが嵌め込まれ、彼岸花の浮き彫りを赤っぽく映し出してる。
     墨字で書かれた木の看板で、ここに間違いないと分かったけど入るのは躊躇われた。引き戸は閉ざされ中が見えない、それだけが理由じゃない。日々の侘しさと疲れを異性の手で癒そうなんて、あまりに不純かつ短絡的なんじゃないか────?そんな風に考えると、もういたたまれなくなってしまう。

    (別に、変なお店じゃないし。彼氏もいないし、やましい事は何もないもの)

     あれこれ自分への言い訳を捻り出す。そう別にいかがわしいお店じゃない……二週間前、偶然見つけたサイトにはこう書いてあった。完全予約制、サロン極楽堂。蓮の花をあしらったロゴはどこか東洋的、最初は占いか何かかと思ったのを覚えてる。
     ざっと目を通して、アロマリンパマッサージの店だと気付いた。よくあるリラクゼーションサロンだ、ポストにチラシが投げ込まれてても大抵読まずに捨ててしまう。だけどそのトップページの歌い文句は妙に目を惹いた。

    "疲れた貴女に極上の癒しを提供。心身共に満足いただける有資格者による安心のサービス"
    "男性セラピストによる施術です。ご注意ください"

     しばらくサイト内をうろうろした後、私は予約フォームにアクセスしてた。なかなかの人気店らしくカレンダーは軒並み✖️印。空いてた一枠の曜日と時間を確認し、少し迷ってから確定を押した。料金は安くないけど、疑わしいほど高くもない。先の見えない仕事と上司の嫌味に耐えてる毎日、たまの贅沢ぐらい良いはずだと思ったんだ。

    (つまり、自分磨きや健康のためじゃない)
    (ちょっとした気晴らしとして、お金で買える誰かの優しさが欲しくなっただけ)
    (要するに私は寂しかった。とても)

     自虐的な回想にふと涙腺が緩んだ時、スマホが鳴った。着信表示は目の前の極楽堂。慌てて出ると耳触りのいい男の人の声が聞こえてきた。

    『あぁ、もしもし!来ないから心配になってさ。うちの店分かりにくいから。大丈夫?迷子になってない?迎えに行こうか』
     一見のお客相手にしてはフランクな口調、だけど不快じゃない。時計を確認すると予約の時間を七分過ぎてる。

    「ご、ごめんなさい。実はいま」 
     お店の前なんですと言いかけた時、引き戸が開いて長身の男性がにゅっと顔を出した。驚いて私はニ、三歩後ずさった。

    「良かった、無事着いたんだね。いらっしゃい、待ってたよ」
     電話と同じ声で言って、男性は微笑む。黒のタートルネックにボトムス、首から下が闇に溶けて見えた。明るい髪が滝のように肩から流れ落ち、彫りの深い顔の中で虹色の瞳がランタンみたいに輝く。ちょっと信じ難い美形だ。下がり眉がその美しさに愛嬌を添え、辛うじて人の域にとどめてる。

     滲みかけてた涙が、まるでショック療法でも受けたみたいに引っ込む。こんなひとがセラピストなら予約が埋まってて当たり前だ。マッサージだからどうせ着替えるだろうと、何も考えず履いてきたいつものデニムが急に恥ずかしくなった。

    「寒かったよね?早く中へお入り、ようこそ極楽堂へ。俺が店主の童磨です」

     ぺこりと丁寧な一礼。頭を上げた際に軽くぶつけて、痛そうに顔をしかめてみせる。町屋のくぐり戸が彼の身長には低過ぎるらしい。浮世離れして神々しい人の、思いのほか子供っぽい仕草に何となくホッとした。

    +26

    -7

  • 4489. 匿名 2024/04/20(土) 08:08:06 

    >>544 歌お題🎲 ①(全3話)

    「今日は来てくれてありがとな!お前ら全員愛してるぜ!!」
    まばらな歓声にまばらな拍手。私の彼は売れないバンドボーカルをしている。

    出会いは大学の時。軽音サークルの先輩だった稔に私が一目惚れをした。すぐ付き合いに発展し、それから7年経った今……私は会社員。稔はフリーターだ。

    「ただいまガル子!」
    「おかえり。ライブお疲れ様」
    「今日のライブも最高だったろ!?これでまた夢に一歩近づいたぜ!必ずガル子を東京ドームに連れてってやるからな」

