ガールズちゃんねる
  • 4309. 匿名 2024/04/19(金) 22:06:40 

    >>4302 ⚠️🐚
    ⚠️どんな推しでも許せる方のみ🌫

    捕食:②

    「この部屋に女の子を入れたの、君が初めてだったんだけど」
    「……そうなの?」
    意外そうながらもまだ半信半疑の顔だ。
    「よく見てよ。女の影ある? なんならバスルームも見てくれて構わないし」
    「ううん、いい。片付けることなんていくらでも出来るもん」
    「あのさぁ……」
    僕は彼女の中でどんなイメージなんだろうか。自分のあまりの信用の無さに、情けないを通り越して可笑しくなってくる。
    「あ、そこに長い髪の毛落ちてるよ?」
    「いや、普通に考えて僕のでしょ……」
    僕ってそんなに無節操に見えてるの?
    そりゃ付き合う前にそんな関係に持ち込んだのだから仕方ないとはいえ、あまりにズタボロな評価に心は折れかかっていた。
    「プライベートな空間には誰彼構わず引き入れたりしないんだけど?」
    だから、君は特別なんだって分かってほしくてここに連れて来たんだ。

    少し間をおいてから彼女が口を開いた。
    「……茶化してごめんね。違うの、こわいからなの。もし私だけがその気なんだったら……って思うと。それなら最初から踏み込まなきゃいいんだっていう自制心が働いちゃうんだ」
    そう言って力なく笑う。
    ようやく聞けた本音は謙虚な彼女らしいものだったけど、そうさせているのが僕だからなのだと思うと申し訳なくもなった。
    相手が誠実な男だったら悩まなくていい所なはずだ。もっとも誠実な男は付き合う前に手を出さないだろうけど。

    「今日だって、女の子といる所を見て平常心じゃいられなかったの。彼女でもない私がそんなこと思う資格なんて無いのに。こんなに独占欲強かったんだって自分でも驚いているくらい。たった一度……そんなことになっただけなのにね」
    「今日?」
    そんなことあったかな……。
    そういえば学食で誰かに話しかけられた気もするけど、彼女と知らない男のことに気を取られていた僕はそれどころじゃなくて適当にあしらったんだっけ。
    今の僕には彼女以外の子なんてその程度のものでしかないのに。

    「僕は、その資格とやらを君にあげたいと思っているんだけど」
    「……え?」
    「順番が逆になって悪いんだけど、付き合ってほしいんだ。僕の彼女になってよ」
    「──彼女って何人いるの?」
    「いや、だからさ」
    「ごめん、冗談がすぎたね」
    ふふっと笑みを漏らした顔が可愛かったので、文句を言う気はそこで失せた。
    「言っとくけど僕、同時進行はしたことないし自分から告白したのも初めてなんだけど。で、返事聞いてもいい?」
    「えっと……本当に私でいいの?」
    「何度も言わせないで」
    「……じゃあ、よろしくお願いします」
    彼女がぺこっと頭を下げる。さて、ここまでは予定通りだ。
    「それじゃ、もう遠慮する必要ないよね」
    「えっ? ……きゃっ!」
    僕は彼女の腕を取って立ち上がらせるとベッドの方へと押しやり、足が縺れたついでにそのまま倒れ込ませた。
    ──“資格”を手に入れたのは僕も同じだからね。


    (つづく)

    +30

    -7

  • 4312. 匿名 2024/04/19(金) 22:16:58 

    >>4309 ⚠️🐚
    ⚠️どんな推しでも許せる方のみ🌫

    捕食:③(終)

    信じられないといった顔をした彼女が天井を仰いでいる。
    ホント、こんなことをするなんて信じられないよね。
    自分でもとんでもない奴だと思うよ。
    だけどここまで来ればもう僕の独壇場だ。
    「もちろんこのベッドに寝た女の子も君だけだよ」
    僕に組み敷かれてしまった彼女は、怒っているのか恥ずかしいのか顔を真っ赤にしている。
    「……さっき、襲わないって……」
    「うん、さっきはまだ“彼女”じゃなかったから。僕って紳士でしょ」
    「やっぱり嘘つき……!」
    起き上がろうとする彼女の両手首を掴んで押さえつける。
    あくまでも優しくだ。
    本気で嫌なら振りほどけばいい。
    「そうだね、君の言う通り僕は嘘つきのひどい男だよ。君を手に入れる為なら手段は選ばないくらいにはね。でも、そんな僕が好きなんでしょ?」
    「……」
    無言で僕の下から睨んでくるけどそんな顔したって可愛いだけだ。
    今キスをしたら噛まれそうなので、代わりに首筋に唇を這わせる。
    びくんと彼女の身体が跳ねた。
    シャンプーなのか香水なのか、女の子特有の甘い香りに気分が高揚する。
    いちいち反応をしてくれることに気を良くした僕は、いつの間にか彼女が抵抗をやめていたことにほくそ笑みながらさらに先へ進もうとする。
    無理強いする趣味はないし、そんなことをしなくても拒まれないだけのスキルはあると自負している。

    「もうお利口さんにしなくていいからさ、僕のことが欲しいって言ってみなよ。独り占めしたいんでしょ?」
    「……イ」
    「ん、なに?」
    「……大っキライ」
    膨れっ面の彼女に思わず笑みがこぼれる。
    そんな可愛い抗議、僕を煽る要素にしかならないんだって教えてあげないといけないみたいだね。
    「──好きだよ」
    とりあえず可愛かったから、ごほうびとして耳元でそう囁いてやる。
    「……キライ」
    返ってきた言葉は相変わらず身も蓋も無かったけれど、“大”が取れただけでも大きな進歩だと思う。

    こんな僕、いつか愛想を尽かされちゃうかもしれないけどその時はその時だ。
    僕は彼女を落としたつもりでいたけど、どうやら僕の方が彼女に落とされていたみたい。
    彼女自身はそのことに気付いていないし、言うつもりも無いけどね。






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