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8843. 匿名 2024/04/28(日) 21:46:52
>>8779
ほれぐすり🔥⑥
⚠大正軸の煉獄さん ⚠解釈違いに注意 ⚠⚠濃😘あり
私たちは空が夜を纏っていくのを、静かに眺めていた。ちらっと顔を後ろに向けると、杏寿郎さんと目が合った。
「ふふっ。ガル子、こっちを向いて。」
「は、はい…」
私は言われるがまま、体ごと向きを変え、横向きに炎柱のあぐらに座った。
「………。今夜の君はいつにも増して色っぽいな。」と、杏寿郎さんは私の頬にかかる黒髪を、手でかきあげて頬を撫でる。
髪を下ろして杏寿郎さんと会うのは初めてだった。杏寿郎さんは、惚れ薬を飲んだあの時のような熱を帯びた目をしている。炎柱は私の頬を撫でながら言った。
「目を瞑って」
私は戸惑いながらも、それに従って目を閉じる。杏寿郎さんの顔が近づいて来るのが、わずかに感じる熱でわかる。私は唇にキュッと力を入れた。
首筋に両手がかけられて、何か冷たいものが当たる。
「ガル子、目を開けてごらん」
見ると、首飾りが首にかけられていた。
「あ…」
「うむ、やはりとても似合っている。急いでここに来たのは、これを渡したかったからなんだ。」
金色の華奢な鎖、そこに花をモチーフにした白い花びら型の大ぶりの飾りが付いている。その横には小ぶりの薄紫色の宝石の飾りもついていた。
「うわぁ綺麗…。このような高価なもの…いいのでしょうか」
「うむ。大好きな君の為に、随分時間をかけて選んだのだぞ」
「杏寿郎さん。本当に、ありがとうございます。」
「しかし……ガル子?いま目を瞑った時、何か違う事を考えていなかったか?」
「えっ!い、いえ。違いますっ!そんなことは…!」
私は頬を赤く染めてぶんぶんと首を振る。
「ふっ。可愛いくてたまらないな」
動揺している私に、杏寿郎さんは不意打ちのように柔らかな唇を触れされた。
あっ……
びっくりして真っ赤になり固まってしまった私をみて、炎柱は眉を下げて微笑むと、次第にその視線が雄々しく光り、呼吸が荒くなる。
「すまない。ガル子、もう……我慢ができない…」
と、私の後頭部を抑えて顔をちかづけると先程よりも深く口づけをする。身も心も熱くなってとろけるような初めての感覚だった。私の中の大好きが溢れ出してしまう。
だめだ、これ以上は絶対に──。惚れ薬を使ってこんな事をしてはいけない。
私が顔を背けて避けるように唇を離すと、杏寿郎さんがこちらをみた。
「あの、もう杏寿郎さんとは会えないです。私のこと、忘れて下さいませんか。」
そう言ったとき、私の頬に一粒の涙が伝った。
「よもや!すまない!急にこのようなこと、嫌だったに違いあるまい」
「いえ」私は大きく首を振った。
「私は杏寿郎さんが思っているような人間ではありません。近づかなかいほうがいいです」
「何を言っているのだ、ガル子。君はとても素敵な人だ。」
「杏寿郎さん……。実は私、とてもいけないことをしてしまったのです。あなたを、騙しているのです」
「むう?どういうことだ?」
「そのうちわかります。きっと私のことは嫌いになります」
「そんなはずがないだろう。」と、少し不思議そうな顔をしている。
私は、震えながら声を絞り出して言った。
「杏寿郎さんは、〝惚れ薬〟を飲んで、私を好きになってしまったんです。」
「惚れ……薬?」
炎柱は、驚いた顔をして固まってしまった。
つづく (更新が遅くてすいません🙇♀ゆっくりペースになりますが、頑張ります!コメントありがとうございます✨)+28
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10081. 匿名 2024/05/01(水) 11:49:53
>>8843
🐢ながら読んでます+21
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13283. 匿名 2024/05/06(月) 21:36:12
>>8843
ほれぐすり🔥⑦
⚠大正軸の煉獄さん ⚠解釈違いに注意
「いま、惚れ薬……と言ったのか?」
「はい。杏寿郎さんはその効果で、一時的に私を……その……好きになっているのです。」
「……まさか」
「本当です」
「この気持ちは薬のせいだというのか?そんなはずはあるまい」
炎柱は、私をギュッと抱きしめた。私は炎柱の腕から抜け出して言った。
「あの夜。私が包帯を巻いた夜に、炎柱は惚れ薬を飲んでしまっていたのです」
炎柱は目を大きく見開いて、その後じっと考えるように黙っていた。
私は一歩下がって、額をめいっぱい床につけた。
「身分をわきまえず、大変失礼なことをして申し訳ありませんでした。決して許して欲しいなどとは言いません。今後二度と炎柱様の前には現れませんので、私のことは……」
そう言いかけたところで、言葉が詰まる。
目の奥がジンジンとして涙が溢れると、鼻の下までつたっていく。唇が震えて声がうまく出せない。涙声で力を振り絞って言った。
「私のことは…忘れて……どうか日々ご無事でお過ごしください。炎柱様のご無運を祈っております。」
「むう。だが……俺は…!!」
そう言った炎柱の声を振り切り、私はその場から逃げるように走り去り、奥の部屋に閉じこもった。
その後、炎柱が部屋に追いかけて来ることはなかった。
****
それから私は、藤の家を出て、親戚の家に住まいを移した。名目は家事手伝いということで置いてもらった。
遠い山奥の村だ。実家の者たちには、炎柱にはこの場所を言わないようにお願いしてある。本当は藤の家で鬼殺隊を助けるという役目を果たしたかったが、どうしても炎柱と顔を合わせることができなかった。
炎柱から実家に何度も手紙が届いていたと聞いたが、私は読みに帰る事が出来なかった。読んだ所で、炎柱に申し訳が立つ訳では無い。それに……炎柱の気持ちが私から離れるという現実を見るのが怖かった。
季節は二つ進んで今は秋。もう、とっくに惚れ薬の効果は切れている。
でも、私は馬鹿みたいに、炎柱にかけてもらった甘い言葉や、触れられた時のぬくもり、そしてあの夜の燃えるような口づけを思い出している。炎柱は私を好きだと言ってくれた。あの瞬間、愛してくれていた。寝ても醒めても、その時の心が満たされていく気持ちを反芻しては、また絶望するということを繰り返していた。
炎柱は今、誰かをあんなふうに愛しているかもしれない。抱きしめているかもしれない。名前を呼んで、口づけをして…あぁ…。
宛のない苦しさは、つむじ風に舞う落ち葉と共に同じところをグルグルと巡る。
庭に雑然と散らばる落ち葉を、箒で掃いていると、柿の木に一羽の鴉が止まった。
「ヨウヤク見ツケタ。ガル子サン、オ久シブリデス。」
見覚えのあるその鴉は、私の目の前で漆黒の羽を広げてお辞儀をした。
つづく+27
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