    稔とは私の大学卒業を機に同棲を始めた。でも、もう終わりにする。夢を追い続けている稔が好きだけど、夢見るキラキラした瞳が好きだけど……これ以上一緒にいたら私が駄目になりそうな気がするから。

    「あー。今日も最高な一日だったぜ」
    「うん」
    「次のライブが楽しみだ!」
    「そうだね」
    「そういやメンバーのTAKEUCHIがさぁ…」

    お風呂も済ませ、ソファで二人まったりした時間を過ごす。楽しそうに話す稔とは対照的に、どう別れを切り出そうか悩む私。

    しばらくすると稔がコテンと私の膝に倒れこんできた。規則的な寝息をたてている。稔の寝顔を見ていると今までの楽しかったこと、辛かったこと、喧嘩したこと……色々な思い出が蘇ってきて自然と涙が溢れてくる。

    「なんでこうなっちゃったかな……」

    別れようと思っても最終的に思い出すのは稔の笑顔。大好きだけど別れたい。いつまで学生気分でいるの?大好きだけど…もう疲れたよ。

    稔の夢が叶うのっていつなの?

    つづく🎤

    +29

    -9

  • 5643. 匿名 2024/04/21(日) 23:48:51 

    >>544
    歌お題


    「美しいな。まるで花のようだ」
    その人は左右の色の違う目を細めて言った。
    「あっありがとうございます。そんなことを言われたのは初めてです」
    私は嬉しいやら恥ずかしいやらで消え入りそうな声だったと思う。

    その人は私の舞を気に入ったくれたらしく、頻繁に来てくれるようになった。少しの時間だけでも会えることがとても嬉しく、私の中でその人は特別な存在になっていった。


    「しばらくここには来られなくなる」
    「…そうなのですか?どう…して」
    「稽古が始まる」
    「大変ですね。どうかお身体に気を付けて…」
    なにか特殊なお仕事をされてるようだけど詳しくは話してくれなかった。きっと大きな組織の幹部なのだろう。
    たぶんもうここには来ない───
    そんな気がした。

    「すべてが終わったら君を迎えに来てもいいだろうか?」
    突然の言葉に動揺した。迎え…に…?
    「え……それは…どういう…」

    「そのままの意味だ。君とずっと一緒にいたい」
    「──はい…!私もあなたとずっと一緒にいたいです」
    嬉しくて涙が勝手にこぼれる。そんな私を見てその人は優しく私の手を取り微笑んだ。

    「必ず迎えに来る」
    そう言ってあなたは夜の闇の中を駆けていった。
    あなたの言葉を信じて私は待つことにしました───


    「ガル子ちゃーん、出番だよー!」
    「はいっ」
    私は今宵もあなたの無事を祈り、舞台に上がります────



    想風/大原ゆい子

    +25

    -4

  • 5681. 匿名 2024/04/22(月) 00:55:48 

    >>544歌お題
    >>5266 昭和な推し
    ⚠️🍃解釈違い

    1/3

    珈琲カップをそっと置き、窓の外の雑踏を眺める姿に見蕩れてしまう。
    「休日はやっぱ人が多いよなァ」と、女の思案を断ち切るために適当な言葉を見つけ声をかけると意図通りに女がこちらをちらと見た。
    そうね、と頷き微笑む姿はいつも通りに見えるけれど、ほんの少しだけ細められた瞳は悲しみの影に縁取られていた。
    東京の暮らしは忙しない。
    息も満足にできないと思うほどにぎゅうぎゅうに押し込められた電車に乗り、誰も待つ者のいないアパートへと疲れた身体を引き摺って帰る。女はそういう生活を送ってきた。
    都心部の煌びやかな雰囲気に馴染み洗練された女は、下町の寂れた喫茶店では少々浮いているようにも見える。

