ガールズちゃんねる
  • 8175. 匿名 2024/04/27(土) 00:55:05 

    >>783闇・病み >>7098上書き
    ⚠️🐚 ⚠️悪 ⚠️闇 ⚠️病み

    『Complete』1/2

    その人は友人の恋人だった。
    ちょっといないくらいの美形で男性にしては珍しい長い髪のせいか、近寄り難い雰囲気の持ち主で。
    こういう顔の整った男の人には何となく苦手意識があったのだけど、友達の彼氏ということで“そういう対象”にはならないという安心感からか、打ち解けるのにそう時間はかからなかった。
    紳士的で話していてとても楽しく、彼とも良い友人付き合いが出来そうだと感じていた。
    けれども、そう思っていたのは私だけだったみたい──。

    まもなく私の誕生日という日。
    誕生日当日は彼氏に祝ってもらうだろうからと、気を利かせた友人カップルが少し早めの誕生祝いということで3人での食事会をセッティングしてくれた。
    彼のチョイスだというお店はホテルの上層階にあり、なかなか予約がとれないビュッフェ形式のディナーが人気の所だった。
    ところが当日になって、友人から突然残業になってしまったとの連絡が入った。
    勿体無いから二人で行って──彼女のその言葉に甘えて彼と食事をしただけなのに、どうして私は今、知らない部屋のベッドの上で彼から見下ろされているの?

    レストランでの終盤の記憶が無かった。
    彼にすすめられた口当たりのいい甘いお酒を気に入って何度かおかわりしたけど、もしかしてそれのせい?
    アルコールには弱くない方だと思っていたのに。
    仄明るい空間を作り出している間接照明が彼の肩越しに見え、内装の様子からここがホテルの一室であることが見て取れた。
    酔った私を介抱する為に連れてきたのではないということもさすがに分かった。
    だって百歩譲って私を脱がせたとしても、彼まで脱ぐ必要はないから──。

    「たとえ彼女が許可したことでも、二人きりで会った時点で君も同罪だよね。その気があったと思われても仕方ないよ」
    私の髪を一房掴み、それを指で弄びながら悪びれる様子もなく言う。
    そうやって私から罪悪感を引きずり出そうとするから狡い。
    彼女の厚意を無駄にしたくない、ただそれだけだったのに、そんなことを言われると自分が悪かったという気になってしまう。
    この人の巧みな話術で楽しい時間を過ごしてきたのも事実だけど、今はそれによって足を掬われそうだった。

    「彼女も彼女だと思わない? いくら友達でも他の女と自分の彼氏を二人で会わすなんてさ。よっぽど君を信頼してるんだね。僕なら考えられないよ。君が……君に彼氏がいることすら許せないくらいなのに」
    信頼──その言葉が突き刺さる。
    裏切るつもりなんて無かった。
    彼女も、彼氏のことも。

    私は朦朧とした頭で彼に問う。
    「彼女のこと……好きじゃないの……?」
    「僕は、最初から君のことしか見ていなかったよ」
    「どういう、こと……?」
    「彼氏のいる君に警戒されずに近付くには一番いい方法だと思ったんだ。正攻法が難しそうな場合にはね」
    何を言っているの?
    まさか、その為に彼女に近付いたの?
    「ひどい……」
    思わずこぼれた私の言葉に、彼は意外そうな顔をする。
    「ひどい? この程度が? こんなのよくある手でしょ。黙って待ってるだけじゃ欲しい物は手に入らないんだし。……君ってさ、そういう所ほんと可愛いよね。だから君のこと、欲しくてたまらないんだ──」
    私の頬に手を添えて慈しむように見つめてくるその目はどこか虚ろで、本当に私を見ているのかどうかも分からなかった。


    つづく

    +23

    -20

  • 8176. 匿名 2024/04/27(土) 00:56:11 

    >>8175 ⚠️🐚 ⚠️悪  ⚠️闇 ⚠️病み

    『Complete』2/2

    ……私、どこで間違えちゃったんだろう。
    自分の武器を自分で理解している男ほどタチの悪いものはないのに。
    これは、洞察と距離感を誤った私のミスだ──。
    「ねぇ、君の彼氏はどんなヤツなの? 君を大事にしてくれてる? 君をどんな風に抱くのかなぁ。……あぁ、別に思い出さなくていいよ。どうせ忘れるんだから──」
    囁く彼の吐息が耳朶をくすぐる。
    その熱さにこれから起こることを予感させられ、全身が粟立つのが分かった。

