ガールズちゃんねる
  • 8383. 匿名 2024/04/27(土) 18:52:14 

    >>8381 『パリ・マジック』 第20話 ⚠️解釈違い🐍/連載回数未定/己の趣味に全振り/何でも許せる方向け

    シャッターを切る音に振り向くと、カメラの影から小芭内くんの今日一番の優しい笑顔が私を見ていた。
    「凄く良い顔をしている」
    もう一枚、彼が私をカメラに収める。何故だかまた無性に泣きたくなって、溢れ出しそうな涙を堪えて、精一杯の笑顔を彼に向けた。
    小芭内くんが首元の鏑丸を抱き上げ、私の肩にそっと降ろす。
    「鏑丸を撫でてみたいと、応募メールに書いてあった」首を傾げて、覗き込むように私を見ながら彼が言った。
    (ちゃんと読んでくれた上に、覚えててくれたんだ───)胸がじわりと熱くなり、また鼻がつんとする。
    鏑丸がしゅるしゅると私の首に巻きついた。ガーネットみたいに綺麗な瞳で私を見つめる鏑丸が、鼻先に擦り寄り赤い舌でちょろっと舐める。嬉しくて思わず声を上げた。白くて滑らかな身体を撫でていると、またシャッター音が鳴る。とびっきりの笑顔で、鏑丸とのツーショットを撮ってもらった。
    彼の手からカメラを受け取り、私も彼に向かってまたシャッターを切る。首元から降りた鏑丸が腕を伝って小芭内くんの元に戻って行く時、私と彼の手が触れ合った。そこをしゅるりと伝って戻る鏑丸と、鏑丸を見つめる優しい表情の小芭内くんの姿も撮った。
    優しくて穏やかで、この上なく綺麗な彼の笑顔をまた何枚も手に入れて、私の心が苦しい程に切なくなる。例え数えきれない程にたくさんの写真を手に入れても、決して手に入らない彼の笑顔───。撮れば撮る程に涙が溢れそうになる大好きな彼の笑顔をまたカメラに閉じ込めて、精一杯の笑顔を向けて彼の手を取った。
    「行こう───時間、無くなる前に」
    「あぁ」
    小芭内くんが私の手をぎゅっと握り返す。
    坂道を転げ落ちないように気をつけながら、アベス駅まで早足気味で歩いた。12番線に乗り込んで、コンコルド駅で1番線に乗り換える。シャルル・ド・ゴール・エトワール駅で降りて地上へ出ると、堂々たる凱旋門が私達を出迎えた。
    凱旋門を背景に、それを見上げる小芭内くんたちの後ろ姿を撮る。
    「ごめん!1分だけもらっていい?」
    「勿論。どうした?」
    「ちょっとだけお買い物」
    凱旋門に向かう途中で見つけた花を売るキオスクで、優しい色合いをしたピンクのチューリップを1本、急いで買った。それをショルダーバッグの外ポケットに挿し込んで、小芭内くんの手を取り、凱旋門へと急いだ。
    「……横断歩道が無い」
    目を丸くして驚いたような表情で、彼が私を見て言った。
    「凱旋門へは地上からは行けないの。ぐるっと周り全部がラウンドアバウトになってるから。地下から行くよ」
    ほぉと目を見開いて、彼が凱旋門へと視線を戻した。小芭内くんの手を引きながら、凱旋門の真下へと繋がる地下道に入る。脚を早めて薄暗い地下道を進んで行った。
    (───あと30分…)
    凱旋門を下からもじっくり見せてあげたいし、それから展望台に登って、パリを見渡して…ほんとにギリギリだ。
    「ごめんね、後半ずっと急ぎ足になっちゃって。しんどくない?」
    「大丈夫。君こそ疲れただろう?すまない、俺が欲張って色々挙げたから…」
    「大丈夫だよ。凄く楽しんじゃってるから。小芭内くんに見てもらいたいものがありすぎて、私こそ欲張って詰め込み過ぎたかも。ごめん」
    「俺も楽しい。もっと時間があったらよかったのにな」
    「ほんとだね」
    地下道から出て辿り着いた先に出現した大きな凱旋門を三人で見上げた。

    (つづく)
    連投失礼しました。こんな駄文ですのに、プラスやコメントくださる方がいらして嬉しいです。今日もお読みくださった方々、ありがとうございました。

    +31

    -11

  • 8389. 匿名 2024/04/27(土) 19:26:14 

    >>8383
    旅行の終わりってそれだけで寂しくなるのに、大好きな小芭内くんとの時間もどんどん終わりに近付いてるガル子ちゃんの切なさが伝わって、こちらも切ない😢
    切なさと夕暮れのパリの綺麗な景色のコントラストで、胸が苦しい😣
    続きも楽しみに待っています

    +25

    -6

  • 8393. 匿名 2024/04/27(土) 19:55:52 

    >>8383
    更新ありがとうございました♡今夜も読ませていただきありがとうございます🙇‍♀
    別れの予兆に胸が痛みますが、夕暮れのパリの街並みはさぞかし美しいんだろうな…と思いました。
    続きも見守りたいと思います。

    +20

    -6

  • 8409. 匿名 2024/04/27(土) 20:20:49 

    >>8383
    更新ありがとうございます。ルーブルもオルセーもモンマルトルも大好きなので、一緒にパリの街を回っているかのような詳細な描写と2人の心情の描き方が、とても臨場感があって楽しませてもらっています。
    もうすぐ時間がきちゃうんですね🥲寂しいけど2人がどんなふうにデートを締めくくるのか、見届けたいと思います。

