ガールズちゃんねる
  • 7192. 匿名 2024/04/24(水) 21:57:44 

    >>4162一緒にいたい🍃
    ⚠️解釈違い

    川沿いの桜並木は葉桜とはいかないまでもすでにところどころ緑の新芽が目立ち始めていた。
    お花見に一番良い時期は終わっていたけどわたしはすこぶる機嫌がいい。若葉混じりの桜はこれはこれできれいだし、人が少ないのをいいことに悪戯心で手を繋いでみたら、意外にも実弥はニヤッと笑っただけで振り解かなかったから。あのぶっきらぼうで照れ屋な“風柱様”が。人差し指を引っ掛けただけだけど。それでもわたしはこのうえなく上機嫌だった。
    「2人で見る最後の桜だね」
    わたしの言葉に実弥は笑いながら「なんか物騒な言い方だなァ」と言って頭上を仰いだ。
    物騒だけど事実だ。来年にはこの繋いだ手の間にもう1人増えるのだから。
    鬼がいなくなってもうすぐ3年、やっと来てくれた新しい命。
    帯のすぐ下はまだ真っ平らだけど、ここに小さな命が息づいているのだと思うと言葉にできないくらいの幸せが込み上げてくる。

    川を渡る風が冷たくなってきた。
    満開を過ぎた桜はもろく、枝が揺れるたびに崩れて降るように散っていく。散る時でもきれいだな、と見上げるわたしの肩に実弥が隣からショールをかけてくれる。
    「寒ィだろ、着てろォ」
    最近実弥はだいぶ過保護になって、体を冷やすなとか重いものを持つなとかこまごまと気を遣ってくれるようになった。もちろん嬉しいけど、あんまり心配ばかりさせたくない。
    「今年は遅くなっちゃったけど、来年は満開に合わせて、3人で来ようね」
    陽が落ちたらもっと寒くなる。早く帰ってあったかいものでも食べて、ふたりで丸くなって眠ろう。
    だけど実弥はショールごとわたしの肩を抱いて黙ったまま動かない。あれと思って顔をうかがうと、ちょっとドキッとするような、憂いを含んだ表情でわたしを見ている。
    「実弥……? どうしたの?」
    どうしてそんな、泣き笑いみたいな顔をしてるんだろう。
    答えるかわりに実弥は右手を伸ばしてわたしのおなかをそっと撫でた。
    「心配ねェよ、ただ……もう少し一緒に居てェんだ」
    肩を抱く腕の力がぎゅっと強くなった。珍しく甘えてこられて少し照れる。そういえばこのところふとした時に切なげな顔をすることも増えた。辛い状況で身内を失っている人だから色々思うところがあるんだろうか。
    こういう時は寄り添ってそばにいるのが一番いい薬なんだと、言われた訳じゃなくてもわかる。
    気持ち寄りかかるように体重を預けると、おなかから持ち上がった手がわたしの手を取り彼の顔に触れさせた。頰っぺたと大きな手に挟まれて、冷えた指先がやわらかく解けていく。
    「もう少しだけ、一緒に居てェんだ」
    「……うん。ずっと一緒にいるよ」
    この幸せなあたたかさも、かみしめるように繰り返された言葉も、わたしはきっと一生忘れないだろう。

    +37

    -10

  • 7198. 匿名 2024/04/24(水) 22:02:52 

    >>7192
    最初はキュンとして途中でえっと切なくなり読み進めると…な展開がすごく好きなお話です‼︎
    読ませて頂きありがとうございました♡

    +19

    -3

  • 7201. 匿名 2024/04/24(水) 22:04:54 

    >>7192
    上手く感想を言えないのでこれだけでも
    好きです!!

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    -0

  • 7206. 匿名 2024/04/24(水) 22:08:49 

    >>7192
    なんだかすごく家族の幸せが感じられるお話で、とても心があったかくなりました♡身体のこと気遣ってくれるのすごく優しいです。素敵なお話をありがとうございました。

    +24

    -0

  • 7217. 匿名 2024/04/24(水) 22:14:26 

    >>7192
    ラストの言葉が沁みて泣きそう…悲しい、けど温かい気持ちにもなる。好きです。

    +18

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  • 16935. 匿名 2024/05/12(日) 08:34:29 

    >>13462まとめお借りします
    ⚠️解釈違い

    不死川実弥
    >>1266 桜随筆
    >>4780 あの扉絵の話
    >>4926 風薫る
    >>7192 もう少し
    >>12066 柱稽古の後
    >>12773 死合わせ
    >>15467 掻乱

    煉獄さん
    >>3772 窮鼠と黒猫
    おたおめ続編間に合いませんで死た!

    久しぶりの参加で楽しかったです、投下少ない&無風オブ無風の身で図々しくもまとめさせて貰いました、何故なら楽しかったから!!
    なんだかんだありますが、楽しかったからですね。み〜て〜ってしたかったんです。
    変わり映えもアイコンになるようなハジけた特徴もなく、なんとなくやっぱ場違いかもナァ〜と思いつつ(そんなことないよ待ちではないw)「何処かの誰かが楽しんでくれた」がやんわり伝わるのが楽しいんです、甘えさせてもらってるんです。
    風向きは肌感でオノレが一番よく分かってますが、ちょっと隅っこお借りして顔を出したり引っ込めたりしてますのでをおゆるしを…
    これにて御免、コメント・プラスくださった方には最敬礼で御礼申し上げ奉り候!!
    同担、ついにアニメだぞ一緒に死のうな♡
    お疲れ様でした🥹

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