1. 2023/08/18(金) 22:13:41
「楽しいですね。研究のほうに興味が行っちゃってる。勉強するの、大好きだから。とにかく私、ずーっと忙しいんです。いつもやることがいっぱい」とはいえ、忙しくても興味がなくても、性的欲求というのは別モノかもしれない。頭と体が別の欲求をすることだってありえる。シェリーさんの体は、性的欲求というものを起こすのだろうか。
「いや、時間ないんで。性的欲求なんかもないですしね」
と、シェリーさんは、すこし高い声を上げて笑った。無理しているようには思えなかった。肉体的快感の経験も求めていないとすると……。私はシェリーさんにとっての快感を勝手に探していた。そして見つかった。いい研究結果が出た時ではないか──それがシェリーさんにとっての喜びでありエクスタシーなのではないのか。私がそれをシェリーさんに告げると、
「快感かなぁ……? でも、とても楽しいです。研究をやり遂げたという達成感があります。だから毎日、原稿を書くか、本を読むか、インタビューで誰かに会うかを続けられるんです」
小さな顔にピンク色が加わったように、私には見えた。忙しい忙しいとシェリーさんは言うが、研究のために相当な努力と勉強を重ねているのだ。だからこそ論文が完成したり、研究結果が出た時、満足感が得られる。それは、苦しく厳しい練習を重ねて試合で勝った時のアスリートの気持ちと似ているかもしれない。
つまり研究や論文を完成させたその瞬間に、快感の頂点に登りつめることができるのだ。となれば、この快感に勝つ男性を見つけるのは、相当難しそうだ。
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日本の有名私立大学で研究員をしている35歳のシンガポール人のシェリーさん(仮名)は、これまで一度も性経験がない“処女”だ。彼女はなぜそれを選択したのか。作家の家田荘子がインタビュー。『大人処女ーー彼女たちの選択には理由がある』(祥伝社新書)より一部抜粋・再構成してお届けする。