ガールズちゃんねる
  • 8779. 匿名 2024/04/28(日) 20:55:50 

    >>6161
    ほれぐすり🔥⑤
    ⚠大正軸の煉獄さん ⚠解釈違いに注意

    今日も、家には鬼殺隊の方々が数名来られている。でも、炎柱の姿は無い。
    私は、女中さんに教わりながら、おもてなしの手伝いをしていた。顔に泡を飛び散らせながら、一生懸命かちゃかちゃと食器を洗っていると、お皿を下げに来たモブ恵さんに話しかけられた。
    「ねぇ、惚れ薬、効果はまだきれてない?」
    「えっ…」
    「その様子だとまだなのね。いいわねぇ♡」
    モブ恵さんはそのまま向こうに行ってしまった。

    効果が切れる…?
    そうか。そうだ……。薬なのだから、当然いつかは効果がきれるのだ。分かっていたようで、ちゃんと分かっていなかった。あれからひと月半が経っていた。まだ炎柱は、私の事を好いてくれている様子だったけど…そのうちに…。
    私は頭を殴られた様な感覚に陥った。

    その後からはずっと、胸騒ぎが止まらず何をしても心ここにあらずだった。杏寿郎さんに会いたいけれど、今日は会わなくてホッとした気持ちの方が大きいかもしれない。心が落ち着かず、お風呂を上がったあとも浴衣姿のまま、縁側でぼんやりとしていた。西の空は夕焼けを残しながらも、刻々と夜の闇に染まっていく。

    その時、廊下の向こうから、ミシミシと足音が聞こえてきた。
    「そんなところで立っていては、体が冷えてしまうぞ。」
    そこには、居ないはずの炎柱が立っていた。
    「…?!今日は来られないのかと!」
    「今しがた柱合会議が終わって、急いで来たんだ。」
    「杏寿郎さん…。」
    「最近はダメだな。何をしていてもガル子のことが頭に浮かんでしまう。柱として不甲斐ないな。」と朗らかな笑みを見せる。
    前言撤回。会えなくてホッとしただなんて嘘だ。やっぱり、顔を見るだけで、こんなにも胸がいっぱいになる。

    「ガル子も夜の空を見るのは好きか?」
    杏寿郎さんは、その場にあぐらをかいて座る。「おいで。冷えないように、ここに座ると良い」と、あぐらをかいた足をポンポンと軽く叩いた。私がちょこんと座ると、後ろからがっしりとした腕に捕まえられた。

    「ガル子。あの一際明るく光る星は何か知っているか?」
    「えっと…分かりません」
    「宵の明星と言うんだ。夕方、ちょうど今のような時間帯に見える明るい星だ。いつも任務に向かう時にはあの星を見て、気持ちを奮い立たせているんだ。鬼を倒して、必ずまた帰ってこようと、な。」
    耳元で聞こえるその声は、力強く、そして温かい声だった。

    「でも、宵の明星はいつでも見えるわけじゃないんだ。一度見えなくなると数ヶ月は見えない。そんな時は夕空を見て、守りたい人たちのことを思い浮かべるんだ。たくさんの命。これからは特に、君のことが思い浮かぶだろうな。」
    そういって杏寿郎さんは後ろから私の手をぎゅっと握った。
    私もその手をキュッと握り返す。

    わずかに橙色を山の端に縁取った群青の空には、一等明るい宵の明星が一粒の宝石のように輝いていた。星はまっすぐに嘘のない光を放っていて、私の心を見透かすかのようだ。

    私は……こんな綺麗な宵の明星なわけがない。地味で目立たない小さな星だ。

    宵の明星が、しばらくしたら見えなくなるなんて──杏寿郎さんの心の中から私が消えていくということを示唆しているような気がして、また胸が苦しくなった。

    つづく

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  • 8811. 匿名 2024/04/28(日) 21:26:19 

    >>8779
    ガル子さんに感情移入して、読みながら胸を締め付けられるような気持ちになるけれど、ここから物語がどう動くのか目が離せません!