    その碧い瞳に魅入られる。
    視線・言葉・感情──彼から私に向けられる全てに搦め捕られてしまう。
    人間の身体というのは柔軟なもので、初めは受け入れ難かった行為にも次第に慣れていく。
    自分の抱き方を刷り込ませるかのように、それは何度も何度も繰り返された。
    ……こんなの知りたくなかった。
    私の身体にあなたを覚えさせないで。
    一度でも知ってしまえば離れられなくなる。
    欲しくてたまらなくなる。
    まるで、中毒みたいに──。

    与えられる感覚の一方で、自分が踏み躙った物を思うと心が悲鳴を上げそうだった。
    逃げ出したい、その一心で伸ばした手が宙を彷徨う。
    なのに辿り着いたのは、私を捕らえている張本人であるはずの彼の背中。
    長い髪ごと両腕で抱え込み、少しだけ力を込めて爪を立てると、彼が口の端を持ち上げるのが見えた。
    額に汗を滲ませ、悩ましげに眉根を寄せた顔ですら美しいのが憎らしかった。
    けれども一番憎いのは、許しを乞うより先に彼に応えてしまった自分かもしれない。

    そしてこの美しい顔を歪ませているのが自分だと思うと、肚の底で愉悦と思しき感情が湧き上がるのが分かった。

    禁忌の扉の先にある果実が甘いということを知ってはいたけれど、自らそれを口にしようと思ったことは一度も無かった。
    しかし扉は向こう側から開けられ、私を中へと引き摺り込んだ。
    無理矢理口に押し込まれたもの──それは裏切りの味。
    噎せ返るほど甘く熟れたその香りに当てられ、理性は静かにその機能を停止させる。

    ──そして、上書きは完了する。

    壊れる。
    壊れていく。
    私の大切なものが、壊されていく。

    そして、私が。


    とっくに壊れているあなたの手で──。



    +27

    -20

  • 13551. 匿名 2024/05/07(火) 09:01:36 

    >>13462
    🌫まとめの場をありがとうございます。
    ここにあるのは全て、むいくん推しの私の解釈によるむいくんのお話です。

    【長文・SS】
    >>724 帰宅困難シンデレラ
    >>1201ご奉仕させて!(全3話)⚠️🐚
    >>2167推しの第二ボタンを奪え
    >>2315最初の夜、最後の恋を君と
        (全12話)⚠️🐚
    >>3978キスまで何cm?
    >>4302捕食(全3話)⚠️🐚
    >>6102僕しか知らない君の香り⚠️🐚
    >>7575後朝⚠️🐚
    >>8175Complete(全2話)⚠️⚠️⚠️⚠️🐚
    >>8236借り物競走
    >>9061いちごショート🍓
    >>10333祈り

    【ガヤ、一言、お題回答等】※一部抜粋
    >>690 便利屋🪓
    >>1900ミャクミャク
    >>1958推しの車
    >>4018彼トピ写真館
    >>4963彼トピあるある
    >>7992歯科検診
    >>8282北島三郎🎲
    >>8293推しの部活
    >>9281小室系🍉
    >>12134 >>12177子供の日
    >>13401Janne Da Arc

    【bokete回答】
    >>3289 >>3407 >>3468 >>12298

    Part15のまとめは12727です。
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    前回の「次トピで書いてみたいお話」というお題に「推しにメイド服を着せる話を書いてみたい」という回答をしていたので、それは有言実行できて良かったです🤭
    今回はまとめをしない前提で参加していたので、そんな己の性癖に全振りしたような暴走妄想をメインに投下していました。

    しかし、ここに来る度にトピ画のむいくんが「せっかくトピ主になったのに君は何の爪痕も残さないの?」と訴えかけてくるので、思い直して記録というか記念としてまとめることにしたという経緯があります。お話で爪痕は残すのは難しいので、せめてまとめだけでも……ということで。
    むいくん二度目なのにごめんよー🥺💦と思いながらも、トピに来れば推しが出迎えてくれて、それが自らの手によるものだということはとても幸せな体験でした。

    時間を割いて読んでいただいた全ての方に感謝します。評価・コメントありがとうございました。\( *´ω`* )/ウレシカッタヨ♪
    ではでは、フィナーレと柱稽古編に向けてまだまだ盛り上げて行きましょう♪🤗💕

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