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3069. 匿名 2024/04/17(水) 16:35:03
>>2852
「無惨様と一番近い女」② 20話
「先方には、お前はすでに私の妻なのでと言って断ったがな」
「はあっ!?」
な、何てことを…!そんな勝手に…
「だから今から結婚指輪を買いに行こうとしていたのだが…
今夜は気が削がれた」
フンと鼻を鳴らし今度は自分が背を向けて帰ろうとする
何から何までいったい何なの!?
「私は…そんなのイヤです!
私は…私を本当に愛して下さる殿方と結婚したいんですから!」
すると、無惨は振り向き鬼の瞳になってギロリと私を睨んだ
そうだ、この人は無残…
それも鬼の始祖なのだったと
今さらながらに思い出して背筋が冷えた
逆らえば私など簡単に殺される…!
私は思わず目を瞑った
ガタガタと身体が震える──
だが、無残は何もしてこなかった
「…安心しろ」
不意に穏やかな声がして
「妻と言っても上辺だけだ
本当にお前と結婚するつもりなど毛頭ない
人間社会で生きるには結婚している方が信用も得やすい
そしてお前は先日の料亭での取り引きといい、何かと役に立つからな
私のそばに置いておきたいだけだ
名目上、妻だということにすれば
今後他の誰にもお前を狙われる心配もなくなるしな」
そう言い終えるとニヤリと笑った
つづく
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3111. 匿名 2024/04/17(水) 18:21:30
>>3069
読んでます📖+18
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3173. 匿名 2024/04/17(水) 19:37:37
>>3069
「無惨様と一番近い女」② 21話
「まあ〜!ご結婚されてたんですか?」
派手に着飾った婦人が驚く
「何とまあ!こんな可愛らしい奥さんを今まで隠しておられたとは…
月彦くんも隅に置けないね!」
髭をたくわえた紳士に肩を叩かれ
「実は妻のたっての希望で大袈裟にせず二人きりでささやかな挙式で済ませたもので
今日まで公表しそびれてしまいました…」
ニコニコと愛想よく笑う無惨…いや、月彦様の隣で
「初めまして!妻のガル子と申します
いつも主人がお世話になっております〜」
と、左手の結婚指輪を殊更強調するように
口元を隠しながら引きつった笑顔を浮かべる
今夜は取引先との大事なパーティーに招かれている
ここで結婚していることを公表するから
妻だということを目一杯アピールしろ!と口うるさく言われたからだ
一通りの付き合いのある社長や有権者達への挨拶を終えると
私は隙を見てパウダールームへと逃げ込んだ
なーにが妻のたっての希望で、よ?
都合の良いように扱われていることに腹が立つ
着たこともないドレスは窮屈だし
だいたいこの指輪だって──
キラリと光る石を見やると
ま…まあ、これは…素敵だけど…
一応私の好きなものを買ってはくれたし
値段を見るととんでもない金額に卒倒しそうになった
でも、本当なら愛する殿方からもらうのが夢だったので何ともモヤモヤするが…
せめて美味しいお料理とお酒を堪能してやろう!
私は気を取り直すと再び会場に戻った
人を避けて進むと話し声がした
「ショックだわあ〜!月彦様がご結婚されてたなんて…」
「本当よねえ〜」
「私、実は妻の座を狙ってましたのよ?」
「あら、私もよ!」
私などより遥かに綺麗な女性たちがしきりに残念がっていた
まあ…そうよね──
有権者たちと談笑している月彦様は
誰が見ても魅力的でお金持ちでやり手の青年実業家といった風情だもの
そんな月彦様が本当は鬼だなんてことを
知っているのは私一人なのよねえ──
つづく
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