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14541. 匿名 2024/05/09(木) 00:12:46
>>2918 『チッスで終わる話』× >>4000 『お弁当』1/3
⚠️解釈違い ⚠️ラストに🐚あり&前振り長い ⚠️>>630 趣味に全振り。何でも許せる方向け
お昼ごはんは、いつもこの美術室裏の階段で食べる。ここを訪れた初日に会った1つ年上の先輩と一緒に。今日も隣で本と睨めっこしている先輩のお昼ごはんは豆乳。昨日もそうだった。その前も、先週も。私がここでお昼ごはんを食べるようになって以来、先輩のお昼は毎日豆乳。しかも200mLを1本だけ。
入学して数日経った頃の昼休み、誰も来ないし屋根もあって良いなと思って陣取ったこの場所に、豆乳1本と文庫本を手にした先輩がふらりとやって来た。多分、以前から先輩はここで昼休みを過ごしていて、知らずに私がお邪魔した形。少々気まずい空気が流れた後、はっと気付いて慌てて謝りその場を辞そうとした私に、先輩は言った。
「気にせず居ればいい。俺も気にしないから」そう言った先輩は、私から少し離れた場所に腰を下ろして本のページをめくりながら豆乳をちびちびと啜った。少し迷ったけど、この場所が気に入っていた私は先輩の厚意に甘えることにした。突如現れた先輩が、あまりに綺麗でカッコ良かったからというのもあるけれど。
その日以来、私は昼休みになると毎日この美術室裏の階段を訪れた。先輩も毎日ここに来た。最初はほとんど会話もせず、黙々とそれぞれの時間を過ごしていたけど、そのうちぽつりぽつりと趣味の話とかをするようになった。
伊黒小芭内というあまり聞かない珍しい名前の先輩は、瞳の色もちょっと珍しくて左右で色が違う。先輩の目は宝石みたいに綺麗で、猫みたいに大きくて吊り目気味。その目が笑うときゅっと細くなる。カッコいいけどたまにとても可愛くなると思った。
先輩が豆乳だけを手に現れた時、てっきり購買のお昼ごはん争奪戦に敗れてそれしか買えなかったのだと思った。でも違ったみたい。伊黒先輩は毎日それしかお昼に口にしない。それがこの人の習慣のようだ。
「お昼…それだけで足ります?」
「あぁ、充分だ」
当然と言いたげな顔で答えた先輩は、その200mLをちびちびと時間をかけて飲む。眺める姿は可愛らしくて微笑ましいが、話を聞く分には低血糖になりそうだった。
ちらりと先輩を盗み見る。確かに、この人はすごく細い。ウエストのベルトがそれを物語っている。つい先日、先輩が大きく伸びをした際にシャツの下のほっっっそいウエスト(それと、意外としっかり鍛えていると思しき厚めの胸筋)が服越しにわかってしまって、私は動悸と眩暈と同時にぎょっとしたことを思い出す。
「いつかぶっ倒れますよ」
「今のところ倒れた事はないな。まぁもし、そうなったら君に助けてもらう」
「えー嫌ですよ、そんなの」けらけらと笑っておいたけど、実際のところ心配だった。本来なら食べ盛りであろう高校生のお昼がそれだけなんて、密かに先輩に想いを寄せていた私は内心心配で堪らなかったから。
「ちょっと多めに作っちゃったから、よかったらひとつどうです?」
図々しいとは思いつつ&断られる前提で、ドキドキしながら自分のお弁当箱を指さして伊黒先輩に声をかけた。(ちなみにうちは父子家庭で、炊事は私担当だ)
「いや、お構いなく」
「ですよね……すみません。私のお弁当なんて嫌ですよね」
「いや、そういうわけではない」
「今朝、急いでばばばーーっと詰めちゃったから…今見ると多いんですよね。まぬけだわ」
違う。ほんとは、作りすぎちゃったふりしてるだけ。先輩に少しでも食べて欲しかったから、わざと多めに作ったんだよ。
「………美味そうだ」
「え?」
「そういう事なら、お言葉に甘えようか」
「あ、はい……どうぞ。おにぎりもラップ巻いてるから、直に触ってないですよ」
おにぎりだって、わざといつもよりひとつ多く作った。少食の伊黒先輩のために、私のよりもひとまわり小さいものを。
「ありがとう。いただきます」そう言って、先輩はその小さい方のおにぎりを手に取った。
「鮭フレークと白ゴマです」
「…うん……美味いな」
「ならよかったです」お世辞を言わせてしまったのだろうとも思うが、それよりも自分の作った不格好なおにぎりを食べてくれたことを嬉しく思う気持ちの方が大きかった。
(つづく)+24
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14545. 匿名 2024/05/09(木) 00:20:44
>>14541の続き。2/3
⚠️解釈違い ⚠️そのうち🐚あり&前振り長い ⚠️趣味に全振り、何でも許せる方向け
不格好なおにぎりを咀嚼する伊黒先輩に、おかずも勧めてみることにした。
「よかったら、これもどうです?」
玉子焼きを指し示す。これも、いつもなら適当に焼くけど、もしかしたら先輩が食べてくれるかもしれないと思って、少し気合いを入れてだし巻きにして、出来るだけ綺麗に焼き上げた。1回目はちょっと焦がしちゃったから、これは2回目に焼いたやつだ。
「いいのか?では、それもありがたくいただく」
私はちゃっかり用意しておいた先輩用の割り箸と一緒に、お弁当箱を差し出した。先輩の小さな口が、私の玉子焼きを半分齧る。柔らかな表情で玉子焼きを咀嚼する姿を見て安堵した。
「うん。美味い」
そう言って頷きながら、左右で色の違う綺麗な瞳を細めた笑顔が眩しかった。
