1. 2022/03/04(金) 12:02:01
私はホームレス生活中、関わるホームレスたちに「お前みたいによく話すやつは珍しいよ」と何度も言われた。取材ということは誰にも伝えていなかったが、本を書くことは決まっていたので、私はとにかくいろんなホームレスに話しかけまくった。相手のこれまでの人生に耳を傾け根掘り葉掘り聞いた。その過程でいろんなホームレスと仲良くなった。
(中略)
東京都福祉保健局の調査によれば、令和3年1月時点での東京都の路上生活者数は862人。ちょうど高校1つぶんくらいの規模感である。炊き出しに行けばいつも同じ顔ぶれで、「○○さんは先月、生活保護に移行したらしい」とすぐにうわさになるほどに狭い社会である。そんな場所で毎日あれこれと聞きまわっていたら、いつかトラブルになるかもしれないし、「根掘り葉掘り聞いてくるやつ」というレッテルを貼られ、避けられてしまうかもしれない。
どこの高校にも「関わると面倒くさいやつ」とうわさになり、孤立している生徒は1人くらいいるんじゃないだろうか。高校生の場合は転校すればなんとかなるが、ホームレス社会にいられなくなった場合、次に行く場所はないのだ。
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2021年夏、ライターの國友公司さんは2カ月間、都内でホームレスとして過ごした。共に生活する人々を見つめ、著書『ルポ 路上生活』(KADOKAWA)にまとめた。路上生活では、多くのホームレスから「お前みたいによく話すやつは珍しいよ」と言われた。その背景には路上生活における「暗黙のルール」があった――。