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4301. 匿名 2024/04/19(金) 22:00:16
>>3525⚠️解釈違い🌊⚠️なんでも許せる方
『寄り道、裏道、まわり道』
⑤
それからの私達は、並ばなければ買えないいちご大福はしばらく封印して、勉学に励んだ。全部終わったら、一緒に食べる約束をして。
変わったことといえば、週に一度、自習室で最終下校まで勉強した帰り道は、必ず手を繋ぐようになったこと。
短い時間だけど、あの公園のベンチに座って二人の時間を過ごすようになったこと。
時々、どちらからともなく口唇を重ねるようになったこと。
そうして時は過ぎ、卒業を間近に控えた自由登校の日。もう用のないはずの自習室に、私達はいた。
「俺は、もう一年やってみようと思ってる」
「なんとなく、そう言うと思ってた。行かないんだね、私と同じ大学」
「…ごめん」
「謝ることないよ。当たり前のことだよ。ただ…」
「……待て、」
準備はしてた。言える。
こういう時、言う方がきっと辛いから。
だから、私が、言う。
「けじめは付けよう。私達は今、お互いに自分のことに集中した方が絶対いい」
「だからそれは意味がないと…」
「意味はあるよ。だって私達はもう学校の自習室には来ない。会う約束をしなければ会えない関係になる。気になる範囲にはいない」
冨岡くんの考えは想定していたから、それなりに覚悟を決めて今日ここに来た。シナリオ通りだ。なのに、ポロポロ溢れる涙が止められない。
もう会えない、会わない。ただの「元同級生」になる。これで良い。
これが、私にできる唯一の応援。
「だから…サヨナラしよう」
つづく+29
-4
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4304. 匿名 2024/04/19(金) 22:02:08
>>4301⚠️解釈違い🌊⚠️なんでも許せる方
『寄り道、裏道、まわり道』
⑥
「嫌だ」
!?
「そこは頷くところでしょう!?」
「嫌だから嫌だと言っている」
「頷いて!?」
「頷かない」
「………」
「いちご大福、あるぞ」
「ここ飲食禁止…」
「衝立で見えない。そもそも誰も登校してない」
「……食べる」
「好物を食べて、冷静になるといい」
「ずっと冷静だよ…」
「そうか。なら頭を冷やした方がいい」
「頭を冷やすのはどっちよ」
「……」
「……」
「……」
「……おいしい」
負けた気がする。
なんで持ってるの。いちご大福。
結局、私達は関係を続けることに決めた。
会うのは週に一回、半日だけ。電話は一日10分以内。必要以上の連絡はしない。という条件で。
私の決意と涙を返して欲しい。
傍らで頬を粉まみれにした彼の背中を、ペシッと叩いて八つ当たりした。
バツの悪そうな顔をした彼がこちらに向き直って、その胸に私を引き寄せ抱きしめた。
「…辛い思いをさせてごめん。ガル子が何を言うかは想定していた。ただ俺が、ガル子を離したくなかった。勝手だな」
息が苦しいくらいの、今までで一番強い力だった。
私は、安堵と寂しさと不安と、大きくなりすぎた「好き」の気持ちを抱えきれなくなって、彼の胸で子供のように声を上げて泣いた。
ただひたすらに私の髪を撫でる冨岡くんの手は、小さく震えていた。
つづく
(今日はここまでです。コメント下さった方ありがとうございます!)+33
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