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218. 匿名 2019/06/27(木) 23:01:39
いつの間にか、ササキは大学に来なくなっていた。
学生寮を訪ねると、半年前に実家に帰ると言って寮を出てしまったようだった。
いつもササキと一緒に行っていた神保町の古本屋を、僕は一人でめぐり、昔からあるお茶の水の喫茶店でコーヒーを飲んだ。
いったいササキはどこに行ってしまったのだろう。忽然と消えるとはこういうことを言うのだろうか。僕以外の人間にとっては、ササキの存在などどうでもいいかのように変わりばえのしない学生生活が続いた。
もしかしたら最初からササキなんていう男はいなかったのかもしれない。そんな風に思い始めた頃、電話が鳴った。非通知で。
誰だろうと思いながら、電話を取るとササキの豪快な笑い声が聞こえてきた。
繊細さと豪快さが何の矛盾も無く共存しているのがササキという男の特徴なのだ。
「ガハハハハー、トオルか?やっとつながった!衛星電話でかけてるんだ。長くは話せないが今、カザフスタンにいる」
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