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153. 匿名 2019/06/27(木) 14:17:15
「連絡が来ないわ」
彼女は小さく呟くと、穏やかな時間の流れるカウンターの中央でひとり微笑んだ。
彼女の待ち人は一体何者であるのか。新しい世界へチャレンジした勇気を踏みにじる祈りか。はたまた別れたくない恋人か。もしや想い人ではあるまいか。
はたしてそうであったところで、この穏やかな時間を無駄なく楽しみたい今の僕にとっては取るに足らないことだ。
僕はそう結論を出したところで、そのまま窓の外に見つけた若葉の鮮やかで力強い生命と、ほの温かい煎茶から漂う仄かな香りにずぶずぶと引きずり込まれた。
ひとときの後ふと彼女を見遣ると、彼女はひとり灰色の霧に包まれて静かに肩を震わせていた。
「やれやれ」僕が声に出さずに心の中で呟いたところで、彼女の周りを覆う霧が急速に明るい水色へ変わった。
「いつでも全力で 空を見上げて笑い飛ばしてやる」彼女はひとことそうつぶやくと、たったいま初めてこちらに気がついたといった様子で振り返り、2度目の微笑みを見せた。
赤く腫れた目には、確かな意思が宿っていた。
…難しかったー!+24
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