1. 2019/09/28(土) 18:49:40
午後3時過ぎ、一旦家へ戻ると、幸運にも早々に電気が復旧した我が家の冷房が効いた茶の間で、テレビをのんびり観ていた父(89歳)が、開口一番、「NHKの映りが悪いから電気屋へ電話しろ。これじゃ相撲が観られないだろ」と宣った。
「だから、今それ重要じゃないでしょ。館山市中が停電なんだよ。病院だって死ぬか生きるかの状態でがんばってるんだよ」
状況を説明するが、高齢の父は、「相撲が観られない」と繰り返す。
(中略)
午後12時半、状況がつかめないまま、おにぎりと飲み物を持って、布良の実家へ父親の様子を見に行った義姉が落ち込んで帰ってきた。布良地区の被害は想像以上に酷く、実家も屋根瓦が飛び、素人の手には負えない状況だったという。
さらには、その地区は電気復旧の目処が立っていない。義姉は電気が復旧するまでの間、兄夫婦宅に身を寄せるように説得を試みたが、「いや、俺はここにいる」の一点張りで耳を貸さないとのこと。
「でも、いつ電気がつくかわからないんだよ。ご飯やお風呂はどうするの? 電話も通じないし、何かあったらどうするの」
「大丈夫だって言ってるだろ」
「大丈夫じゃないでしょ」
「年寄り扱いするな」
「十分年寄りでしょ」
そんなやり取りを繰り返すも、テコでも動かない父親を残して帰ってきたのだと、義姉は大きくひとつため息をついた。
長いので全部は引用できませんでしたが、高齢の親や親族とのやりとりを読んでいるだけでゲッソリしました…。自分の親ももっと歳をとったらこうなるのかなあ、と。
同じような思いをしている人、多そうですね…。
+827
-9
9月9日未明、千葉市に上陸し、千葉県内に甚大な被害をもたらした台風15号。上陸直後には県内ほぼ全域の約90万戸が停電し、暴風により多くの住宅が損壊した。停電が2週間続いた地域も多く、台風が去って20日が経った現在でも復旧していない地域もある。そんな被災地・千葉のなかでも、特に被害が大きかった県南部の館山市に暮らす作家のこかじさらさん。彼女自身は幸運にもほとんど被害に遭うことはなかったが、まったく想定していなかったトラブルの連続に、精神的にすり減っていく20日間だったという。