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9363. 匿名 2024/04/29(月) 21:54:58
>>9329⚠️解釈⚠️見切り発車⚠️自萌え
年上の後輩📿②
「はぁ…」
御手洗いの鏡に対峙してため息が漏れる
いつもこうじゃない。今日の飲み会だからだ。
今日は、チームの持つ開発プロジェクトが目標よりずっと高く早く結果を出せたという祝いの席だ。
上から一人一人に手当てが出て、なおかつ飲み会の経費も出た。美味しいお酒のはずなのに、それが悲鳴嶼くんの力によるところが大きいと思うと、どうしても楽しい気分にはなれなかった
出世街道は遠退いた。
推薦してもらえそうだった課長は、今や悲鳴嶼くんしか見えていないようだった。課長代理は彼がやるだろう。私もいつかは辿り着くと思うけれど、それが確実にあと三年は伸びた。彼のせいじゃない、私の力不足だ。わかってる。
だけど何故いま。あの数字。どうしてあそこまで…今後、これを抜ける気がしない
振り切るようにスマホを見ると、彼氏から着信があったことに気づいた
「まだ帰ってないの?」
「もうすぐ帰るけど…どうしたの?」
彼氏は出張中で、私はその間、彼の飼猫のために彼の部屋に行って寝泊まりすることになっている。
「ペットカメラでさ、姫ちゃんがずっと寝てるの気になって。具合悪いのかも。」
「そうなの?吐いたりしてる?」
「それはないけど、やっぱ心配だから早く帰ってくれない?」
時計を見ると終電まではまだある。チームが一丸となって四年間やってきた案件が最高の結果を残した祝いの飲み会。心配だけど現状寝ているだけなら、仮ではあるけど中心にいた私が抜けるのは、もう少しあとにしたいな…
「そうだね、あと少ししたら」
「飲み会だよね?」
モブ太が苛立ちを隠さないまま遮った。
姫ちゃんはモブ太と暮らしてきた家族だ。上京したあと実家から連れてきたくらい大事にしてる。
「…ごめん。一旦帰ってみるよ。」
お手洗いから出ると彼が待っていた
「あ、ここお手洗いひとつしかないのね。待たせてごめんなさい」
通りすぎようとした時、彼の足が狭い通路をふさいだ。
「…何?」
「主任は今から私がお送りします。みんなには言っています。」
一瞬、彼が何を言っているかわからなかった
「えっ、なんで?」
「なんでって…鏡を見たんでしょう?気づきませんでしたか?」
まぁまぁ青白かったけど、一人で帰れないほどじゃない。それを、わざわざみんなに言ってくるなんて…
何か酷いことを口走りそうになって、そっと彼から顔を逸らした
「そうだね、今日はもう帰る。気を遣わせたね」
言いながら通り抜けようとした私はその長い足に引っ掛かった
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9398. 匿名 2024/04/29(月) 22:19:20
>>9363⚠️解釈⚠️見切り発車⚠️自萌え
年上の後輩📿③
あらかじめ用意された腕にしがみついた格好になって、怒りと屈辱で一気に頭に血が昇る。
引っかかったんじゃなく、引っかけられたのだ。
ほら、と太い腕がそのまま私を引き寄せた
「足元もおぼつかない。送らせてください。」
「大丈夫だからっ!」
思わず声を張り上げてしまい自分でも驚いていると、言うことを聞いて、とあやすような声で耳元で囁かれた
途端に彼が年上の男だったと思い出す
「はな、して」
逞しい胸にぴったり抱きしめられて、心臓がどくどく脈打つ
「ああ、暴れないで」
暴れてなんかいないのに、軽々と抱き上げられてしまった。睨み付けると、人の良さそうな顔をして微笑んだ
「主任は子猫みたいに軽い…ちゃんと食べていますか?夜は寝るだけだからと食べずに寝て、朝は食欲がわかないからとコーヒーだけにしていませんか?」
見てきたようにその通りだった。時々思うけれど、彼はどこまでも見透かすような見方をする。
「…毎日じゃ、ちゃんと、食べる時もある」
「それは最近だといつ?」
「急に聞かれても…ねえ、いいでしょうそんなこと。とにかく、下ろして。」
悲鳴嶼くんの尋問に正直に応じてはいけない。
彼とはまともに話ができないことはわかってる。引きずられてしまうのだ。
参加しているかしていないかわからないような会議で、揉めた時だけ前に出て鮮烈にまとめあげる姿を何度も見てきた。見た目にも言葉にも力があって、低く穏やかだけれどよく通る声で、その場の全員を説き伏せる。
でもそれが反発も起こらないほど圧倒的な制圧なので、私たちはどこか楽になったような気持ちで彼についていく。芯から上に立つ者として出来ているのだ。
私には無いもの。
「下ろして」
なるべく冷静を装い短く明瞭に告げたつもりだったけれど、一瞬、彼は悲しそうにひとつ瞬きした。色素の薄い瞳が潤んでる。
「分かっているでしょうが」
瞬きの後にいつもの彼に戻っていた。
「あなたの健康は、チームとしても会社としても必要なものです。でもそれとは別に、私はあなたが心配なんです。」
泣かせてしまったかと動揺した私は、抱き上げたままどんどん歩く彼をもう止められなくなっていた。
計算で見せているのか地なのかわからない。初めて会った時から、彼がずっとよくわからない。
「ありがとう」
私の言葉に一片もありがとうの気持ちがこもっていないのを見抜いた悲鳴嶼くんが、眉を顰めてため息をつく
「…分かっていて自己管理できないのなら、私があなたを管理しようか」
宴会場のあるホテルの裏に出るとタクシーが待っていて、私は中に放り込まれた
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