    下町育ちの俺と女はいわゆる幼なじみの関係だった。親父の創った小さな自動車の整備工場が俺たちの遊び場だった。
    経済成長やら安定期やら、良く分からない時代の流れについていくために一生懸命だった互いの両親は働き詰めで、暇を持て余した幼い頃の俺たちは部品が抜き取られ錆が浮き始めた車の隙間を秘密基地にして、そこで良く遊んでいた。
    進学するとそれぞれに同性の友達が出来たため遊ぶ機会は激減したが、それでも学校の廊下で顔を合わせるとほっとしたような顔で気軽に手を振ってくれる女をずっと俺は密かに見つめ続けていたのだった。
    秘密基地時代から、その辺に落ちているボルトやなんやらを親父の道具箱からくすねてきた工具で弄くり回すことが好きだった俺はそのまま大きくなり、高校を卒業すると直ぐに工場を手伝い始めた。
    女は進学し、就職活動を無事に済ませて家を出た。
    それでも地元の同級生との集まりに顔を出せば女がその場に居たり、居なかったとしても誰かしらが女の近況を語ったりするので、離れてしまったという気にはならなかった。
    だがある日、女ともだちのひとりが明るい顔で言い放った言葉に俺は打ちのめされた。
    ──あの子、彼氏がいるんですって!
    記憶が飛ぶぐらいその夜は飲んだ。
    気がついた時には自宅の玄関に転がされており、着ていたブルゾンが何故かズタボロになった状態で上体に引っかかっていたことをふと思い出し、俺はひとり密かに嗤った。

    +23

    -8

  • 7327. 匿名 2024/04/25(木) 07:13:28 

    >>544
    お題「歌をモチーフにしたお話」

    貴方には今日も逢えないって電話を切られた
    忙しいのは百も承知
    わかってる──
    仕事と私どっちが大事?なんて馬鹿なこと聞いたりなんかしない

    ──だけど
    ねえ、神様、桜はもう散ってしまうわ…
    彼と一緒にこの桜を見たいという私の想いは
    そんなにも難しい願いなのですか?

    朝の桜でも、昼間の桜でも、夜桜でも
    どんな桜でもかまわないの
    一目でいいから彼と一緒に見られたらそれだけで──

    なのにもう桜は風に吹かれて降ってくる
    ねえ、貴方に逢いたいよ
    想いは募り胸が切ない
    もう私はこの身体ごと貴方に恋い焦がれてしまっているのよ──
    早く、早く、この桜が散り終わるまでに
    私を抱きしめに来て──

    🌸終🌸

    「桜が降る夜は」あいみょん


    +27

    -13

  • 7607. 匿名 2024/04/25(木) 22:39:05 

    >>7060マニアックお題⚠️🐢
    >>544歌をテーマにした妄想
    ※Part8掲載「がるこちゃんの執事🔫」
    >>3079⚠️フランクに会話してくれる同年代の執事くん「ねえ眠れないの。傍にいて?... | ガールズちゃんねる - Girls Channel -
    >>3079⚠️フランクに会話してくれる同年代の執事くん「ねえ眠れないの。傍にいて?... | ガールズちゃんねる - Girls Channel -girlschannel.net

    女子の女子による女子のためのおしゃべりコミュニティ。女子の好きな話題にみんなでコメント、みんなで投票して盛り上がれる匿名掲示板「ガールズちゃんねる」へようこそ。


    【番外編】1/2


    お嬢様が無口な時は、たいていお疲れの時だ。
    明日の予定を復唱している時も、流れる景色を目で追いながら「んー」「はぁい」とか、気のない返事ばかり。まぁ、やれ大学だ、稽古だ、会合だ…なんて昼夜飛び回る生活をしていたら、そりゃ色々溜まりもするだろう。

    バックミラー越しにちらっと後部座席の様子を伺うと、お嬢様と目が合った。
    「ダメダメだねぇ、私…」
    「そんなことない。お嬢様は今日もよく頑張りました」
    「・・・」
    暗がりでも俺には分かる。目が潤んでいること。「上手くいかないことばかりね」と肩を落としながらも、心配かけまいと精一杯つくり笑いをする。強がりなお嬢様の悪い癖だ。

    「━━俺の前では、無理して笑わなくていいですよ」

    「玄弥・・・」
    小さく「ありがと」と呟き、しばらくすると、嗚咽を噛みころすようにしゃくり上げる声が聞こえてきた。
    そう、泣きたい時は泣いていいんだ。
    このまま屋敷へ帰るのもお嬢様が嫌がるだろうと、ふと思い立ち、俺はハンドルを切った。

