1. 2022/07/07(木) 23:05:39
「立花さんの本で宇宙を意識した飛行士は多いですが、僕が特殊だったのは、宇宙に行く直前に米スペースシャトル『コロンビア』の事故(2003年)がありました。同級生が犠牲になり、死ぬかもしれない場所と分かった上で、まだ行こうとするのかという問いを突き付けられました。宇宙は人間にとって危ない場所で、死ぬかもしれない。宇宙観の明確な起点で、動かせないスタートポイントです。宇宙は死の場所という感覚はそこから来ています」
「恐怖を克服したわけではありません。ただ、ずっとおびえているわけでもありません。受け入れる、当然のものとして許容するということです。圧倒的に死しかない世界で、ごく限られた生が同居しています。宇宙は限界まで死に近い場所ですが、帰ってくる方法はあります」
「生きていることは奇跡で、地球も奇跡のような星です。(現代は)生の感覚が満ちていて死の恐怖はほとんどない社会です。普段生活していて、死の恐怖はあまりないでしょう。例えば新型コロナウイルス感染症。かかったら大変ですが、自分は帰らぬ人になるかもしれないという感覚はないと思います。(宇宙では)放っておくと自分は死ぬ、うまくいけば生きられる。命を続けることがいかに大変かを認識できます。宇宙船の外側に船外活動で出ているときは、手袋の先はもう死の世界です。(死生観は)概念ではなく、きわめて即物的なものになります」
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