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8176. 匿名 2024/04/27(土) 00:56:11
>>8175 ⚠️🐚 ⚠️悪 ⚠️闇 ⚠️病み
『Complete』2/2
……私、どこで間違えちゃったんだろう。
自分の武器を自分で理解している男ほどタチの悪いものはないのに。
これは、洞察と距離感を誤った私のミスだ──。
「ねぇ、君の彼氏はどんなヤツなの? 君を大事にしてくれてる? 君をどんな風に抱くのかなぁ。……あぁ、別に思い出さなくていいよ。どうせ忘れるんだから──」
囁く彼の吐息が耳朶をくすぐる。
その熱さにこれから起こることを予感させられ、全身が粟立つのが分かった。
その碧い瞳に魅入られる。
視線・言葉・感情──彼から私に向けられる全てに搦め捕られてしまう。
人間の身体というのは柔軟なもので、初めは受け入れ難かった行為にも次第に慣れていく。
自分の抱き方を刷り込ませるかのように、それは何度も何度も繰り返された。
……こんなの知りたくなかった。
私の身体にあなたを覚えさせないで。
一度でも知ってしまえば離れられなくなる。
欲しくてたまらなくなる。
まるで、中毒みたいに──。
与えられる感覚の一方で、自分が踏み躙った物を思うと心が悲鳴を上げそうだった。
逃げ出したい、その一心で伸ばした手が宙を彷徨う。
なのに辿り着いたのは、私を捕らえている張本人であるはずの彼の背中。
長い髪ごと両腕で抱え込み、少しだけ力を込めて爪を立てると、彼が口の端を持ち上げるのが見えた。
額に汗を滲ませ、悩ましげに眉根を寄せた顔ですら美しいのが憎らしかった。
けれども一番憎いのは、許しを乞うより先に彼に応えてしまった自分かもしれない。
そしてこの美しい顔を歪ませているのが自分だと思うと、肚の底で愉悦と思しき感情が湧き上がるのが分かった。
禁忌の扉の先にある果実が甘いということを知ってはいたけれど、自らそれを口にしようと思ったことは一度も無かった。
しかし扉は向こう側から開けられ、私を中へと引き摺り込んだ。
無理矢理口に押し込まれたもの──それは裏切りの味。
噎せ返るほど甘く熟れたその香りに当てられ、理性は静かにその機能を停止させる。
──そして、上書きは完了する。
壊れる。
壊れていく。
私の大切なものが、壊されていく。
そして、私が。
とっくに壊れているあなたの手で──。
終+27
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