    ‪𓂃𓈒𓏸︎︎︎︎⁡🌸*✲゚*𓂃𓈒𓏸︎︎︎︎⁡🌸*✲゚*‪𓂃𓈒𓏸︎︎︎︎⁡🌸*✲゚*𓂃𓈒𓏸︎︎︎︎⁡🌸

    「わぁぁ…!玄弥見てみて!桜のトンネルだわ!!」
    「…そうっすね」
    「窓、開けてもいいかしら?」
    「どうぞ。」
    「やったぁ!はぁ〜風がとても気持ちいい…」
    いつもより安全運転で、ライトアップしている桜並木道をゆっくりゆっくり進んでいく。今春はどこにも出掛けられなかったから、たまにはいいだろう。

    開け放たれた窓から夜風に乗って桜の花びらがやってくる。
    「あっコラコラお嬢様!手を出さない!」
    「だって花びら掴みたいんだもん」
    「ったく……!」
    子どもみたいにはしゃぐお嬢様の笑みにつられて、つい俺も頬が緩んじまう。
    「綺麗ね…」
    桜の木を通り過ぎる度に映し出される儚い横顔は何よりも美しく、その光と影のコントラストに目が眩んでしまいそうだ。

    「少しは元気出たか?」
    「・・・うん。ありがと」

    ━━━良かった。
    お嬢様にはありのままの姿で笑っていてほしい。俺は執事である以上、こんなこと位しか出来ねえけど。

    少しだけ続きます🚗

    +37

    -9

  • 9367. 匿名 2024/04/29(月) 21:59:21 

    歌お題>>544
    >>519
    悲恋>>771
    文学>>572
    タイムリープ>>8742
    己の趣味に全振り>>630
    ⚠️死ネタあります

    「春の夜の夢」 第一話

    美しいものほど儚い。
    雪の結晶も、桜の花も、人の命も…

    何もしていなくても、ふとした時に涙がこぼれる。
    あの日から涙腺も感情も壊れてしまった。

    この家は元々、私のためにあてがわれた家ではないのに、お館さまは落ち着くまでいてもいいと言ってくださった。しかし、鬼殺隊は数ヶ月前に解散したのにいつまでも甘えているわけにはいかない。
    あの決戦で大切な人を亡くしたのは私だけではないのだから。
    尊い犠牲の上に成り立っている安寧を手放しで喜ぶことはできず、かといって皆の前で悲しむこともできず、私は伊黒さんと暮らした家で一人で過ごしていた。

    気心の知れた隠のもぶ子さんが、たまに訪ねてくれた。彼女は女性特有の勘で、早いうちから私の気持ちに気づいていた。
    気遣ってくれるのはありがたかったが、彼女の口から伊黒さんの名前が出るたび、現実を受け入れなければいけないと言われているようで苦しかった。
    「伊黒さんに気持ちを伝えたことはかったの?」
    彼女の問いに、私は下を向いて首を振った。
    鬼を滅することに心血を注いでいた伊黒さんに余分な煩わしさを与えたくなかった。
    今はそんなことは考えられないと言われるのは明白で、居た堪れなくなって暇乞いをする自分の姿まで想像できた。
    結局、私は怖かったのだ。
    近づくことも離れることもできずに、ただ伊黒さんの生き様を目に焼き付けることしかできなかった。

    空っぽになってしまった私は、縁側で鏑丸くんに話しかけるのが日課になっていた。
    伊黒さんのように以心伝心とはいかないけれど、鏑丸くんの言いたいことも、なんとなくわかるようになっていた。
    「伊黒さんに会いたいな」
    ぽろっとこぼれた言葉に、鏑丸くんが心配そうな顔をしながらとぐろから首をもたげて寄り添ってくれた。
    私は誰にも会わず、生きるのに最低限度の栄養と睡眠をとり、主を失った家の中で通り過ぎていく時をただ見送っていた。

    だから、はじめは精神を病んで幻覚を見ているのだと思った。縁側から見える桜の木の下で、白と黒の羽織が風にはためいている。
    「がる子」
    ……幻聴まで聞こえる。
    それが幻覚でないことは鏑丸くんが教えてくれた。
    私の隣で私以上に目を丸くしている。
    「伊黒さん?」

