1. 2025/12/10(水) 00:14:15
移住から数ヵ月は、すべてが新鮮に感じられたといいます。裏庭で野菜を育て、地域の直売所で販売される農作物を楽しみ、ご近所さんともあいさつを交わす日々。ところが1年を過ぎた頃から、徐々に空気が変わり始めました。
「夫があまり畑に出てこなくなって、ずっと家にいるようになったんです。地域の行事にも参加しなくなって。『なんで俺まで農作業しなきゃいけないんだ』って、ある日ぽつりと言われて…」
真由美さんが望んでいた“自然と向き合う暮らし”に対して、直樹さんは“静かで楽な引退生活”を求めていた――。夫婦の間に、静かに価値観のズレが生まれていたのです。
「畑仕事は好き。でも、夫と“違う生活”を送っているようで寂しくなる時もあるんです」
そうつぶやく真由美さんの表情は、少しだけ曇っていました。
2年が経った今、真由美さんは週に数回、地元の直売所で販売員として働き、地域の人々とのつながりを広げています。直樹さんは家で読書やテレビを楽しみながら、月に一度は東京の友人と会うために上京するようになったそうです。
「完全に理想通りではないけど、お互いの“ちょうどいい距離感”がわかってきたのかも。土をいじっている時間は、今でも私にとって大事な時間です」
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「私はもともと、畑仕事とか家庭菜園にずっと憧れていたんです。土に触れて、自分の手で何かを育てる暮らしがしたくて…」そう語るのは、静岡県内の里山地域に暮らす宮田真由美さん(58歳・仮名)。