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154. 匿名 2016/06/29(水) 23:33:42
ホテルのラウンジに着くと、スマホを取り出し、ガールズチャンネルをチェックした。
爽やかなバーテンが白い歯を見せながら、僕がオーダーするのを待っている。
「モヒート」
「かしこまりました」
爽やかなバーテンは手際よく作業に取り掛かる。
僕は真剣にガールズチャンネルを読んでいた。
「これ落としましたよ」
声がした方を振り向くと、女が立っていた。
その女は、つばの広い赤い帽子をかぶり、赤いワンピースを着ていた。
透けるよう白い手に、紫のメッシュの財布を握っている。
「この財布、あなたのよね?」
僕は、その見たこともない紫の財布に、何やら息苦しさを覚えた。
「僕のではないです」
そう答えるのがやっとだった。
「いえ、これはあなたの財布よ。今はあなたのではなくても、これからあなたが必要になる財布よ」
僕が必要になる財布……?
急に喉がカラカラに乾き、モヒートを一気に呑んだ。
赤い女は消え、テーブルに紫のメッシュの財布が置かれていた。
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