    いつのまにか冬は終わり、ぽつぽつと咲き始めた桜の花が、春の訪れを告げていた。

    『静かに思へば、万に、過ぎにしかたの恋しさのみぞせんかたなき』
    徒然草 29段より/吉田兼好

    続く

    +31

    -7

  • 9534. 匿名 2024/04/30(火) 08:01:38 

    >>544

    「…はあ、めんどくさいなあ、もう」
    気怠げな態度とは裏腹に
    鬼を切り裂くその刃は目にも止まらぬ速さだった
    「さっさと地獄に行ってくれないかな」
    塵となり天へ昇る鬼を視線で追うと
    空には双子座が輝いていた

    しばらくその星を見上げると
    無一郎はため息をついた
    毎晩毎晩、自分の守備範囲を回りながら鬼を見付けては斬る──
    それが俺の仕事だ
    特に何が不満というわけではないし
    人の役に立っているとの自負もある
    自分が望んで隊士になり柱にまでなった

    だが──
    時々、夜の中に一人で立っていると
    どうしようもない孤独感が
    足元から背中の後ろから
    すうーっと吸い付いてくるのだ

    こんな思考は無駄だ…!
    刀を一太刀して己の足元を
    背後をスッパリと斬った
    そこには何もいないのだが…
    気弱な自分の感情を斬り捨てた
    チャキン
    納刀すると気持ちが改まる
    ──大丈夫
    俺はお館様に認められた
    霞柱、時透無一郎なのだから…

    もう一度空を仰ぐと
    無一郎はまた走り出した


    つづく

    +31

    -11

  • 10333. 匿名 2024/05/01(水) 21:35:45 

    >>10071ビターなキス >>544歌お題

    祈り🌫


    「行かないで」
    不意に聞こえた呟きにハッとする
    声の主は僕の隣でくぅくぅと寝息を立てている
    なんだ、寝言か
    しかしそれが普段全く弱音を吐くことのない彼女の本音だということに気付き、胸が締め付けられた
    ひとすじの涙の跡が月明かりに光る
    もしかすると、僕のいない夜はいつもこうして一人で涙していたのかもしれない

    「ごめんね」
    僕は彼女の目尻に唇を落とした
    溜まった涙を舌先でそっと拭う
    しょっぱくて少し苦い──まるで君に片想いをしていた頃のような味がする
    いつしか僕はその頃の気持ちを忘れてしまっていたみたいだ

    未熟な僕の言葉や振る舞いは時には君を傷付けたかもしれない
    それでも君が僕を待っていてくれるから、その気持ちに胡座をかいて慢心していたんだ
    決して当たり前のことではなかったのに

    愛しい愛しい君
    お願いだから泣かないで
    せめて夢の中でくらいは幸せでいてよ
    不器用な僕は、守るはずのこの手で君を壊してしまいそうになるんだ
    だから、今は──


    間もなく君に訪れる一人寝の夜が、どうか少しでも安らかなものでありますように


    そう祈ることしかできない僕を許して






    ♪『differ』/ Janne Da Arc

    +26

    -7

  • 10354. 匿名 2024/05/01(水) 21:53:18 

    >>544

    わかってる、あいつの方が「まとも」だ。でも俺だって真剣だ。
    『すごいじゃん、応援してる』
    『私は好きだよ、その絵』
    そう言ったじゃねぇか。なのになんだよ。
    『そのバイト本当に平気?騙されてない?』
    『…ねぇ、いつまで続けるの』
    説明しただろ、やましいことなんてない。お前に集ってるわけでもないんだからほっとけよ。
    『もう無理、ついていけない。あなたとじゃ未来が見えない』

    『さよなら』

    画家になる。 出会った時からそう言っていた。確かにあの頃は若かったけど、夢で終わらせる気なんてこれっぽっちもなかった。
    わかってると思ってたんだよ。…甘えてたのは、事実だけど。
    俺には明確な目標があったけど、曖昧な「いつか」を待ち続けたお前は辛かったよな。
    わかってたよ、わかってたけど───
    後悔はしてない。手を離したのは、俺じゃない。

    なぁ、それなりに、お前に不安を感じさせないくらいには「成功」したぞ。
    応援してくれた道で、好きだと言ってくれた絵で。まだ未来が見えないか。

    …待たせてごめんと、言えたら良かったのに。


    T.M.Revolution/アンタッチャブルGirls

    +24

    -12

  • 11041. 匿名 2024/05/03(金) 07:29:39 

    >>544歌お題
    歌お題🍃①(全3話)
    ⚠痣の寿命

    あしひきの 山さな葛 もみつまで 妹に逢はずや─────

    誰に教わった訳でもなく、幼い頃からこの歌を知っていた。何気なく声に出して詠んだ時、聞いていた大人は皆一様に驚いたが、その歌を知る者はいなかった。そして何故か、最後の七文字は、ずっと知らないままだった。