    +21

    -5

  • 9603. 匿名 2024/04/30(火) 13:30:24 

    >>8383
    ⚠️🐢
    読んでます
    美しく切なく…素敵な旅をいつまでも読んでいたいです

    +20

    -5

  • 9694. 匿名 2024/04/30(火) 17:49:26 

    >>8383 リアル鬼滅メンズと一日デート企画 『パリ・マジック』 第21話 ⚠️解釈違い🐍/己の趣味に全振り/何でも許せる方向け

    「───こんなに大きいのか…」
    綺麗な目を大きく見開いて、小芭内くんが驚きの表情を浮かべて凱旋門を見上げている。鏑丸がちろちろと赤い舌を出して、彼の耳元で何かを囁いた。彼らが見上げる先の勝利の門を背景に、二人の姿を足元から仰ぐ角度でカメラに収める。せっかくなので、綺麗な横顔もまた撮った。
    「正式名はエトワール凱旋門。エトワールはフランス語で"星"って意味。凱旋門を中心に、12本の道路が星が放つ光みたいに放射状に伸びてるからそう呼ばれてるの。この一番華やかで大きい道路がシャンゼリゼ通り」
    「ネーミングがロマンティックだな」
    「そうだね。本体は高さ50㍍、横幅45㍍もあってどデカいけど」
    「そんなに…物凄い存在感なのも納得だな」
    「周りに大きな建物が無いから、余計に大きく感じるよね。ナポレオンがロシアとオーストリア連合軍に勝利した記念に建てたけど、完成時にナポレオンはもう亡くなってて、棺に入って凱旋したの」
    「なんだか切ないな」
    寂しげに呟く彼にふふっと笑いかける。アーチ型の天井を見上げ、精巧な細工に目を凝らしてため息を吐く小芭内くんの姿をまたカメラに収めた。ふと彼が足元の墓標に目を落とす。
    「───これは?」
    「『無名戦士の墓』って呼ばれてる。第一次世界大戦で命を落とした身元不明の兵士のひとりでね、大勢の無名の兵士達を追悼する代表者としてここで眠ってるの。フランス軍の勝利記念の門の下に、フランス繁栄のために命を捧げた人が眠ってるって、なんか凄いよね」
    無名戦士の墓に、先程キオスクで買ったピンクのチューリップを捧げて黙祷した。
    「あぁ───言葉がうまく出てこないな…」
    慈しむような優しい眼差しで墓標を見つめる彼に、またカメラを向けた。
    凱旋門の壁面に施された見事なレリーフを眺めながらぐるっと一周し、それから展望台へ登る入口へと向かう。事前にネット購入しておいたチケットコードを翳して、すぐに中に入った。
    「展望台までの50㍍、ずっと螺旋階段だけど頑張ってね」
    「承知した」
    「一気に行くよ。5分くらいで上に着くから」
    「あぁ」
    薄暗い室内でもなんとか撮れるであろう、手持ちで一番明るいレンズに急いで交換した。ぐるぐる回る螺旋階段を彼の手を引きながら登って行く。たまに振り返って、幾度となくシャッターを切った。ブレブレの写真ばかりかもしれないけど、時間に余裕が無いのも分かっていたけど、最後のギリギリまで彼の姿を捉えたかった。
    (───残り時間、あとちょっと…)
    少し息を切らしながら私に向ける彼の笑顔が、私の胸をより一層締め付ける。私も頑張って笑顔を向けて、こっそりと唇を噛み締めながら螺旋階段の末方を見据えた。息を切らして展望台に飛び出すと視界が一気に開け、吹き抜けて行く風と共に360度のパリのパノラマが目に飛び込んできた。
    「───凄い…」
    目を見開き、ため息を漏らして、小芭内くんが展望台の手摺りにゆっくりと歩み寄った。私ほどではないけれど、彼も肩で息をしている。彼らの綺麗な瞳の前には、凱旋門を中心に放射状に延びる何本もの大きな道路。地上から見ても分からない、特別な景色────。
    まるで、ここがパリの中心であるかのような印象的な光景を、彼の隣に立って目に焼き付けた。
    「綺麗だな」
    「うん…」
    その時、小芭内くんのバッグの中でアラームが鳴った。
    (あぁ───終わっちゃった…)
    デート企画の終わりを告げるアラーム音が、やたらと機械的に虚しく響く。バッグから取り出したスマホのアラームを、彼が止めてこちらを見た。左右で色の違う瞳が、少しだけ寂しそうに歪んで見えたのは気のせいだろうか。包み込むように優しくてあったかい視線を私に寄越し、少し首を傾げて彼がふっと微笑んだ。
    「最後にもう一枚、撮ってもいい?」
    「いいよ」
    凱旋門の上で、間もなく夕暮れを迎えそうな空を背景に、エッフェル塔とパリの街並みを入れた構図でシャッターを切る。
    ファインダーから覗く視界がぼやけそうになるのを感じて、慌てて彼に背を向けた。撮ったデータを確認するふりをしながらこっそりと目元を拭う。なんとか精一杯の笑顔を作って、彼の方を振り返った。

    (つづく)

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