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9967. 匿名 2024/04/30(火) 23:26:41
>>9960 ⚠️解釈 (※前回11話にしてましたが間違えました、10話です)
「チョコが溶けるその前に」11
その日、私は屋敷に戻ってもなかなか寝付けずにいた。
"悪かった"
"すまない"
さっき冨岡さんに言われた言葉が頭の中でぐるぐるまわる。私の頬に触れようとしたことも、さらにもやもやを加速させた。
「だー!、もう!!誰かさんのせいで全然寝れないよ!」
水を飲もうと自室を出ると、「おい」と後ろから声を掛けられた。
「!!冨岡さん!びっくりさせないでください」
「誰かさんとは、誰だ?」
「勝手に独り言を聞かないでください!なんですか、こんな時間に…あ、またお楽しみですか?相変わらずですね」
「すまなかった」
「え…?ああ、さっきの事なら大丈夫です。私もいちいち騒いですみません、鬼をあんなに間近で見たのが初めてで、つい…」
「…それもそうだが、その件では無くて」
「…?」
もしかして、私に未来へ帰れとか痩せろとか言ったのをモブ原さんに怒られた件の事を言っているのだろうか。冨岡さんがこうも素直だと、なんだか調子が狂う。
「気にしてません。私、元の世界でも痩せろってしょっちゅう言われてたので。そのせいでフラれたこともありますし。あ!チョコありがとうございました、美味しかったです。冨岡さん、あんなおしゃれなお菓子知ってるんですね」
「ああ…、あれは教えてもらった」
「誰にですか?」
「…"もう子供じゃない"と言ってたお前ならわかるだろう」
「……あー、そういうことですか、なるほど〜今なんかすごいしっくりきました。でも、そういう事はわざわざ言わないほうがいいですよ!なんか損しました、私はてっきり…、」
「てっきり、なんだ」
「冨岡さんが、自分で選んだのかと…」
ちょっと考えればわかるはずだ。冨岡さんのことだ、女の人に聞いて買ってきたに決まってる。それを美味しい美味しいと頬張っていた自分が馬鹿らしくなる。
「…ちょ、何近づいてきてるんですか」
「もう子供じゃないんだろう」
「そうですけど…っ」
冨岡さんにじりじりと詰め寄られ、ついに壁に背中を付けた私は逃げ場を無くしてしまった。
「ちょっと、待ってくださ…、」
冨岡さんは私の胸元を掴むと、もう片方の手で私の口を覆った。
「とみおかさ…」
「騒ぐな。…もう子供じゃないと言うなら、こんなに胸をはだけさせないほうがいいな」
掴んだ浴衣の襟元をぐいと引っ張り、着崩れを直すと「わざと見せてるなら歓迎だが」と耳元で言った。
「はぁ…!?わざとな訳ないじゃん!」
「そうか。それは残念」
「…最低!」
その場を小走りで離れ冨岡さんから見えなくなったところで足に力が入らなくなり、ずるずるとしゃがみ込んだ。
着慣れない浴衣を直されたことでまた子供扱いされた事や、今日の任務で優しかった事が変わるがわる思い出されて頭の中が混乱する。
「勝手に触んないでよ…」
冨岡さんに触れられたところが熱を持ち、私はその後さらに眠れなかった。
つづく+32
-7
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9968. 匿名 2024/04/30(火) 23:29:33
>>9967
⚠️
ひゃー!!ドキドキしましたぁ♡楽しみにしてます!+28
-5
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9969. 匿名 2024/04/30(火) 23:30:15
>>9967
冨岡さん、罪な男やわ…😮💨+28
-4
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10529. 匿名 2024/05/02(木) 04:58:00
>>9967 つづき ⚠️
「チョコが溶けるその前に」12
「ガル子さん、よく食べますね」
「はい!!とっても美味しいです!」
モブ原さんと薬の調達に街に来ていた私は、昼食のために入ったお蕎麦屋さんで大盛りをたいらげていた───モヤモヤを払拭するように。こういう時は食べるに限る。だから太るんだけど。
「良かったら甘味も食べませんか?ここはあんみつも美味しいんですよ」
「え、いいんですか!?」
運ばれてきたあんみつをスプーンですくって頬張る。
「ほんとだ、美味しい〜!幸せ」
そんな私を見て、モブ原さんがふっと柔らかく笑った。
「可愛らしいですね、ほんとに」
「──ぐ、ゴホゴホッ」
「ガル子さん大丈夫ですか。お茶飲んでください」
モブ原さんが胸キュンなことを言うから咽せてしまった。優しいモブ原さんが私の背中をさする。
「か、可愛いって…私が?真面目に言ってます?」
「大真面目ですよ」
「お、大口開けて食べてるのに?」
「はい」
「口いっぱい入れて頬が膨れてるのに?」
「もちろん」
モブ原さんは照れる様子もなく、にこにことこちらを見ている。これが大人の余裕なのだろうか。
「…私の実家は、定食屋だったんです」
「そうなんですか?」
モブ原さんは幼い頃からよく店を手伝っていたという。器用さや料理好きなのはそこから来ているのだろう。
「特に、こういった和菓子を作るのが好きで。お客さんが今のガル子さんのように美味しいって嬉しそうに食べてくれるのを見るのが好きでした。でもある夜鬼が来て、家族が……。私が生き残ったのは、その時水柱に助けられたからです」
そこで身寄りの無くなったモブ原さんを、店の常連だった冨岡さんが屋敷付きの隠にしたそうだ。
「いつか…すべてが終わったら自分の店を持ちたいと思ってます。美味しそうに食べるガル子さんを見てると、自分の夢を諦めちゃいけないって思えるんです」
「あの…!実は、私も元の世界では高校を卒業したらパティシエの専門学校に行く予定でした。あ、パティシエはお菓子職人のことで。ほら、食べるのが大好きなので自分で作れたらいいなぁって」
「そうでしたか。では、良かったら今度の非番で一緒にお菓子でも作りませんか?」
「はい、ぜひ!やったー」
「良かった、元気そうですね」
「え…」
「少し前からちょっと元気なさそうで気になってましたので。…水柱と何かありましたか?」
「えっ……!?」
先日冨岡さんに襟元を直されたことを思い出して、意図せずに顔に血がのぼった。それを見てモブ原さんは「やっぱり」と小さくため息をついた。
「ガル子さん、悪い事は言いません。水柱はおやめになったほうがよろしいかと」
「ち、違います!冨岡さんとは何かあったわけじゃなくて、えーと…」
おそらくモブ原さんは私が冨岡さんに何かされて傷付いてるとか、私が冨岡さんを好きだと勘違いしているのかもしれない。
「あの、何も無いですから、大丈夫です」
「それなら良かったです。ガル子さんには傷ついてほしくないので」
「あんな遊び人はこっちからお断りですよ〜」
「それだけでは無くて…水柱には、お慕いしている人がいらっしゃいますから」
「…へえ、そうなんですか。遊び人なのに意外〜!」
それ以上何も言えなくて、私はひたすらあんみつをスプーンですくって食べた。
つづく+27
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