    大納言小豆を使った小倉鹿の子をトレーに並べる。ショーケースを眺めていたハンチング帽の老人が、ぽつりと呟いた。
    「おぉ、サネカズラの様だのう」
    その声に、男は動きを止めた。
    「サネカズラ…?」
    「あぁ、お前さん知らんのかい?今の時期、赤い実を付けるじゃろう、こんな風に」
    そう言って小倉鹿の子を指さす。

    「あしひきの 山さな葛 もみつまで ─────」
    嗄れていながらも凛と張りのある声で、おもむろに老人があの歌を詠み始めた。
    (·····?!)
    老人の声が耳に滑り込んだ刹那、男は突然強烈な眠気に襲われ、最後の七文字を聞くことも叶わないまま、抗えずに目を瞑った。

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    「ねぇ実弥、峠の甘味処が、餡子が美味しいって噂だよ。最中食べたいな。今度行こうよ」
    すぐ隣で弾むような声がして、実弥は目を開けた。「ね」と悪戯っぽく笑うその見慣れた顔は、土埃に塗れていた。

    鮮やかな緑の葉、球状に集まった小さな赤い実が視界一面を彩る。葉の隙間から、穏やかな日差しが地面に落ちる。
    「色気より食い気だなァ、がる子は」
    呆れたように言って、土の上に寝転んでいた体を起こした。
    「いいの!食べる事は生きる事!」
    ぷぅ、と膨らましたがる子の両頬を、実弥が指で潰す。「ぶふっ」と間の抜けた破裂音がした。
    「ぶっ、ひっでェ顔」「もー!」
    実弥の胸をぽかぽかと叩くがる子を、実弥はぎゅっと腕の中に抱き締めた。
    「ホレどーしたァ、抵抗してみろよォ」
    「ずるいー!」
    がる子は腕の中でじたばたと暴れたが、屈強な男の力に勝てるはずもなく、やがて諦めて大人しくなった。
    「…明日、明日行こう」「あァ」
    木漏れ日の中で、そっと唇を重ねる。
    二人は、毎日こうして「明日の約束」を交わした。
    「明けの明星を見よう」「牛鍋を食べよう」「時間の許す限り一緒に眠ろう」·····当然、全てが果たされた訳では無い。果たされなかった約束は、胸の内にそっと重ねていった。いつか果たされる日を夢見て。

    傍らには、その日の役目を終えて漸く眠りに就いた日輪刀が二振り、寄り添う様に置かれている。

    一寸先も見えない絶望の闇の中を、一筋の光を掴むように藻掻く日々。明日も明後日もその先も、暗闇の中で手を取り合えるようにと、願う。
    (…だから明日も、生きていて…)
    今日も小指を絡め、見えない明日の約束を交わした。

    続く

    +28

    -8

  • 11731. 匿名 2024/05/04(土) 13:11:09 

    >>544歌お題
    >>4529鬼滅デート企画🎴
    ⚠解釈違い⚠※色々キャラが出ます※色んな設定詰め込み過ぎ※何でも許せる方向け※長文です


    何気なく覗いたお菓子売り場に、それは最後の1個として残っていた。
    (鬼滅チョコバー!やった、ついに手に入れた♡)
    『リアル鬼滅メンズと一日デート企画』に応募出来るチョコ。どこのお店に行っても見当たらなかっただけに手に入った喜びはひとしおだ。

