1. 2023/09/28(木) 14:15:48
――著作では、「死」の認識が変化しているということにも触れています。
百年前、多くの人は家やコミュニティーの中で亡くなりました。死は身近であり、どのように対応すべき事象か、知られていました。現代医学は無数の命を救い、進歩をもたらしています。すばらしいことですが、同時に死を家やコミュニティーから取り除き、病院に持ち込んでいます。
現代医学にとって、死は「敵」です。戦いがあり、どちらが勝つのかという構図です。それに伴い、私たちは死についての知識がなくなり、怖い存在となっています。多くの人は現在、死が何らかの「失敗」ととらえているのではないでしょうか。しかし、実際には必ずやってくる、人生の一部なのです。
――死亡幇助は、患者にとってどのような意味があるのですか。
カナダで死亡幇助の対象となるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。重大な病気があり、治療が不可能で、不可逆的に状態が劣化しており、耐えられない苦しみがある、などが含まれています。
私が行っているのは、人生の終わりにおいて、患者の選択肢を探ることを手伝うことです。何が可能で、何が目標で、何が最も大切なのか。病気と全力で戦いたいのか? 落ち着きと緩和ケアを目指したいのか? 苦しみがあまりにひどく、この先は衰えしかないので、死亡幇助を選びたいのか? 選択肢を全て探り、私は最期の希望をかなえているのです。
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――信仰や信念の理由から反対する人もいます。
それはもちろん認めるべきです。しかし、同時に患者の権利も考えなければなりません。この制度にアクセスするのは、患者の権利なのです。一方で、関わりたくないという人の意向も尊重する必要があります。
実際、今はそのようになっていると思います。死亡幇助を誰かに強要するということは起きていません。信仰や倫理の理由で制度に反対するのであれば、私はそれを尊重します。ただ、それを他人に強要することもしないでほしいのです。
カナダで死亡幇助に関わっている人たちは、慎重に配慮をしながら、法律を順守しています。制度ができてから7年経ち、4万人超の人が死亡幇助で亡くなっていますが、不適切な行為についての訴追は1件もありません。これは誇るべきことだと思っています。
出典:newsatcl-pctr.c.yimg.jp
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カナダで安楽死が急速に拡大している。医師による死亡幇助(Medical Assistance in Dying=MAiD)の制度が2016年にでき、2022年は1万人超がこれによって亡くなった。制度にはどのような意義があり、どのような人たちが利用しているのか。産婦人科医から死亡幇助の「専門医」に転身し、「This is Assisted Dying(これが死亡幇助だ)」の著作もある、ステファニー・グリーン医師に聞いた。