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192. 匿名 2016/07/20(水) 13:55:00
僕はまたふと思いついてここへ帰ってきた。
もう誰もいない。
けれど、ここにいた人々の控えめで清涼な息遣いはまだそこここに息づいている。朝露の白檀のように。
僕の皆を感じるこの感覚は、濡れた路上に張り付く落ち葉の持つセンチメンタリズムか、あるいはただの錯覚か。
なに、どちらでもかまわない。
ここに来ると僕は普段より少しばかり楽に息ができる。
それだけが最小の真実でありすべてなのだ。
しかし、僕の文章は、既に春樹っぽくはなくなっているような気もしている。それが明けない白夜のように恐ろしい。
いや、そんなこともまたきっと錯覚だ。
そう、自意識の罪が侵す愚かな錯覚に違いない。
え?なんだい?僕の名前?
名乗るほどのものじゃないけれど。
辻仁成だよ。
やれやれ。+2
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