    家で早速チョコを食べながら中に入っていたQRコードを読み取り、応募概要を見てみる。どの彼とデートするか、どんなデートをしたいかをフォームに入力してメールで送るらしい。結構簡単だ。
    もしデートするなら主人公の炭治郎!と決めていた。彼の優しい笑顔を思い浮かべるだけでドキドキする。努力家で一生懸命で芯の強さがカッコいい。リアルの彼はどんな人なのか会ってみたいし興味もある!
    私は『デートしたい彼』の欄に『竈門 炭治郎』を選んだ。それだけで何?このワクワク感!!
    「次はどんなデートをしたいか、だよね」
    推しとしたいデート内容に悩む、迷う。食事とか映画とか?いやでも特別感も出したい。でもあまり無茶ぶりするのもなぁ…うーん。
    参考にしようと、チョコバー公式ピンクのアプリを開いた。過去の当選者がどんなデートをしたか大まかに紹介されている。読んでみたらとにかくすごい。ド派手に浴衣デートや美味しいもの食べ歩き、めっちゃ羨ましい♡東京散歩やショッピングも胸キュンだ♡紙飛行機で遊ぶデートは可愛い♡ピクニックで膝枕とか最高♡零式デートも面白い♡テーマパークで制服デートも楽しい♡バイクの後に乗るデートはカッコよ♡パリを舞台に映画みたいにロマンチック♡どれも素晴らしい内容ばかり。いいなぁ〜みんな最高じゃん♡つい夢中になって読んでしまった。

    と、そこで急に我に返る。応募は全国から何千、いや何万通も来るはず。その中から選ばれるなんて宝くじレベルであり得ないんじゃない?と。
    (でも、せっかくだし…何か書いて送りたい)
    炭治郎と会えるなら大正時代に行ってデートがしたい。隊服姿の彼に会いたい。出来る事なら水の呼吸とヒノカミ神楽を間近で見たいし、あの蝶屋敷で着てたパジャマをお揃いで着て、月を眺めながら一緒におしゃべり出来たらどんなに嬉しいだろう。現実からかけ離れていればいるほど楽しい妄想が浮かんでくる。
    私は思いのままに文字を打ち込み、勢いでメールを送信した。
    (送っちゃったけどまぁいっか)

    それがまさか自分の運命を変えるきっかけになるなんて、その時の私は知る由もなかった。

    そして数ヶ月後───


    つづく

    +31

    -4

  • 12624. 匿名 2024/05/05(日) 23:56:09 

    >>544
    歌お題

    ⚠️痣のことについて話してます
    🌫️
    あなたのそばで


    「ガル子…今大丈夫?」
    「はい」
    僕が呼ぶとガル子はいつものように笑顔で返事をする。
    「ガル子に話しておかなきゃならないことがあるんだ」
    「……どうしたの?」
    「うん…あのね…」
    僕の言葉にガル子は少し不安げな表情になった。そんなガル子と向かい合って座った僕は痣のことについて話し始めた。

    「…あ…ざ……?」
    「うん。…痣が現れると25歳までしか生きられない」
    「……………」
    「僕にはもうその痣が現れてる」
    僕が発した言葉に、ガル子はそのまま黙って下を向いてしまった。


    ─────どれくらい沈黙が続いただろう。
    「………無一郎くんは……後悔してないんだよね?」
    ガル子は下を向いたまま呟くように言った。
    「うん」
    「……鬼を…倒すためには…必要なことなんだよね」
    「うん。この力で上弦や鬼舞辻とも戦える」
    「じゃあ、いいことなんだよね。鬼のいない平和な世界になるには、必要なことなんだよね」
    「うん」

    「無一郎くんが後悔してないなら、私は何も言うことはないよ」
    顔を上げたガル子は、僕を見て笑顔で優しく言ってくれた。でもその笑顔はいつもの笑顔と違っている。必死に笑顔を作ろうとしているのがわかった。

    「無一郎くんは鬼殺隊の柱なんだもんね。霞柱様だもん。後悔してないかなんて失礼なこと聞いてごめんね」
    「うん…」
    僕を心配させまいと必死に笑顔を作るガル子に僕は何も言えなかった。


    続く

    +23

    -7

  • 12880. 匿名 2024/05/06(月) 15:43:43 

    >>4529鬼滅チョコバーデート企画
    >>630己の趣味に全振り
    >>3883芸能人
    >>544曲お題
    ⚠️見切り発車
    ⚠️解釈違い

    「ミズクラゲの恋」 第一話

    私は今日、世界一ついていると思う。
    だって見て!このメール!
    『あなたはキメツバーのデート企画に当選しました。つきましてはご希望のキメダンのお名前と希望日程をお知らせください』
    だって!すごくない?
    3度見して、すぐに返信した。
    『愈史郎くん希望です。よろしくお願いします』

    5分に1回はスマホを確認して、その合間に『キメツチョコバー 当選 体験談』で検索する。
    パラパラと上がってきたものを端からチェック。
    え?ちょっと素敵すぎない?推しに会えるだけでも心臓飛び出しそうなのに、そんなに夢叶えてもらっていいの?

