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86. 匿名 2021/08/24(火) 13:28:44
iPadからふと視線を移すと、
ふわりとひろがる白に鮮やかなオレンジ色が飛び込んできた。
一瞬の戸惑いのあと、「 … ああ」とガル美は呟いた。
おぼろげだった記憶が少しづつ蘇ってくる。
ああ、そうだった。
昨夜、わたしはここでずいぶんと飲んだのだった。
キッチンに目をやると、二階堂の瓶が役目を終えて所在無げに転がっている。
再び目の前に視線を移すと、お気に入りの白いランチョンマットに
オレンジの濃い染みが点々としている。
染みは右上の角から中央に向かって柔らかな弧を描いていた。
「美しいわね。まるで抽象画のようだわ…」
ガル美は物憂げに見つめながら、昨夜の記憶をなぞる。
ガラス容器から箸で何かをつまみ上げ、
赤く鮮やかな液体を滴らせながら、それを口元へ運ぶ。
口へ入れた瞬間、すべてを支配する強烈な味と香り …
「… キムチだわ」
同時に悟る。
この記憶は消えることはないだろう。
残り続ける。ランチョンマットの染みとともに。
何かを諦めたようにガル美は乾いた笑いを浮かべた。+4
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103. 匿名 2021/08/24(火) 15:40:30
>>86
すごい、めっちゃ小説!
キムチを肴に二階堂飲んだってだけなのに、めちゃくちゃ素敵な描写で引き込まれる。笑笑
「美しいわね。まるで抽象画のよう」のオチが、粗相して垂らしたキムチで笑える。
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