    +19

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  • 8843. 匿名 2024/04/28(日) 21:46:52 

    >>8779
    ほれぐすり🔥⑥
    ⚠大正軸の煉獄さん ⚠解釈違いに注意 ⚠⚠濃😘あり

    私たちは空が夜を纏っていくのを、静かに眺めていた。ちらっと顔を後ろに向けると、杏寿郎さんと目が合った。
    「ふふっ。ガル子、こっちを向いて。」
    「は、はい…」
    私は言われるがまま、体ごと向きを変え、横向きに炎柱のあぐらに座った。
    「………。今夜の君はいつにも増して色っぽいな。」と、杏寿郎さんは私の頬にかかる黒髪を、手でかきあげて頬を撫でる。
    髪を下ろして杏寿郎さんと会うのは初めてだった。杏寿郎さんは、惚れ薬を飲んだあの時のような熱を帯びた目をしている。炎柱は私の頬を撫でながら言った。
    「目を瞑って」
    私は戸惑いながらも、それに従って目を閉じる。杏寿郎さんの顔が近づいて来るのが、わずかに感じる熱でわかる。私は唇にキュッと力を入れた。
    首筋に両手がかけられて、何か冷たいものが当たる。
    「ガル子、目を開けてごらん」
    見ると、首飾りが首にかけられていた。
    「あ…」
    「うむ、やはりとても似合っている。急いでここに来たのは、これを渡したかったからなんだ。」
    金色の華奢な鎖、そこに花をモチーフにした白い花びら型の大ぶりの飾りが付いている。その横には小ぶりの薄紫色の宝石の飾りもついていた。
    「うわぁ綺麗…。このような高価なもの…いいのでしょうか」
    「うむ。大好きな君の為に、随分時間をかけて選んだのだぞ」 
    「杏寿郎さん。本当に、ありがとうございます。」
    「しかし……ガル子?いま目を瞑った時、何か違う事を考えていなかったか?」
    「えっ!い、いえ。違いますっ!そんなことは…!」
    私は頬を赤く染めてぶんぶんと首を振る。
    「ふっ。可愛いくてたまらないな」
    動揺している私に、杏寿郎さんは不意打ちのように柔らかな唇を触れされた。
    あっ……
    びっくりして真っ赤になり固まってしまった私をみて、炎柱は眉を下げて微笑むと、次第にその視線が雄々しく光り、呼吸が荒くなる。
    「すまない。ガル子、もう……我慢ができない…」
    と、私の後頭部を抑えて顔をちかづけると先程よりも深く口づけをする。身も心も熱くなってとろけるような初めての感覚だった。私の中の大好きが溢れ出してしまう。

    だめだ、これ以上は絶対に──。惚れ薬を使ってこんな事をしてはいけない。

    私が顔を背けて避けるように唇を離すと、杏寿郎さんがこちらをみた。
    「あの、もう杏寿郎さんとは会えないです。私のこと、忘れて下さいませんか。」
    そう言ったとき、私の頬に一粒の涙が伝った。
    「よもや!すまない!急にこのようなこと、嫌だったに違いあるまい」
    「いえ」私は大きく首を振った。
    「私は杏寿郎さんが思っているような人間ではありません。近づかなかいほうがいいです」 
    「何を言っているのだ、ガル子。君はとても素敵な人だ。」
    「杏寿郎さん……。実は私、とてもいけないことをしてしまったのです。あなたを、騙しているのです」
    「むう?どういうことだ?」
    「そのうちわかります。きっと私のことは嫌いになります」
    「そんなはずがないだろう。」と、少し不思議そうな顔をしている。
    私は、震えながら声を絞り出して言った。
    「杏寿郎さんは、〝惚れ薬〟を飲んで、私を好きになってしまったんです。」
    「惚れ……薬?」
    炎柱は、驚いた顔をして固まってしまった。

    つづく   (更新が遅くてすいません🙇‍♀ゆっくりペースになりますが、頑張ります!コメントありがとうございます✨)

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