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6412. 匿名 2024/04/23(火) 13:36:28
>>593
【マニアックお題】
サン・ジョルディの日+12
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12654. 匿名 2024/05/06(月) 05:35:28
>>6412 サン・ジョルディ、>>7098 上書き、>>4851 トラウマ
⚠解釈 🕶さん、特殊部隊時代。ガル子も別の管轄の捜査官で、たまたま共同捜査していた設定。二人は恋人。ガル子がシリアルキラーに捕まってる。書きたいとこが書けなかった(時間切れ)。
あぁ…とうとう明日は私の番だ。
あの日、薄れゆく意識の中で送信した情報は、チームに届いただろうか。いや、届いたと信じるんだ。希望を捨てたら心が折れてしまう。私は、渋い顔でメールを読む彼の顔を思い浮かべた。
隣の部屋のテレビ──時間を知るための唯一の手段だ──からアナウンサーがほがらかな声で朝の訪れを告げた、その時だった。
扉を蹴破る音と怒号が聞こえた。
安堵のあまり、口から変な笑い声が漏れる。体が勝手に動こうとするほど馴染み深い一連の流れを、まさかこちら側から聞くことになるとは。
大丈夫。
もうすぐだ。
あとちょっと。あと…
光の中から彼が現れた。
数日間暗闇に閉じ込められていた私の瞳は、突然差し込まれた光で恐慌状態となった。目をシパシパさせる私をよそに、彼は私の手足に繋がれた鎖をガチャンと切断する。彼の肩を借りて部屋を出ると、うつ伏せになって頭の後ろで手を組む男の姿が目に入った。男の周りに散らばる大輪の薔薇が、一瞬血溜まりのように見えてゾワリとした。
怒涛の聴取とその間に捩じ込まれる治療を乗り越え、やっと一人きりになれたとほっとしたのも束の間。病室のドアがそろりと開いた。
「まだ何か?」
おっと…うんざりした気持ちが声に出てしまった。
「様子を見に来た」
扉の隙間から覗いた顔に、笑みがこぼれた。
「なんだ、あなたか。また管が増えるのかと思った」
私は点滴に繋がれた腕を持ち上げて見せる。彼は私の様子に苦笑しながら、ベッド脇のパイプ椅子に腰掛けた。
「触れても…良いだろうか」
出動の後いつもそうなるような掠れた声が、密やかに問いかける。私は頷いた。
「あいつに負けたくない。あなたで上書きして」
調書を念入りに読んだのだろう。私の中に存在する恐怖を刺激しないように、彼の手がゆっくりと近づいてくる。
パイプ椅子がギシッと鳴った。
逃げ出しそうになる体をギュッと抑える。
目を閉じてはいけない。この手は私を救ってくれた手だ。間違ってはいけない。目を閉じてはいけない!
彼の手が止まった。
「お前から触れてくれ」
私は自由な方の手を恐る恐る伸ばし、彼のゴツゴツした手に触れた。
「…あなたの手だ」
(書けなかった部分)
いつの間にか、私は彼に抱きしめられていた。「生きていて良かった…」と、彼が呟く。
傷に障らないようにするためだろうその極めて軽い抱擁が、初めてのデートを思い起こさせた。
薔薇の花を持ってうちの玄関に立っていた彼。だけどうちには花瓶が無くて、ちょうどいい器を見つけようと二人で右往左往したっけ。そうこうするうちに私に呼び出しがかかって。最後に少しだけ抱き合って、その日はお流れに…ビーッ…ビーッ…
「呼び出しだ」
彼はメッセージをチェックしながら、心配そうにこちらを見た。
「私は一人で大丈夫。早く行って」
「あっ、そうだ」
私は扉に手を伸ばす彼を呼び止めた。
「退院したら、薔薇を贈ってくれる?」
扉が閉じた瞬間震え始めた手を、私は強く握りしめた。
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