-
7. 匿名 2022/03/31(木) 17:31:52
「復讐」+4
-0
-
71. 匿名 2022/03/31(木) 18:15:27
>>7
「あら不思議。実は私もそう思うの。」
薄暗い部屋の片隅で女が手をあげた。
黒髪をさらりと揺らしては女は立ち上がるとこう続けた。
「幸せが一番の復讐って聞いたことあるかしら。私もその言葉に背中を押されて、ここまで流れてきたわ。
ある時、真面目に働いていた私を無下にしたバカな親子がいてね。目と鼻の先にある同業他社に就職してやったの。それでもね、毎日のように顔は合わすのよ。目と鼻の先ですもの。
だからね、笑って言ってやったのよ。あら社長さんに会長さんコンニチワ、あらやだもう私の職場の社長と会長じゃないからお二人のことはお名前で呼ばなくちゃ、私ったらドジだわってね。」
いたずらっぽく笑いながら、セブンスターに火をつける手はどこか震えている。
「それはオトコも同じなの。私の価値がわからなかった可哀想なオトコたちの目が届く範囲で、いいオトコと笑ってる私を見せているわ。きっとSNSを恨めしく思ってるでしょうね。
そうよ、私は復讐に流されて今ここにいるの。
もちろん幸せよ。ただ、いくら靴を洗っても汚い気がするの。
どれほどの人間を踏み散らしてここまで来たのかしらね。
あぁ、靴が汚い…汚いのよ。」
女はハイヒールの爪先を床でもてあそびながら、薄暗い部屋の見えない天を仰ぐ。
「幸せでいる代わりに私はどんな場所にいてもずっと笑っていなければならないの。
死ぬまでこの汚い靴を履いて、ね。」
ふぅ、と煙に乗せたため息をついた。
あの頃たくさんの人にしていたように、ハイヒールは音も立てずタバコを踏み潰した。
「私の話はこれだけよ。」
退屈な話に疲れた彼女は元いた薄暗い部屋の隅へ、ハイヒールの音を響かせながら消えていった。+3
-4
削除すべき不適切なコメントとして通報しますか?
いいえ
通報する