その日から私は毎日お弁当を少し多めに作るようになった。おにぎりをひとつ多くして、おかずもひとくちずつ多めに詰めて。
伊黒先輩は本当に少食らしくて、どんなに薦めても数口程度しか口にしなかった。それは私の分が減らないようにと配慮していただけなのかもしれないけれど。
「一人分も二人分もお弁当を作る手間は変わらないから」とそれらしい理由をくっつけて、お弁当を作って来ることを提案しようかと血迷ったこともあったが、そこは自重した。恋人でもなんでも無い後輩からの手作り弁当なんて、重いどころか多分恐怖。それくらいの想像は容易につく。
なので、昨日も私は小さいおにぎりをひとつ多めにと、おかずにはだし巻き玉子、アスパラの肉巻き、ほうれん草とコーンとしめじのバターソテーを少しずつ多めに詰めたお弁当箱を持って出勤した。これだってきっと先輩からしたら重い行為なのだろうが、今のところは嫌そうな顔もされないので、もう要らないと言われるまでは続けてみようかと思っていた。もし断られたとしても、大した痛手にもならないと思って。
だけど昨日、先輩は昼休み終了の予鈴が鳴っても美術館裏のこの場所に現れなかった。そして今日も、先輩はまだこの場所に来ていない。あと10分で予鈴が鳴っちゃうのに…。
そこで私はようやく悟った。
そうだよね───直接「要らない」なんて、そりゃ言いづらいよね。面と向かって言ったら私が傷付くと思ったのだろう。黙っていなくなることで、私がなるべく傷付かないように断ってくれたのだと気付くのに二日も要した自分のまぬけさに嫌気がさした。
こんなの───落ち着いて考えれば容易に分かることだった。毎日お昼にお弁当を押し付けられたら迷惑だってことくらい……なんでこうなるまでわからなかったんだろう。それくらい自分が浮かれて調子に乗っていたのだと思い知らされる。同時に今更ながらに恥ずかしくて居た堪れなくなった。
作りすぎたお弁当を無理やり口に詰め込んだ。懸命に咀嚼しているうちに何故か涙が滲む。───駄目だ。今泣いたら教室に戻れなくなる。もうすぐ5コマ目が始まるのに。それに教室に戻る途中で万一伊黒先輩にばったり会うなんてことがあれば、すぐにバレてしまう。あの人はとてもよく人を見ている。
こっそり引いたアイラインに、薄く入れたアイシャドウに、それからマスカラ。バレない程度にと密かに頑張ったメイクを崩さないように目元をティッシュでぎゅっと押さえ、溢れそうな涙を押し返す。それからまた、ひとり分にしては多すぎるお弁当と格闘をはじめた。
黙々とお弁当を片付けていると、背後のドアがガチャリと開き、伊黒先輩が姿を表した。先輩がこちらを見て、軽くはにかむように笑う。涙を気合いで押し戻しておいて良かったと心底思った。
(つづく)+20
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14966. 匿名 2024/05/09(木) 22:02:15
>>13462
まとめの場をありがとうございます。
part14から参加している伊黒さん推しです。以下、全てお題に乗っからせていただく形での伊黒さん妄想となります。
>>98 ご挨拶
>>618 長期任務明けの第一声
>>977 (SS)推しと桜
>>1406 >>14753 彼トピ写真館
>>1504 >>1662 原作のかっこいい場面
>>1514 言われたいセリフ×プロポーズ
>>2037 ミャクミャク
>>2325 (SS)第二ボタンを奪え
>>2552 (SS)憧れの推しが…
>>3323 鉄板シチュエーション
>>3452 >>3465 >>3485 アンカでbokete
>>3557 (SS)歌×一人にしないで
>>3690 >>3694 超絶おぼっちゃま
>>3917 (SS)夜更かし×チッスで終わるお話⚠️🐚
>>4618 (長文、全26話)デート企画『パリ・マジック』⚠️微🐚?
>>4724 かわいくて萌えること
>>6135 嫉妬心メラメラ ⚠️🐚?
>>7209 B'z
>>7355 わセカオワ×季節はずれ
>>7893 ラルク
>>7912 GLAY
>>8148 BUMP OF CHICKEN
>>9493 宇多田ヒカル
>>11666 田植え
>>12304 bokete
>>12827 >>12939 他作品のセリフ
>>13363 King Gnu
>>14541 (SS)チッスで終わる話×お弁当⚠️🐚
>>14677 アイス
推しが大好きという気持ちを詰め込んだだけの、捻りも深みも大したことない拙い投稿ばかりですのに、それらをお読みくださった方々、プラポチや🌾をくださった方々、本当にありがとうございました!バタバタしており時間が足りなくて、いただいたほとんどの🌾へのお礼をこの場でまとめてという形式にしてしまい申し訳ありません。プラスも🌾も、どれもが物凄く嬉しくて、たくさんたくさんパワーをいただきました!
とにもかくにも今回も皆様の素敵な妄想に浸らせていただき、ここに集う全ガル子さんたちに感謝しています。このPartでの思い出を噛み締め余韻に浸りながら、もうすぐ始まる柱稽古編を堪能したいと思います。
次のPartでもまた皆様と鬼滅男子達にお会いできるのを楽しみにしています。1ヶ月間ありがとうございました!
Part15のまとめは13659です+46
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