    愈史郎を推しはじめて、はや数年。はじめはテレビドラマだった。何気なく観ていた学園ものの生徒役ですごい中二病っぷりが気になって、すぐにネットで検索した。
    3歳の時に子役デビュー。事務所はそれほど大きくないけれど堅実なところで、受けたい仕事だけやっていること。漫画の実写化に定評があること。アクションもできること。深夜ラジオが毒舌で面白いこと。そしてかなりの面食いらしいということ。

    何をお願いしよう。考えるだけでテンションが上がってきた。

    続く
    (多分、解釈違いのオンパレードなデート企画になりますが、自萌え最優先、糖度高めで書いてみます。先に謝っておきます。ごめんなさい。テーマソングは平井堅さんの『Pop Star』でお送りします)

    +25

    -5

  • 15119. 匿名 2024/05/09(木) 23:59:02 

    >>544 歌をテーマにした妄想
    ⚠️🔥解釈違い⚠️己の趣味
    1/2

    周りから見れば華やかな世界、よくない噂も耳にするが、俺からすれば変わらない日々。
    自宅に着いたのは日付が変わった時間、ドアを開けると明るくなるが、自分の生活音だけの部屋。
    通知欄のひとつを開くとイルカの写真。何度か足を運ぶとイルカは顔を覚えると言っていた、イルカに顔を覚えてもらったのだな。1時間前に入っていた同じ文字を打ち、バスルームに向かった。

    ***

    「今、時間はあるか?」
    『うん、野菜の苗を植え終わって休憩してた』
    「いつものまじないは、かけたのか?」
    『美味しくなるんだってば!』
    「そうだったな」
    頬を膨らませている顔が浮かび、笑みが漏れる。話を続けていると楽屋のドアを開けたマネージャーモブ村に呼ばれ、それを伝えると『ありがとう、またね』と言われた後から聞こえる無機質な音を切り、楽屋を後にする。
    「煉獄さん、入ります」
    軽く息を吐きスタジオに入った。

    ***

    文字だけのやり取りだけが続いていたが、通話をすることもあった。「時間があれば話をしたい」と連絡があれば折を見て都合を尋ね、時間が合えば通話をしていた。
    傍から見れば大したことではない内容だろう。だが、短くとも俺たちにとっては大切な時間だった。

    モブ村が運転中の車内、今日は日付を跨がず帰れそうだなと思いながら雑談をしていると不意に尋ねられた。
    「こちらに呼び寄せないんですか?」
    「将来的にはな」
    共に住むことは考えたが、今の状況では危険に晒される可能性がある。守るために決めたことで、俺の思いを汲み取っている。
    「明日は7時だったな」
    「はい、お疲れさまでした」
    「ありがとう、お疲れさま」

    地下の駐車場からエレベーターに乗り、アドレスのひとつを押す。何度目かの呼び出し音が切り替わる。
    『……空き時間?』
    「いや、着いたところだ」
    『お疲れさま』
    ドアを開錠し、腰掛ける。寝起きの声だったので起こしてしまったかと尋ねると、ウトウトしていただけだと返事がくる。
    「明日は関西に行くんだ」
    先に仕事の内容を知りたくない君には簡単に話すだけだ。
    『今日おばさんたちと神戸に行ってきたよ』
    「車で行ったのか?」
    『高速バス。高速ができてから関西に行きやすくなったって、おばさんたちが言ってた』
    関西に向かう方面は乗客が多いが、反対方向だと乗客は少なく、座席が空いていれば当日乗ることができると君の話に耳を傾けながら、壁に飾っている青から橙に染まっている暖簾を見ていた。君が染物屋で教わりながら染めた"夕陽"と名付けた染物。
    『体に気をつけてね』
    「あぁ、君もな」
    君はいつも俺の体調を気にかける。最後に同じ言葉を交わした後、時計を見ると深夜1時を過ぎていた。パッキングを済ませシャワーを浴びた後、暖簾に触れる。
    時期は違うが君と見る夕陽、今はどのように見えるのだろうか。

    +22

    -6