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5488. 匿名 2024/04/21(日) 21:48:33
>>5479 桜 悲恋 ⚠️🌊 2/2
来年もまた一緒に桜を見れたらいいね、と彼女は言った。
「それは…約束出来ない」
あの時、なぜあんなふうに答えてしまったのだろう。いや、当然だ。鬼狩りをしている以上、明日の命の保証は無い。守れないかもしれない約束をするのはかえって酷だろうと思ったのだ。でも、ふと思う。もしあの時、約束していたら今年も一緒に見れたのだろうか。
約束出来ない、と言った俺を見て悲しそうに微笑んだ。
それが、"彼女を見た最後"になった。
「───桜蕊降る、だったか」
「あともう少し───」
「丁度今頃なんだろう?」
「……?」
「…血のような、赤紫色の萼が散るんだろう?」
「貴方は……誰?」
腰の日輪刀をゆっくりと抜いた。
いちばん、刃を向けたくなかった人に対して。
「俺は、───鬼狩りだ」
"義勇さん"
彼女の頸を斬る瞬間、かつて歌うように俺を呼んでいた軽やかな声が脳裏に甦る。
「───御免」
間に合わなくてごめん
助けられなくてごめん
守れなくてごめん
鬼にさせてしまってごめん
俺は いつもこうだ
日輪刀により斬り離された頭と胴は脆くも地面に転がり、刃先から鮮血が彼女の頬へぽたぽたと滴り落ちた。
「…ほら、萼が…散ってる」
違う。お前が萼だと思っているものは、己の血だ。
「やっと、来てくれた」
ちりちりと消えゆく彼女の瞳は、次第に湿り気を帯び闇夜の中の桜を映した。そこへひとつの萼がはらりと舞った。まるで失った花びらを追いかけるように。
それを拾い、彼女の側にそっと置いた。
「餞だ」
「心配しなくていい。すべてが終わったら、…俺もそちらへ行く。そしたら───」
二人で、ある筈のない桜を見よう。
「桜蕊降る」 / 終+39
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5500. 匿名 2024/04/21(日) 21:52:57
>>5488
花蕊の紅さからこんな素敵なお話が…日本人で良かった、ありがとうございます🌸+21
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5529. 匿名 2024/04/21(日) 22:14:52
>>5488
美しいものもいつかは散るのですよね…散り際に彼女が幸せだったらいいなと思いました。2人のやり取りも美しいお話でした。+24
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5579. 匿名 2024/04/21(日) 22:39:32
>>5488
🌊⚠️
心がぎゅっとなりました……
義勇さん…!+23
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5586. 匿名 2024/04/21(日) 22:45:12
>>5488
「それは…約束出来ない」から先が涙で滲んで読めない…義勇さん…切なくて美しくて儚い物語をありがとう+24
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5597. 匿名 2024/04/21(日) 22:49:55
>>5488
春が来るたびこの話を思い出してしまいそう
刺さりすぎて泣いてる+20
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5604. 匿名 2024/04/21(日) 22:59:26
>>5488
美しいお話をありがとう!
お恥ずかしながら
さくら…何と読むのでしょう?
日本語って本当に綺麗で味わい深いですよねえ…
大切にしなくてはと思わされます
萼の紅さには私も惹かれていて
花びらを落としたあとの萼や茎をスケッチしたりしてたので
とても共感できました!
鬼となってしまっていた彼女と
その頸を斬らねばならない切なさ
読み終わっても余韻が残ります…+23
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5753. 匿名 2024/04/22(月) 10:37:47
>>5488🐢
好きです
他推しですがぶっ刺さりました…
🌊さんの柱としての覚悟を垣間見ました
悲しいけれど優しいお話ありがとう+23
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5993. 匿名 2024/04/22(月) 20:32:37
>>5488
⚠️🐢
美しかったです…+21
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6343. 匿名 2024/04/23(火) 08:52:20
>>5488
🐢です
朝から泣いてしまいました
桜の儚さとこのお話の残酷さがとても合っていて情景が頭の中に浮かびました
桜の桃色が幸せの色、萼の赤紫色が絶望の色
コントラストが美しくて切なかった…+23
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