ガールズちゃんねる
  • 9045. 匿名 2024/04/29(月) 00:39:18 

    >>8697観覧車🪓⚠️

    がたんと大きく音を立ててゆっくりとゴンドラが動き出す。
    3回目のデートで二人きりになれる観覧車に乗るなんて……。これはもうアレですよねぇ、と一人にやつく。てっぺんでキスするフラグが立ちまくってるじゃないですか。
    いや、乗ろうって誘ったのは私なんだけど。それに――とちらりと彼を見ると、前屈みになって俯いている。ただでさえ気難しい顔が顰められて、ちょっと怖いくらいだ。
    「……ね、どうしたの?」
    恐る恐る尋ねると「別に」とそっけない言葉が返って来た。いやいや。どう見たって「別に」って顔じゃない。
    何よ、せっかくのデートなのに。だんだん腹が立ってきた私は彼の顔を覗き込む。
    「ねぇ、何で機嫌悪いの?」
    彼は「はぁー」と深くため息を吐いた後、諦めたように言った。
    「……苦手なんだよ、高いとこ」
    「…………え?」
    ……苦手?……高いとこ?
    「え――――っ!」
    「うるせー」
    「やだ!早く言ってよ!っていうか乗る前に言いなよね!?もーどうすんの!」
    おろおろとスマホを取り出す。観覧車はまだ動き始めたばかり。この観覧車は確か一周10分強だったはず。
    「……ということはまだあと8分半はあるのか」
    「絶望的な事言うなよ、オイ」
    「いや、事実は明確しておいた方がいいかと思って」
    彼が青い顔をして苦笑いするので、いよいよ心配になって来る。
    「あっそうだ」
    私は羽織っていシャツを脱ぐと彼の頭からふわりとかけた。
    「外、見えなきゃ少しはマシじゃない?」
    顔を覗き込んでそう囁く。彼はびっくりしたみたいに瞬きを繰り返して、ふっと目を細めた。
    「……ん、そうだな」
    ほっと胸を撫でおろしたところで、彼がこちらに手を伸ばしてくる。
    「……どうしたの?」
    首傾げる私の肩を掴んで軽く引き寄せると、そっと唇を重ねた。あっという間の出来事に全然頭が追いつかなくて、ぽかんと彼を見つめる。
    ようやく状況を理解すると、途端に恥ずかしくなってたまらず目を伏せた。
    「……こんなことする余裕あるの」
    「おかげさまで」と笑った顔はさっきほど青くない。
    「もうっ…、あっ、ねぇもうすぐてっぺんだよ」
    「……言うなよなぁ」
    げんなりした顔で呟く彼に声を立てて笑う。彼も少し笑って「じゃあ」と囁きながら顔を寄せた。
    「てっぺんについたらもう一回」
    甘えるみたいな声が可愛くて、自然と口元が緩む。でも可愛いなんて言ったら絶対怒るだろうなぁ。
    そんなことを考えながら、目を閉じでてっぺんを待つ。

    おわり

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